第一話〜侵略〜
「誰かー!助けてー!」
轟音とともに炎が燃え盛るなか、誰かの声が虚しく街に響いていた。街には、焦げた匂いと、オイルの匂いが漂い、その中を二人の人間が走っていた。二人とも中学生くらいだろうか。二人とも服はボロボロになり、一人は右肩から血が流れていた。
一人はスタイルが良く、髪色がピンク色で綺麗な女の子だ。もう一人は、黒髪の男の子で、その胸には何か薄汚れたマークが描かれていた。
「待ってー、あっ!」
少女が転んでしまった。すかさず少年が少女を起こす。二人は何か黒く、不気味な影から逃げていた。まるで狂った人のように……。
どのくらい逃げたのだろうか。
「ここだ」
少年は不自然に盛り上がった土を指さして、まるで何かに聞かれたら駄目なように静かに言った。少年が不思議なリズムで足踏みをすると、土が沈み穴が開いた。下には真っ暗闇が続いており、穴の横にはロープが備え付けられていた。
「ここは?」
少女が聞いた。
「すべて降りてから話す。とにかく今は降りろ」
少年は言い終えた途端に降りて行った。少女は少し迷ったのち降りていき、入った途端すぐに扉が閉まった。
降りたところには冷たく長い廊下がどこまでも伸びていた。
二人は無言で歩く。誰もいない、不気味な廊下に二人の足音だけが反響する。
「お前、名前はなんだ」
少年が静寂を破り、そんな質問を投げかけてきた。
「あゆね。四華餐歩音」
「あゆって呼んでもいいか?」
「うん」
その後、また無音に戻る。
「あなたは?」
あゆねが無音を破り質問をした。
「湊等中驪廉だ。りれんでいい」
「よろしくね、りれん」
「あぁ、よろしく、あゆ」
りれんが振り向き、二人は握手をする。
「ところで、あゆはなんであそこにいたんだ?」
りれんが聞くと、あゆねは少し迷ったような表情をした。
少し考えると、こう答えた。
「私はね魔法使いなんだ。訳あってあそこにいたの」
「じゃあ、俺たちの体も治せる?」
「うん!」
あゆねがポケットからピンク色のふしぎな粒を取り出し、杖の先端にかざし、つぶすと、キラキラした魔力が杖に取り込まれた。
「じゃあ、いくよ。はぁーーー!」
二人の体は光輝き、傷は綺麗に治った。
歩き終えると、一番下には信じられない光景が広がっていた。地上と同じように上には空が映し出され、王国のようなものがそびえ立ち、微かに花の匂いさえしていた。
「ただいま」
宮殿に入ると、りれんがそう言った。
「えっ?」
あゆねは驚きを隠せなかった。あゆねが問い詰めると、りれんは渋々話してくれた。
「なるほどね。地上がどうなっているか偵察に行ったら私に出会い、あいつらから逃げて今に至ると」
あゆねが確認すると、りれんはこくこくと頷いた。
「で!あいつらは何なの?りれんは何か知ってるの?」
りれんは少し言いづらそうにしながら話し始めた。
「あれは今から1000年以上前の話しだが……
しかし、あゆねの意識はだんだん薄れていく。そんなことは知らずに、りれんは話を続けるのだった。
2025年の4月。湊等中タクトという小学6年生の男の子がいた。彼は学校では誰とも話さないで生活していたが、とある大学では大人に負けずとも立派な科学者だった。ある日、タクトは自分に寄り添ってくれるロボットを作れば楽しい日々を送れることに気づき、14日でロボットを作り上げた。そのロボットをアイと名付け、さらに地下に自己学習式人工知能『マザーコンピューター』を設置したんだ。
しかし、アイが生まれてから70年後、アイは仲間たちがいなくなった悲しみで……
「……スピー…ムニャムニャ…」
「おい!」
りれんが起こすと、あゆねは眠い目を擦りながら起きた。
「あゆ。お前どこまで覚えている?」
「ふわぁ……よく寝た。えっ?2025年がなんとか、かんとかのところまで」
りれんは呆れながら話を終えた。あゆねの頭が完全に覚醒するのを待っていると、廊下のほうからドタバタと音が聞こえてきて、執事のバトリーが慌てた様子で部屋のドアを荒々しく開けた。
「りれん様、国王が至急お呼びです!」
二人が全速力で走る。
走る途中、青色のきれいな空が、一瞬だけ赤色へと変化したような気がしたのだった。
玉座の間に滑り込むと、そこには威厳を失い、汗を垂らしながら激しく焦る国王がいた。
国王が早口で言った。
「りれんとそこの少女よ。今すぐロボットと戦いに行け!この国に攻めてくる!」
その瞬間、りれんとあゆねの視線が交差する。
「もしかして、地上の奴が」
りれんがぼそっとつぶやいた。
「はっ!」
「え!」
りれんはあゆねにそっと頷きかける。
次の瞬間、剣の音が玉座の間に響き、二人の足元の床が軋みながら沈む。
二人は考えるよりも先に体が動いていた。




