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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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73◇複座2号機改で飛行訓練

73◇複座2号機改で飛行訓練

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その日の午前中にスカンクワークスの仲間と共に格納庫に行き、複座2号機の説明を受ける。

各部の結合がより洗練され、無骨さが減って滑らかな結合金具で接続されていた。

翼も少し軽くなり、コントロールバーを操作し易くなっている。

車輪にはブレーキが新設され、左横には上に引いてロック出来るレバーが付いていた。

まるでクルマのサイドブレーキだな。


エドモンドや魔石部の2人も負けじと魔石ジェットエンジンの解説をする。

直径を1.5倍にし、中に並べる魔石の数を増やして出力そのものを上げ、噴出口に花びら状に組み合わせた金属の半丸状の板が装備されていた。

これも右横のレバーを操作することで後ろから見た噴出口の直径を変えられる様になっている。

試験の結果、調整次第で今のエンジンの最大2倍の推力が得られたそうだ。

逆にスロットルと噴出口を絞ると魔石の魔力消費が非常に小さくなるらしい。

魔石数量の増加による全体の魔力量も増加しているので、実質的な航続距離が大幅に伸びるだろうとのことだった。


その説明を聞き、現物を見ると思わずにやけてしまった。

直径を大きくして推力を上げるのはターボファンエンジンやダクテッドファンの常套手段だ。

また、魔石ジェットは噴出口に負荷がかかると内部圧力がかなり高くなる特性があるので、噴射ノズルの絞りを可変にするのは実に効果的だ。

噴射の流速を制御出来れば機体重量と噴射量と対気速度で一番効率の高い位置で使える。

前世のジェット戦闘機の可変ノズルを思い出すな。

あれは自動で調整していたらしいが、どうやるのだろう?


ひととおり説明を聞いて納得すると、モーリスとエドモンドが是非試験飛行をしてくれと言う。

俺も願ってもないので二つ返事で引き受ける。

魔石ジェットエンジンの魔力は満タンだそうだ。

機体は扉の方に向いていてそのまま乗り込んで発進出来ると言われたので、格納庫に置いていた装備を身に付け、前席に乗り込んで左のブレーキレバーを押して解除する。

右のノズルレバーを一番開口部が大きい位置にし、両腕の魔石制御リングに魔力を少しづつ流す。

直径が大きくなっただけあって、噴射音は少し静かだ。

両足で前輪の向きを調整しながら少し吹かして格納庫から出た。

風向きを確認し、風下になる位置までタキシングして機種を風上に向ける。

スロットルを5割ほど開けると少し頼りない加速をする。

そこで右のノズルレバーをゆっくり引くと、途中で一番背中を押す力が強い箇所が分かった。

そこでスロットルを一気に全開にすると、ぐっと背中を押される感覚と共にいきなり浮かび上がって上昇を開始した。

滑走は5mもしていないだろう。

まぁこれは俺一人しか乗っていなくて機体が軽いせいも大きいだろうが。


暫く全開のまま上昇していくと、あっという間に裏山の山頂を超えた。

そのまま上昇を続けて、目測で高度2000m程度まで上がってみる。

そこで魔石ジェットエンジンを全開のままで、一番速度感がある箇所をノズルレバーを上げ下げして確認すると、平地での一番強い箇所よりも更に絞った位置が良いことが分かった。

2000mでわずかに気圧が低くなって、最適ポイントが移動したのだろう。

速度はかなりのものだ。

体にかかる風圧がかなりきつい。

やはりフェアリングやウィンドスクリーンが必要だな。


2000mの高度のままで色々危険な操作をしてみる。

スロットルを絞って失速させようとしてもちょっと吹かすと復帰するのは、やはり推力が圧倒的に増えたおかげだな。

その内推力だけで垂直上昇出来る様になるかもしれないな。

エンジンを両横に4基積んで、後ろから真下まで方向を変えられる様にすればまるでハリアーだ。

まぁバランスを取るのが大変そうだが、ウィンド系魔法でスラスターを付ければ何とかなるかもしれない。

前後左右の翼端から下向きに吹き出す様にウィンド系魔方陣を貼ってミスリル導線で繋げば制御可能だしな。

その場合は4つのエンジンの付いた搭乗席と主翼を何らかの機構で一時的に固定する必要があるだろうが。


俺は色々考えながら様々なテストを繰り返す。

俺の体重には過剰な性能なのでスタント飛行なども割と簡単に出来た。

宙返り、バレルロール、横スピン、錐もみ降下など。

さすがに背面飛行はこの翼では無理なので一瞬だけ試してすぐに諦めた。

あと、安定性もかなりのものだ。

一人乗りの時は前重心になっているので機種下がりになるが、軽い力で補正して保持出来る。

さすがに手放しで水平飛行は出来なかったので、何らかのトリム機構を付けると良いだろうな。


夢中になっていたので1時間はすぐに過ぎた。

懐中時計を見て一旦降りようと思う。

喉も乾いたし、トイレにも行きたい。

試しにエンジンを停止して滑空性能も見てみる。

軽量化されたことと俺の体重が軽いこともあり、降下率はかなり穏やかだ。

時々ノーズダイブして急降下し、引き起こして水平飛行になるのを何回か繰り返すと高度100m程度になった。

そこからはエンジンを軽く噴かして動的安定性を出す。

やはり少しでも推力がある方が安心感が大きいな。

着陸地点も任意に決められるし、失敗しそうでもすぐに上昇すれば再トライ出来る。

ゆっくりと着陸地点に機種を向け、大きめのフレアと微妙な推力のバランスで駆け足くらいの速度で着地した。

うん、これなら人に操縦させてもほぼ安心だろう。


「モーリスさん、堪能したよ。この機体凄いな。パワーが有り余っているし、機体も軽くなっているのでかなりの無茶が出来る。安定性も抜群だし、急激な操作をしても許容してくれる懐の深さもあるな。ただ、何点か改良をお願いしたい点があるんでいいかな。」


「まかせてくれ。今あんたが飛んだのを見て俺達の方向性は間違っていなかったと確信したぜ。そのあんたが言う改良点は是非にとも聞きたいな。」


「まず、これは2人乗りで重心位置を決めてあるので一人乗りの時は前下がりになるのは仕方が無いのは分かるよ。ただ、一人乗りで長距離飛ばないとならない場合もあるので、手放しで水平飛行出来る様な調整機構があったらいいな。出来れば飛んでいる最中に調整出来れば尚いいと思うんだ。」


「うーん、それは俺達もちょっと思ってたんだが解決は先送りにしてたんだ。だが具体的に要望されたからにはすぐにやろう。」


「あと、それとちょっと関連してるんだけど、2人乗り時に前席の操縦者だけでなく、後席の搭乗者もコントロールバーを操作して操縦させたいんだ。勿論、魔石コントローラーも簡単な操作で前後切り替え出来れば尚良いし。」


そうなんだよな。

魔石コントローラーが操縦者を切り替える時のネックなんだよな。

いっそのこと、レバーを引いて魔方陣の一部を重ね合わすことなどで魔石コントローラーの代わりをさせられたらいいんだけど。

それなら魔力操作が出来ない者でも魔石ジェットエンジンを操作して飛べるな。

これはエドモンドが専門なんで丸投げしよう。


「エドモンドさん、魔石ジェットエンジンなんだけどね、これ前後の席の両方から制御出来るようにならないかな?もちろん同時にではなく切り替えてでいいんだけどね。」


「うん。それはもう試作を考えているよ。魔石ジェットからの制御ベルトはミスリルが編み込まれているんだ。それを途中で二股に分け、どちらかに接触が繋がる様にミスリルの板をスライドすれば原理的には切り替えが可能だな。」


「そこまで出来てるんなら大至急実用品をお願いしたいんだけど。この機体と今から作る追加の2台にも是非載せたいんでやっちゃって欲しいんだよ。」


俺が偵察飛行で感じた要望点を言うと、2人とも任せておけと胸を張った。

早速工作部スタッフが資材を調達しに大型馬車で王都に向かう。

魔石部スタッフも馬車で魔石鉱山に買い付けに向かった。

予算はある意味無限なので、安全対策に贅沢に資材を投入出来る。

性能はこのハンググライダーの形式ならそろそろ打ち止めだろう。

次は本当に固定翼機だな。

ジェットエンジン推進の木製複葉機だ。

異世界の記憶がある俺にとってはだいぶ違和感のある構成だが、この世界の人なら疑問も抱くまい。


その日の昼過ぎには2号機の改修が終わったので、俺とデビッドが前後席を交互に交換して搭乗し、確認することにする。

機体の後席は少し後ろにずらされて前席との間を空け、そこにコの字に延長したコントロールバーが入っていた。

後席からだと少し余分に力が要るが、2人乗りでも十分操縦出来るな。

魔石スロットルもエンジンからのベルトが一旦機体側面に固定され、そこから前後席に改めてベルトが伸びている。

それを前後席同時に腕に巻き、機体側面の固定部にある切り替えスイッチを倒すと操作を前後席用に切り替えられる。

左右独立してあるのは1箇所に纏める工作が面倒だからではなく、冗長性確保の為だ。

どちらかが故障しても完全に独立したもう一方で飛べるし。


最初デビッドは魔石ジェットエンジンの魔石コントローラーが上手く操作出来なかった。

2号機の前席に座らせ、機体が動かない様に格納庫の中でロープで固定し、俺が後席に座って後ろからデビッドの腕の上に手を置いて魔力の流し方の感覚を大げさにして伝える。

最初の10分くらいは全く反応せず、俺もあれこれ魔力の流し方を工夫していると15分後くらいから何となく俺の魔力に反発する様になってきた。

俺がその魔力の流れを魔石コントローラーの受け入れ状態に合う様に誘導してやると、20分後くらいには何とか制御出来る様になった。

そこから更に30分ほどあれこれ操作の練習をするとほぼ俺と同等に操作可能になったので完了とする。


次にコントロールバーの操作だ。

俺が後席からバーを握って操作し、デビッドはバーに軽く手を添えるだけにする。

その状態で俺が口で機体の状態を表しながらバーを前後左右に動かす。

修正舵の時は思いっきり素早く動かして少し戻すのもやってみせる。

これも30分くらいやってどうだと尋ねると、デビッドはだいたい把握したと答えた。


一旦降りて装備を身に付け、再度デビッドを前席にして乗り込む。

固定のロープを解いてもらい、格納庫の出口に向かってタキシングを始める。

当然エンジン制御は後席の俺だ。

格納庫の前の広場に出てエンジンノズルの口径を前回飛行で得た最適位置にする。

スロットルを8割程度まで上げるとかなりの勢いで加速する。

15m程度滑走したところで軽々と離陸した。

そのままの角度を保って上昇を続けるとすぐに裏山の高度を超え、目測で1500m程度まで上昇した。

これくらいの高度なら何をやってもリカバリー可能なので、デビッドの操縦訓練をする。


その前にちょっと機体バランスが前下がりなので主翼とそれにぶら下がる搭乗席との接合部の下にあるレールの送りねじを回す。

これは旋盤の刃送りねじの様な構造で、前後方向に貫通しているねじをハンドルで回すことにより重心位置が前後する。

最初にモーリスに要求した追加仕様だ。

送りねじにはロックする機構があるので、振動で回ることもない。

これで接続部を後ろにずらすことで手放しでも水平飛行する様になった。

デビッドに比べて俺の体重が軽いから前下がりだったんだろうな。


バランスが取れたところでスロットルを6割程度に下げ、前席のデビッドにコントロールバーを預けると言う。

後席でバーから手を離し、両手で軽くデビッドの肩を叩いて操縦をデビッドに委ねる。

スロットルはまだ俺が握ったままだ。

今は操縦に専念して貰おう。


最初は操作にスムーズさが無く、ぎこちない動きになる。

余計に操作して動きすぎた機体を抑える為に、さらに余計に操作してガクガクとなる。

始めて自転車に乗るときにハンドルに思いっきり力が入って行きたい方向とは逆に切るのと同じだな。

いや、2輪車の場合は逆走舵の概念があるから少し違うか。

どっちかと言うと、ハイパワーなラジコンカーを始めて操縦する時に少し似ているな。

素直に直進出来ずにガクガクと左右に振れながら走ったもんだ。


後ろから飛行ルートの指示をする。

右旋回、左旋回、仰角を取ることによる減速、降下。

スロットル開度一定で、操縦のみに専念させると1時間程度でかなり慣れて来た。

時々俺が後ろからバーを握って揺さぶり、突発的な対処方法も教える。

あえて失速寸前の状況を作り、そこからの操縦だけでのリカバリーもバーを掴んで強引に動かすことで出来る事を教えた。


慣れて来たところでスロットルも渡す。

一旦バーの制御を貰って高度を1500mまで上げ、バーの操作を預けてスロットルをオフにし、切り替えスイッチを前席側に倒す。

切り替えたことをデビッドに伝え、スロットルの制御込みで操縦する様に言う。

まず上昇だな。

スロットル一定のままでは殆ど上昇出来ないので俺が6割にした所まで開ける様に指示し、そこからゆっくりと増していく。

7割くらいで一旦止め、機体の操縦に専念する様に指示する。

ゆっくりと旋回しながら上昇して行き、2000m程度で水平飛行に移らせる。

デビッドは僅かにスロットルを絞り、機体は水平に飛び始めた。

旋回すると僅かに高度が下がるのでそれを補正する為にごく僅か噴かす。

裏山の真上辺りを基準に、緩い旋回半径で8の字を描かせる。

直線と左右の旋回が繰り返されるが、高度は一定になる様に言う。

慣れると感覚的に分かるんだが、最初は戸惑うよな。

俺も単座機でさんざんやったので慣れたんだが。


それから高度を落として着陸と離陸を指導する。

まず風向きを調べて風下から進入することを徹底させる。

地上に旗や吹き流しなどがあればすぐに分かるんだが、それが無い時は低空で低速で飛んで対地速度を目測で見て判断する。

少し強めの横風があったら流されるんですぐに分かるだろう。

風があまりにも弱い場合は風向きは無視してもいいな。

何回か着陸と離陸を繰り返し、徐々にデビッドに操縦を渡して慣れてもらった。

10回も繰り返すと十分一人で出来る様になったな。

それから再び高度を上げて俺が緊急時のリカバリー方法を教える。

わざと失速させ、錐もみ状態になってからどうやったら復帰出来るかだな。

スロットル操作の併用で割と簡単に脱せられることが分かってからはデビッドは何度も試していた。


それからデビッドは操縦が面白くなって来たのだろう。

日が暮れかけるまで着陸から離陸、上空8の字旋回から錐もみ脱出までのフルコースを繰り返していた。

後ろに座っていて最後の方は見ていて安心感が出たので今日はこれで終わりにしようと言うと、もっと飛びたいと言う。

俺の方がもう疲れたと言ったら素直に降りてくれた。

さて、明日からはダミーの重りを後席に乗せて自主練だな。


ところで以前単座機で飛んでいる時に色々やっていたウィンド系魔法での小細工をどうするかだが、アレは俺の魔力量とウィンド系魔法の操作があってこその効果なので複座機では一切やっていない。

前方に風を吹いて自分にかかる風圧を減少させてみたり、三角翼の前縁に均一の風を発生させて空気抵抗を減らすという奴だな。

今後エドモンドと相談して魔石を使った魔道具的な物で出来ればやってみてもいいが、とりあえず今は量産機だ。


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