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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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61◇テイク・オフ

61◇テイク・オフ

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さて、ハンググライダーをモーターハンググライダーにすべく、魔石ジェットエンジンの取り付け位置を色々検討する。

プル式にするかプッシュ式にするかで少々悩んだが、前世のモーターハングやモーターパラグライダーを参考とし、主翼の中心の後ろ気味の場所にぶら下げることにした。

なるべく重心位置の近くを推した方が機首のブレが少ない様な気がしたのだ。

まぁ機首の上に付けてFF車の様に引っ張って安定させる案も捨てがたかったが、機首に重たいエンジンを乗せると地上での扱いが大変になるので却下した。


取り付け位置から重心が少し後ろになるが、その分三角形のコントロールバーとパイロットを吊るポイントを前に移動して大体合わせた。

推力制御用の魔法陣を刻んだベルトが魔石ジェットの中央下部から出ているので、それの端部のリングを腕にはめて軽く魔力を流してみる。

思ったよりも強い推力がいきなり出たので思わずよろめくが、エドモンドが支えてくれたので転倒せずに済んだ。

護衛のデビッドも一緒に支えてくれたのでちょっと推力を上げてみる。

半分くらいを目処に上げ下げしてみると、かなりのレスポンスだ。

前世で乗っていたリッターバイクの空ぶかしを思い出す。

まぁピーキーという程ではないので少し慣れれば問題ないだろう。


魔石ジェットエンジン自体の重量は20サプタン(20kg)程度なので、パワーアシスト系で補助すれば今の俺でも何とか扱える。

ん?

今気が付いたが、俺の体重は40サブタン足らずだ。

魔石ジェットエンジンの推力は100サブタンを超える。

ならばこのエンジンを直に背負えば俺、直接飛べるじゃん。

あ、でも燃費の問題があるから長距離飛行は無理だな。

俺の当面の目標は実家までの一気飛行なんでとりあえず今はジェットマンは我慢しよう。

あと、前世でのジェットマンは小型ジェットエンジンを合計5基使っていた。

背中に少し大きいのを1基、両手に小型のを2基づつ並列に使ってそれで空中機動をしていた。

空中で自在に動くための推力偏向を両手の動きでやっているわけだな。

背中の大きめエンジンとの間で三角形配置で三脚の様に安定させている。

魔石ジェットが1基だけでは無理だな。

これは今後の課題として温めておこう。


魔石ジェットエンジンを魔道エアクラフトに固定し、俺とエドモンドは学園の裏山の麓の平地に担いで行く。

デビッドは護衛なので両手を空けていてもらうために荷物は持たせていない。

今度は動力飛行だ。

平地の向かい風になる位置でシート代わりの袋に両足を突っ込み、ベルトで固定する。

安全索を結び、魔石制御のリングを腕にはめる。


頭には安全の為、剣技練習で使うヘルメットの様な防具を被る。

これは前世のバイク用ヘルメットを参考に改良してある。

外殻として盾としても使われる超大型カブト虫?の背中の甲部分を外側に立体的に貼り付けて固定してあるので、大人が強く踏んでも壊れないくらいの強度がある。

頭防具は大人用の大きめのサイズを使用し、頭との間の隙間には巨大カマキリの巣の泡状に固まった部分で密度の高い箇所を頭の形に合わせてくり抜き、防具の内側に嵌め込んで接着してある。

このカマキリの泡巣、固まると完全に発泡スチロールだ。

試作として俺の頭と同じ形状で少し重い塊を木のブロックから削り出し、中に入れて岩にぶつける試験もしている。

前世の2種レベルの強度と内部保護性能はあるようだ。


両手にも剣道の小手の様なグローブをはめている。

5本指に分かれているのである程度の操作は出来る。

手の甲には分厚い圧縮パッドが貼り付けてあるので横倒しになっても指を負傷することはないだろう。


三角形のコントロールバーを持って持ち上げるとかなり重たい。

パワーアシストを目一杯かけてゆっくり走り出す。

同時に魔石スロットルを徐々に開けていく。

背中でゴウという音と共に首筋の空気が後ろに引っ張られるのが感じ取れる。

途中でつんのめりそうになったが何とか堪え、機首を上げてスロットルを全開にした。

次の瞬間、足裏の感触が無くなり俺は宙に浮いていた。


かなり強烈な加速感を感じたので魔石スロットルを少し戻す。

用心のため機体が下降しない程度まで推力を落とし、低い高度で平地の淵沿いにゆっくり旋回していく。

10周くらい回ったところで大体の操縦性は分かった。

一旦着陸し、重心位置を微調整する。

少し前荷重になっていたのでそれを後ろにずらすと離陸時のつんのめる感じは解消した。

何回か調整すると適正推力時にコントロールバーから両手を放してもある程度直進するところまで出来たので、とりあえずは良しとする。

調整後に数周飛んで魔石スロットルを徐々に絞り、仰角をつけて速度を殺してふわりと着地する。

着地する寸前で魔石スロットルは完全にオフにした。

バランスが取れると安心感が違うな。


再度離陸し、少し高度を上げて今度は途中で魔石ジェットをオフにして滑空状態を確認する。

重量が重いせいで降下速度が結構速い。

ならばと、後ろ向きにウィンド系魔法で風を絞って連続して打ち出してみる。

意識して風の反動を受ける様にイメージすると、本来なら無いはずの反作用を手の平に感じる。

手の平の反動感触が最大になる様に試行錯誤すると、結構な推力が出るポイントがあった。

その状態で連続噴射をイメージすると、高度を保つくらいなら出来る様になってしまった。

横向きに打つと、急速にバンクするきっかけとなって空中でクルッと向きが変わる。

失速しかけるが、後ろ向きに打つとすぐに安定状態となった。

しばらくあれこれ試して実用になると確信したので着地する。


「リーダー、だいたい操縦特性は把握したと思うよ。今度はもっと高度を上げて飛んでみようと思う。」


「大丈夫か?その飛ぶ理屈は凧に魔石を付けたおもちゃに近いから何となく分かるが、もっと何日かかけて練習すた方が良くはないか?」


エドモンドの言うことももっともであるが、前世のハング系と違うところはこっちは魔法の補助が使えることだ。

補強もあり得ないほどにガッチガチに固めてあるし、ウィンド系魔法を俺の魔力で打ち出すと強力なスラスタージェット代わりになり、失速しかけても墜落することはまず無い。

離陸こそ無理だが、空中で魔石ジェットがエンストしてもウィンド系魔法を後方に連続で打ち出すことで短距離なら馬の速足程度の速度は出るので、動力喪失による危険地帯への墜落もしない。


「大丈夫だよ。安全対策は万全だよ。だけど念のため、裏山の周囲をぐるぐる回ってみようと思うから、リーダーは山頂付近で僕が山の中腹程度を周回して飛ぶのを見ていてくれない?」


中腹くらいの高度を飛べば、山頂から見てくれていたらその場で体の向きを回すだけで監視出来るな。

それくらいの高度ならたとえ落ちても致命傷にはならないだろうし、同時の山麓の不規則な風の流れに順応することも出来るだろう。

前世のハンググライダーの動画などで一気に高度を取るのは、確立した飛行具と操縦方法があるからだ。

一から手作りしたこっちの奴は俺自身信用していないので高高度は完全に慣熟してからだな。


その後再び離陸し、裏山の麓の平地の淵に沿って少し高度を上げてぐるぐる周回する。

その間にエドモンドは裏山の山頂に登って行った。

20周くらい回ったところで山頂のエドモンドが手を振って来たので更に高度を上げて中腹くらいの高度にし、裏山の周回を始めた。

やはり低い山と言えども風上と風下では山からの吹き下ろしの影響がかなり違う。

しかしそこは動力機だ。

魔石スロットルの俊敏なレスポンスを生かして力づくでゴリ押ししてみるとあっさりと定常円を描ける様になった。

なるほど、風を読むのも大事だが、風をねじ伏せるのもアリである。


2時間ほど周回し、時々旋回方向を変えたり高度を急激に上下させてみたりして過渡特性を洗い出す。

魔石ジェットを全開にすると前世でバイクで高速道路を走っている時くらいの風の抵抗を受けるので、たぶん時速100キロム程度は出ていそうだ。

対気速度を測るピトー管みたいな物を作りたいな。

仰角を大きく取りすぎたり急旋回をすると失速するが、ウィンド系魔法のスラスターで少し補正しながら魔石ジェットのひと吹かしであっさりと立て直す。

なんなら錐揉み状態になっても回復は容易だった。

推力偏向ノズル付きのジェット戦闘機の様な空中機動も出来る。

これならハンググライダーの部分は単なる一枚板でも飛べそうだな。


「やー、飛んだ飛んだ。だいぶ慣れてきたよ。これならもういきなり実家まで飛べそうだね。」


「君の実家までは500キロムくらいはあるんだろう?耐久試験をしとかないと無理なんじゃぁないかな?」


確かにそうだ。

魔石の燃費を考えるとずっと全開飛行は無理だろう。

8割スロットルくらいが巡航速度かな。

魔石自体に充填されている魔力を消費して推力を発生させるが、それに制御魔法陣を介して俺の魔力を注ぎ込むことで魔石の消耗を抑えられる。

プラグインハイブリッドみたいなもんだな。


今日はもう日が翳って来たので終了とし、続きは明日の休日に朝からすることにして撤収した。


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