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第1章 (8)
先程まで話していた少女とは一変していた。
耳は鋭く尖り、口からは鋭く尖った犬歯がのぞいている。
黒い瞳は今は紅く、ガラス玉のように透き通っていた。
背中からは、蝙蝠のような翼が生えていた。
樹は少女の一変に声も出なかった。
しかし、その気高く凛とした口調に、樹は釘付けになった。
ピエロはというと、怒りに震え、少女に怒声を浴びせた。
『貴様―――“吸血鬼”だナ!!?
私の邪魔をしていいと思っているのカ!?』
「お前こそ、私の所有物に手を出していいと思っているのか?」
少女は笑みをこぼす。
その華奢な身体からは想像もつかないが、彼女が話すと世界が震えるような感覚に襲われる。
とてつもない重圧と威圧感を覚える。
そして樹は、一つの単語に疑問を抱いた。
―――“吸血鬼”
よく映画とかで人の生き血を吸う魔物といわれるもの。
樹はそんなモノが自分のクラスにいた―――という事実が信じられなかった。
しかし、今目の前で“ありえないこと”が起こっているため、ソレが本当のような気がしてきた。