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第1章 (4)
大きな体育館は彩られ、明るい雰囲気を醸し出していた。
校長の長い長い話を聞かず、樹はずっと隣の席の女子生徒のことを考えていた。
『お前、面白いやつだな』
『気に入ったぞ』
先ほど言われた言葉が、樹の胸の中に根強く残っていた。
(何だったんだ…アレは…)
どれだけ考えても何の案も出てこないので、考えるのをあきらめた。
校長の話が終わり、礼をする。
校長が壇上から降りようとした――――――――――――――でも、降りて来なかった。
否、階段の途中で校長は歩くのをやめた。
「ん?」
異変に気付いた樹は、首をかしげる。
(何あんな所で止まってるんだよ)
しかし、今気付いた。
隣に座っている男子も、来賓の席に座っている偉い人も、先生たちも、
止まっていた
樹以外の“もの”の全てが、静止していた。
樹は思わず立ち上がる。
血の気がサッと引いた。
(――――――――――何が起こっているんだ!?)