第1章 (6)
樹は始め、ピエロの言っていることが分からなかった。
そんな樹のことはお構いなしに、ピエロは話を続けた。
『貴殿の中には神が創りだした宝具――――“神器”が眠ってイル。
しかもソレは並みの神器とは比べ物にならない程の“力”を宿してイル。』
(――――神が創りだした宝具?神器?
俺の中に、ソレが在る?)
ピエロは高らかに笑った。
そして一歩一歩、樹に向かって歩みよってくる。
樹は身に危険を感じた―――が、足が石になってしまったかのように動かない。
その場所から逃げ出すことができない。
慌てる樹の反応を見て、周りの異形の群も怪しい笑みを浮かべ、笑う。
『貴殿には私が全世界の神となる為の糧になってもらいマス』
「―――ッぅ゛あ゛!!」
何時の間にかピエロは樹の目の前まで来ていた。
それに気付くのが一歩遅れた。
ピエロは空いている左手で樹の首を掴み、持ち上げた。
その棒のように細い腕からは予想もできない腕力。
ピエロは片手で樹を軽々と宙に浮かせてしまった。
樹の口から苦しみの声が漏れる。
『さぁさぁ!!神器よ!私に最強の“力”を与えたまエ!!』
「う…ぐっ…」
(ヤバイ…、意識が……)
だんだん掠れてゆく視界の中で、樹は一筋の光線が曲線を描くのを見た。
その光が消えたかと思うと、樹は地面に倒れこんだ。
ピエロの腕が、何かによって切られたのだ。