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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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69◇王都国軍

69◇王都国軍

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高度を1500mまで上げ、スロットルを9割まで開けて急ぐと2時間少々で王都の国軍練兵場に到着した。

日はもう落ちて、ギリギリ着陸場所が確認出来る程度だったので危なかった。


着陸してシートベルトを外すなりデビットが大声で情報局への伝令と叫ぶと、予め通達されていた警備兵に伴われて情報局司令室に案内された。

部屋の中には学長室で紹介されたロナルド・モーガン中将が情報局の高官らしき軍人5人ほどと共に待ち構えていた。

広いテーブルの上には東側国境の地図が広げられている。


「偵察ご苦労。まず、マーティン君の口から偵察の行程を聞きたい。」


「はい、まず国境の駐屯地まで飛び、そこで魔石の魔力を補充して国境の内側を高度1キロムで北進しました。北端まで行って今度は高度を1.5キロムまで上げて再び国境沿いに引き返している最中に隣国側の谷間の少し開けた所に兵力の集結を確認しました。その後南端まで往復しましたが他には見つからず、もう一度北進して先ほどの谷間を確認したところデビッドが兵の一部がこちらに気が付いた様だと言いましたので、イメージショットで撮影しつつ急いで駐屯地に帰還しました。そこで駐屯地の司令官に情報をお渡しして報告書の体裁にしていただき、ここに持参しました。」


デビッドが鞄に入れていた報告書と共に、偵察時に書き込んだ地図とイメージショットの魔石を取り出してテーブルに置く。

中将が報告書を開き、他の軍人がデビッドの書き込んだ地図の内容をテーブルの上の地図に書き写している。

他の何人かの軍人がイメージショットの魔石のペアを両手で持ち、目を瞑ってこめかみに当てている。

何をしているのかと聞くと、紙に定着させるより鮮明に見れるとのことだ。

情報局の高官の多くははこの特技を身につけているという。

俺も1組取って真似してみると最初はぼんやりしたイメージだったが、針の穴に糸を通す様に集中して探るとイメージが鮮明になるポイントがあった。

そこを中心に魔力を込めると周辺も徐々にはっきりと見える様になり、最後には両眼視差みたいに立体視が出来るまでになった。

なるほど、魔石を2個使うのはこの為だったのか。

さらに魔力の込め具合でズームしたかの様に部分的に大きく見える。

これなら銀塩写真は不要だな。


しばらくすると、最初に魔石を取った高官が目を瞑ったまま報告する。


「中将、北部の谷間に敵兵団300集結しています。歩兵200、騎馬100、他に兵站と思われる馬車10。」


他のイメージショット魔石を見ていた軍人も同意する。

俺にもそう見えた。


「うむ。この構成では明日の朝にでもこちらに侵攻しかねない状況だな。大至急国軍の統合元帥にお知らせする。ここに居る全員私に同行せよ。」


そう言って中将は報告書を、他の軍人はテーブルの上の地図と魔石を全て持って一斉に立ち上がった。

俺達にも同行せよと言われたので、疲れていたが仕方なく付いていった。


情報局の建屋から出て渡り廊下をしばらく進むと一際大きく無骨な建物があった。

デビッドに聞くとこれが国軍司令部とのことだ。

デビッドはランバート領の護衛部隊に入る前は国軍の魔法科連隊に居たらしい。

18歳から23歳までの5年間の任期を終え、出身地であるランバート領に帰って護衛部隊に応募して採用されたとのことだ。

なるほど、国軍について詳しいわけだ。


国軍司令部の入り口の衛兵に敬礼され、中将一行はゾロゾロと入っていく。

すれ違う人は何事かと不審な目を向けて来るが、先頭が中将なので素早く直立して道を開け、敬礼して通り過ぎるまで待っている。

さすがに最後の俺に対しては不審の目を向けていたが。


中将が廊下の一番奥の部屋に近づくと中から吠える様な声となだめる様な声が聞こえてきた。

ノックをしてみたが反応が無い。

もう一回ノックすると吠え声が止まり、誰だと誰何される。


「情報局のロナルド・モーガン中将です。緊急の報告がありまして、お時間をいただけませんでしょうか。」


そう問いかけると少しの間中でごそごそいう音が聞こえた後、「入れ」と返ってきた。

中に入ると正面に巨大な机があり、その向こうに大柄で髭を蓄えた男が側近と覚しき4人の男を従えて座っていた。


「失礼します、元帥閣下。貴族院の連中が不甲斐ないのは十分承知しております。今日はその貴族院をひっくり返す情報を仕入れて来ましたぞ。」


「あー、中将。儂は貴族院の方々を尊重しておるが、最近特に一部の暴走とも言える言動がどうも我慢ならんでの。決して部下相手に八つ当たりしていたのではないぞ。で、そのひっくり返すというのはどういう意味だ?」


「ご紹介しましょう。ここに居る若人は英雄でしてな。今日の昼間にとんでもないことをやってのけてくれました。」


「学園の新入生に見えるが、なぜその様なヒヨッコがここで出て来る?」


「ちょっと説明している時間が惜しいのでそこら辺は省略させていただきます。つい先日、空から国境を偵察出来る乗り物を彼に協力して貰って作りまして、今日の朝から東の国境線を南北全て調べました。どうやら隣の国はこちらに攻め込む準備をしている様で、その証拠を報告書としてまとめましたのでご確認いだだけますでしょうか。」


中将は先ほどの報告書と資料を元帥の部屋の広いテーブルに広げ、デビッドが敵兵力の集団が谷間に集まっている箇所を赤鉛筆で丸く囲う。まず報告書を中将が読み上げ、その間に情報局の高官がイメージショットの魔石を元帥に渡す。

元帥はイメージショットの魔石が扱える様で、目を瞑って2個の魔石を砕けんばかりの力で自分のこめかみに押しつけていた。

中将が報告書を読み終えても元帥はまだ魔石を押しつけたまま唸っていた。

高官が違う魔石を次々と渡して行くのに合わせて元帥の表情は曇っていく。

魔石を全て見終わると元帥はため息をついて俺の方を見た。


「この小僧がこの報告をしたというのか?まずそこから説明せよ。」


まぁ普通はそうなるだろな。

どこの馬の骨とも知れぬ若造がこの情報を入手したと言っても信じられるものではあるまい。


「このマーティン・ランバートはランバート領の領主次男で、王都学園の1年生です。入学当初より非凡な才能を次々に発揮し、剣技訓練免除を始め魔法授業での新入生とも思えぬ魔力量の発動、冒険者協会への情報魔石装置の試作提案、そして飛行装置の開発と実用化を為しました。今では我々情報局の意向を受けて長距離を2人乗りで飛べる飛行装置を開発し、今回の偵察飛行と隣国の兵力集結の発見に至ったという訳です。」


「ううむ。情報局のお前が言うのなら間違いはないと思うが、少々信じられんな。まぁそれは良いとして、隣国の集結状況だな。情報局としてはこれをどう思う?」


「はい、全体で300程度なので駐屯地の100前後の戦力では抑えきれませんが、近隣の各地に分散している駐屯地の兵力を集中させれば1日もあれば500は集められるかと。但し、これの連絡手段がこちらからなら早馬で中継地を乗り継いで15時間、伝書鳩でも6時間程度かかります。いずれも夜間は使えませんので翌朝からの時間になります。確認の返事を待つとその2倍になり、即時対応が難しいと考えます。」


「そこで再びその小僧の出番という訳だな。ここから国境の駐屯地までどれくらい時間がかかる?」


「報告によると通常で2時間半、急ぐと2時間と少々で到着する様です。そこから近隣の各地へ飛ぶのもそれぞれ30分もあれば足りるかと。」


「うむ。背に腹は代えられぬ。お前の顔を立ててその小僧に連絡を一任しよう。2人乗りと聞いたが、同乗者は誰だ?」


「同乗者は2年前まで国軍魔法科連隊に所属していましたデビッドです。現在はランバート領の護衛部に所属しており、マーティン・ランバートの護衛として王都学園の入学に伴って来ました。今回マーティンが操縦でデビッドが偵察を行ったとのことです。」


「なるほどな。地図が手慣れているのはその為か。分かった、早速指令書を書こう。しばしこの場で待て。」


元帥は側近に指令書を指示先の箇所の枚数用意させ、次々に指示内容を書き込んでいった。

書き終わると元帥は指示内容を読み上げる。


「各駐屯地司令官に通達。情報局の偵察情報によりサタナイト王国との国境に隣国軍の集結を確認。侵攻の恐れがあるので各部隊は兵力の5割を以下に指示する国境に大至急集結させよ。国軍統合司令部 ジャック・パターソン元帥」


「元帥、彼らは夜間は飛べません。明日の早朝に日が出る前に出発させたいと思います。今日も一日中飛んでいたので休憩も必要ですし。」


「まぁそれもそうか。疲労で途中で落ちても元も子もないしな。では明日の未明に出立をしてもらおう。今日は休め。」


元帥はちょっとだけ俺達に気遣う言葉をかけて退出を許可した。

やれやれだぜ。


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