その2
意識を取り戻すと、見慣れない天井が目に入った
化粧板が貼られている、ということはコンクリートか何かで出来た建物なのだろう
まだ昼間なのだろうか、灯りの類は見えない
上半身を起こすと、部屋の隅に看護師さんらしい人が見えた
あちらも物音で気付いたのだろう、ペンを持った手を休め、こっちを向いた
「いや、吃驚したよ
目の前で突然気を失って倒れたんだから」
男性の看護師さんがそう言った
・・・そういえば、気を失う前に見た一行の中に居たような気がする
「とりあえず身体に異常は無いみたいだけど、暫く安静にしていた方がいいね」
人の身体を勝手に見たというのか、変態め
「診察したのは僕じゃないよ
わざわざ八意様が直々に診察されたんだ」
八意・・・はて、何処かで聞いたことがあるような
というか、この看護師、心を読んだな?
「いや、顔に出てるよ」
ああ、自分では何時もポーカーフェースのつもりなのによく親から言われてたな
と、その看護師が時計をチラリと見た
「ああ、そろそろ八意様が回診にいらっしゃる頃だ」
そう言うのと、扉がノックされたのは同時だった
「どうぞ」
「失礼します
患者さんの容体は?」
「はい、ご覧の通り、目を覚まされました」
「もう、何度言ったらその言葉遣いを直してくれるのかしら?」
「|師匠≪せんせい≫相手に敬語を使うのは当たり前だと思うのですが」
「・・・もういいわ」
そう言って白衣を着た女性がこちらに向き直る
ああ、名前に聞き覚えがあると思ったらハ意永琳じゃないか・・・あれ?
「初めまして、貴女の担当医のハ意××です」
・・・名前の部分が聞き取れない
永琳は一瞬何かを疑うような表情になったが、すぐに元の表情に戻った
成る程、これが営業スマイルというものか・・・というか、また顔に出ていたらしい
「もう説明はされたと思うけど、特に異常はなさそうね
ただ、貧血気味だったから、点滴を打たせてもらったわ」
そういえば左腕にチューブが繋がっていた・・・というか今気付いた
「鉄分をしっかり摂って運動しないと、いざという時に困るわ」
いざという時とはどういうことだろうか
「ハ意様」
「あら、いけない
今のは忘れて」
その後、さっきから居た看護師さんと何か喋りながら2人共部屋を出て行き、それと入れ替わるように今度は看護婦さんが入ってきた
看護婦さんは特に喋る訳でもなく、机の上の書類を片付けて出て行った
全く何なのだろうか