63◇慣熟飛行
63◇慣熟飛行
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次の日も休みなので朝から飛ぶ。
デビッドに借りたホルスターに追加でザンドのショルダーホルスターと9mm拳銃も借り、両脇に吊るす。
叔父のホルスターと9mm拳銃も借りて来たので、俺の自分の分と合わせて両腰に吊るす。
ホルスターの構造は左右兼用になっていたので組み直すと素直に抜ける様になる。
親指ロックがあるので空中で脱落することもない。
用心のため、グリップ下のランヤードリングに落下防止用の丈夫な紐を結んでホルスターのリング部に通しておく。
追加のベルトを使ってフラフラしない様に固定し、地上で魔道エアクラフトに乗り込んで2人に両側を支えてもらって足を浮かす。
その姿勢で4丁の9mm拳銃を交互に素早く抜いて構える練習をした。
30分くらいでほぼ思い通りに出来るようになったので、そのままヘルメットとグローブを着けて裏山に行く。
今日もエドモンドが山頂に登って監視をしてくれるので、ちょっと高度を上げて山頂と同じくらいの高さを飛んだ。
ウィンド系魔法も更に工夫をこらして複数箇所で同時に発生させることにより、体に当たる風圧も翼の抵抗も減った様で速度が上がった。
デビッドに周回数と時間を記録してもらって後で確認すると、時速160キロム出ていた。
この状態で魔石の燃費は若干向上しており、300キロム飛んで約半分くらいの消費量だった。
全体の空気抵抗が減ってエネルギー効率が上がっているのだろう。
これなら実家までの500キロムはノンストップで飛べるな。
いや、たぶん途中で辛くなるから休憩はすると思う。
前世でリッターバイクで高速道路を420km走る時も、途中で2回は休憩していたことを思い出す。
喉が渇くしトイレにも行きたくなるしな。
昼休憩で今度はレーションを出してみる。
ウィンナーソーセージ缶と味付けハンバーグ缶だ。
以前は出て来る缶はランダムだったが、最近では明確なイメージをすることで思い通りの缶を出すことが出来る様になっている。
3個づつ召喚し、ついでにカ⚪︎ヌも6個召喚する。
ストレージから昨日叔父家の調理場から借りていた大きめの鉄鍋を出し、ウォーター系とファイア系の魔法を同時に使って湯を入れていく。
追加で鍋を炙って熱湯にし、6個の缶詰を湯煎して温めている間に昨日のヤカンを出して熱湯を作る。
缶詰は不思議そうに見ていた2人だが、カ⚪︎ヌを用意し始めると期待のこもった目でカップ容器を見つめていた。
ふっ、落ちたな。
さすが日本が誇る即席麺だ。
1個目のカ⚪︎ヌを食べ終わった頃に湯煎した缶詰を引き上げる。
完全には温まっていないが、まぁ食えるだろ。
簡易工具の缶切りで全部開け、食べる様に勧める。
今日は2人とも全く迷いもなくかぶりつく。
俺も食うが、味はまぁまぁだな。
2人は美味い美味いと言ってあっという間に2個とも平らげていたが。
その後、残ったカ⚪︎ヌを2人はじっと見ていたので作ってやる。
これもあっさり平らげてさすがに満足した様だ。
「マーティン様、これって以前魔の森に試し撃ちに行った時に出していただいた物ですよね。ずいぶんと扱い慣れている様ですが、いつも食べられているのですか?」
「いやいや、普段は食べないよ。保存食みたいな物なのでこういう時や緊急時の場合だけだね。」
「これ、売る気はないかい?ものすごーく欲しいんだが。」
エドモンドが物欲しそうに聞いて来るが、これは俺のスキル由来の物なので出せる量に限度があると言って誤魔化す。
そのうち似た様な物を作って自領の特産にしてもいいかな。
昼からは4丁の9mm拳銃の扱いの練習をする。
空中で仮想の敵を想定して抜き撃ちをする。
もちろん実包は込めていないので空撃ちだ。
基本的に空中戦で、しかも片手撃ちの拳銃で相手に命中するとは思えない。
発射時の轟音と閃光で相手を驚かせ、脅威と思わせて引かせるのが目的だ。
まぁ本当に翼を捕まれたりしたら撃ちまくって当てるが。
その場合は至近距離なので何割かは当たるだろう。
翼布に数発穴が開いても落ちることはないだろうし。
ちなみに、翼布の上には裂け止めとして井桁状に丈夫な布ベルトを縫い付けてあるので一箇所裂けても全体に及ぶことはない。
若干の空気抵抗になるかなと思ったが、布ベルトは薄いので問題無い様だった。
9mm拳銃が思い通りに抜ける様になったところで、空中戦を想定して空中機動飛行をしてみる。
魔法でサイドスラスターが使えるので、空力以上の動作が出来ない猛禽類には有効だと思う。
前世で動画で見た米軍のF22やロシアのSu-57、MiG-35のデモンストレーション飛行もやってみたらあっさり出来た。
むしろ真横にスライドする様なSuやMiGでも不可能な動きが出来るので、面白くて色々やっていたら酔った。
慣れないことはするもんじゃぁないな。
水平飛行に戻して裏山を何周か回ると酔いが覚めて来たので一旦山頂に降りる。
エドモンドに休憩しようと声をかけ、山頂から離陸する。
裏山を2周くらいゆっくり回っているとエドモンドが麓まで降りて来たので俺も近くに着地する。
アフタヌーンティーとしてちょっとご馳走してやろう。
出したままだったテーブルの上に直接ランク2装備の板チョコレートと缶コーヒーを3人分召喚する。
缶の開けかたを教え、チョコの包装の剥きかたを教えると2人とも黙ったまま黙々と食べた。
俺がゆっくり食べようとすると、もう全部食べ終わった2人が俺の手元をじっと見ている。
わかったわかった、出してやるから物欲しそうな目で見るんじゃない。
再度2セット出してやると、今度はゆっくり味わう様に食べていた。
まるで子供だな。
今度は30分ほどもかけてゆっくり味わっていた2人だが、最後のひとかけらを名残惜しそうに見てから口に入れた。
また出してやるからそう目をうるませてこっちを見るんじゃない。
俺は手を打って飛行練習を再開した。
エドモンドにもう山頂に登らなくても良いと伝え、見えている範囲で飛ぶから何かあったら助けてくれと伝えて離陸する。
裏山の2倍ほどの高度に上昇し、アクシデントを想定した練習をする。
魔石エンジンを停止させ、ウィンド系魔法も使わずに技量だけで急旋回や錐揉み飛行をする。
最初は失速状態から回復出来ずにかなり落ちたところで魔法を使って強制復帰する。
再度高度を上げて繰り返すとコツが分かってきた。
1時間も繰り返すと、もうどんな酷い失速状態からでも技量だけで回復出来る様になった。
まぁ高度が足りないと技量だけでは無理なことも分かったので、長距離飛行する場合はある程度の高さを飛ぶことが安全なことを確認出来たので良しとする。
最初は低空飛行の方が安全だと思ってたしな。
再度高度を上げ、今度は魔力探知を発動する。
俺はあまり魔力探知は得意な方ではないが、最近では半径200mくらいはなんとなく分かる。
地上では2次元だが、空中では3次元だ。
俺を中心として半径200mの球体の生物センサだな。
この世界の動物は魔物以外でも魔力は持っているので探知出来る。
まぁ人間が素で魔法を使うんだから当然だろな。
虫や小鳥は除外として意識外に逃す。
鳩くらい以上の生物を対象とすると結構引っかかる。
高速ですれ違うので一瞬だが、相手が俺を避けているのが分かる。
どうりで何もぶつからないはずだ。
相手が避けてくれていたんだから。
中には凄い軌道を描いて避ける生物も居る。
まるでバレルロールの様な飛行だな。
俺も真似してやってみようとするが、この機体ではちょっと難しい。
何しろ俺という重量物が下にぶら下がった状態なので背面飛行自体が無理っぽい。
三角のコントロールバーを思いっきり握って勢いをつけてみるとそれっぽい挙動をしたが、いきなり失速したのでそれ以降はやっていない。
まぁ今後固定翼機を作った時にでも試してみよう。
あれこれ危険な挙動を試し、全てリカバリー出来る自信がついたので慣熟飛行は一応完了とする。
麓の平地に着地し、撤収とする。
魔道エアクラフトを魔石部の倉庫に格納し、エドモンドにお礼としてカ⚪︎ヌ5個と板チョコ5枚を渡す。
これからは定期的にお礼をしよう。
全部元はタダなので安いもんなんだが。
秘密にしておく様にとも伝えると、思いっきり頷いていた。
たぶん隠れて一人で全部食べたいんだろうな。
デビッドも欲しそうにしていたので、叔父宅に帰ったらザンドと一緒に食べようと言うと嬉しそうにしていた。
まぁ護衛はこれが仕事なのであまり甘やかすことは良くないんだろうが、これで忠誠心が少しでも上がれば安いもんだ。




