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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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52◇ランバート符号

52◇ランバート符号

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さて、授業が終わって夕食も済んだらお待ちかねの研究タイムだ。

とりあえず屋敷の中庭で「魔素収集魔法」と短縮詠唱付きのファイアを繰り返し発動する。

夕食の時に叔父に言ったら、叔父もハイランドクラスでそれをやらされたらしい。

懐かしいなと言っていたが、ある程度魔力量が大きくなるとそれ以上はいくら練習しても殆ど変わらなくなるとのこと。

授業ではショーンはそれを言わなかったが、数年は増加し続けるらしいのでやる気を削がない様にしたのかもしれない。


1時間ほど授業内容の練習をした後、俺は自室に戻ってとりあえずステータスを表示させる。

先週入学前は魔力量が2480だったけど、今見ると2540に増えている。

確かに授業や先ほど繰り返しやった成果は出ているみたいだ。

だが、ハイランドクラスの平均的な値であろう200前後なら増えても210くらいか。

俺は教会で240と自己申告しているので、それを忘れない様に計画立てて増やした様に見せようと思った。


気を取り直して、昨晩一応完成させた「ランバート符合」を書いた紙を机の引き出しから出す。

もう一度見直すと出現頻度を考慮した割り当てに改善余地がある様に見える。

可変長コードの場合は伝達効率を上げる為に出現頻度の高い文字に短いコードを割り当てる必要がある。

前世のモールス符号では、アルファベットは出現率の高い「E」は「・」に、「T」は「-」に割り当てられている。

次に出現頻度の高い「I」は「・・」に、「M」は「--」に、「A」は「・-」に、「N」は「-・」といった具合だ。

これで通信にかかる時間を短縮出来る。

人力だからこそ可変長コードだな。

コンピュータなら8bitや16bitの固定長コードが普通なんだが。

また文字とは別に、出現頻度の低い数字は全て5個長にする。

まぁこれは数字の変化を順番に並べて分かり易くする意味もあるし。


ランバート符号もこれに倣って決めているが、なにせアルファベットとは似ても似つかぬ文字だ。

意味も使い方も全く異なる。

入学する前に乱読していた本である程度の出現頻度は感覚で掴んでいたのでそれを元に当てはめているが、本当に世の中の文章がそれに当てはまるかは分からない。

まぁ多少効率が落ちたところで決めたもん勝ちなんで文句は言わせない。


あれこれ入れ替えて2時間ほどでやっと落ち着いた。

試しに叔父に書いて貰った紹介文を指で打ってみる。

光る魔石の下に同期魔方陣を敷いたのを置いたままだったので、その横に本を積んで石より少し高くする。

その本の上に発行魔方陣を書いた紙を置き、端を少し出して指で押すと光る魔石に触れる様にする。

そうやって、文章を打ってみた。


前世で友人と遊びで覚えていたモールス符号だが、全く異なるこちらの文字体系では覚えるのに時間がかかりそうだ。

数行分打ってみたが、これはまず符号表を丸暗記しないと効率が悪い。

あれこれやっていたらちょっと疲れたので、今日はここまでとした。



次の日の朝は順当にアンナに起こされる。

ラノベ定番の台詞は起き抜けにはキツいので言わない。

アンナは何か期待した様な表情をしてこちらに顔を近づけていたので、おでこにデコピンしてやった。


ちょっと膨れたアンナに手伝って貰って着替え、朝食に行く。

叔父家族は皆揃っていていつも俺が最後だ。

まぁ叔父家族で決めたという時間に遅れている訳ではないので、誰も文句は言わない。

3人で楽しそうにおしゃべりしているので、わざわざ俺が早めに行って割り込んでもという気持ちもある。

まぁその時は早めに朝食が始まるだけだろうが。


朝食後、叔父に昨晩作った「ランバート符号」を見せる。

まだ「ランバート符号」とは書いてないが。


「叔父上、光る魔石で文字を伝えたいと思いまして、光らせる時間を2種類作り、その組み合わせを考えてみました。だいたい短い方が瞬きするより少し長い程度、長い方が片目を瞑って合図をする程度としています。これを文字に割り当てた長短の組み合わせを一文字づつ少し間を空けて続けて光らせていきます。受ける方は、この長短の割り当てを文字に直して書き留めます。」


「これに似たことはダンジョンの階層を伝える時にやっているな。光る回数で階層の数字を伝えるんだ。二桁なら順番に2回送るとかだな。これで救援の速度が劇的に上がる。無駄な捜索をしなくとも良くなるからだな。」


「その話は私も聞いていました。ただ、私がやりたいのは文章を送って手紙や伝書鳩便の代わりにしたいということです。光る魔石の同期速度はほぼ瞬時なので、送る方と受ける方が文字割り当てを熟知すればかなり速く文章が遅れるかと。」


「確かに理屈はそうだな。だけど光る魔石の同期距離はかなり大きな物でせいぜい10キロムだよ。普通に使われる物は3キロムも届かない。その程度の距離で文章を送る意義があるのかな?」


「それも承知しています。私は光る魔石の到達距離を伸ばすことも合わせてやりたいと思っています。まだその手段は調べている最中ですが。」


色々な方法が考えられるしな。

・光る魔石自体の到達距離を上げる。発光魔方陣に適量の魔石を抱かせ、同期魔方陣の効力を高める。

・同期魔方陣の改良。同期魔方陣の構成を工夫し、少ない魔力で大きな同期魔法の発生をさせる。

・指向性の付与。放物線鏡を2枚向かい合わせてそれぞれの焦点に光る魔石を置く原理で距離を伸ばす。

・光る魔石を複数組数珠つなぎにして繰り返し同期距離を繋げる。2組の受信側石と送信側石をどう繋げるか。

勿論、可能なら上記を全部併用する気でいるけどね。

ダンジョンの中で移動するなら無指向性が要るが、固定間なら指向性を高めるのが簡単そうだ。

同期魔法は地中からでも通じる様に、途中の地層や岩盤には殆ど影響されないとのことだ。

これは電波には無いメリットだな。

途中に山があってもそれを貫通するイメージで置ける。

まぁ山脈規模になると多少なりとも減衰はあるかもしれないが。

その時は山頂中継局だな。

鉄塔の上にパラボラ2個置くか。


叔父からはそれ以上は聞かれなかったので、そのまま学園に行く。

今日も護衛2人と専用馬車だ。

叔父宅の地下室はまだ武器庫は置かれていないので暫くはザンドは馬車のお守りだ。

ちなみに、夜間は専用の馬車庫に入れて厳重に施錠しているので盗難やいたずらの心配は無い。

学園入学前にガーソンと協力して大型で頑丈なシリンダー錠もどきを作っておいたのだ。

専用キーが無いとどうやっても開かない。

この世界のピッキング程度で開くものでもないしな。


学園に着くといつもの面々が迎えてくれる。

昨日はよく寝たので目の下にくまは無いだろう。


「よう、眠そうだな。」


「まーた夜更かししてたんでしょう。」


馬鹿な。

そんなに俺の顔は眠たいのか?

眠くはないんだが眠そうに見えるっってことだよな。


「いや、昨日は早めに寝て熟睡したはずだが。実際、今眠くはないし。」


「でも半分寝ているみたいだぜ。もうちょっと目を開けろよ。」


「へーへー、すんませんね。眠たい顔で。でもこれは生まれつきだ。」


そこで4人とも笑う。

まぁ馬鹿にされてる訳ではないので水に流そう。

俺は心が広いのだ。


「今日は昨日言ってた光る魔石の文章伝達に使える符号表を持って来た。これを見てくれ。」


俺はランバート符号表を皆に見せる。

この世界の文字数字と、符号化されたトンツーの組み合わせを説明する。

指でテーブルを叩きながら符号の長短と文字の間隔を実演して見せる。

ある程度覚えていたので10文字程度はすぐに打てた。


「こんな感じだな。この符号表を丸暗記する必要はあるが、数はそんなに多くはないので誰でも出来るだろ。そして、今やって見せた様に、1文字づつ少し間隔を空けて順番に打っていけば文章が伝わる。」


「確かにこれは画期的だな。ダンジョンの中でこれを打ったら、今の遭難状況が詳しく分かる。」


「そうね、これ、商業者の新規商品保護登録に申請出来ないかしら。この表を権利として登録し、一枚いくらで販売するの。」


「いやー、それってこっそり書き写されたらお終いだよね。イメージ系の魔法で写し取ることも出来るし。」


「あら、確かに。ちゃんとした物が無いと権利の主張は難しい様ね。」


さすがにスカーレットは大店の娘だ。

商業者協会の業務内容は知っている様だな。


「これ、勝手に広まると途中で違う種類の組み合わせに変えられたらやっかいなことにならないか?」


「そうだね、まず学園で効果を試して貰って、学園の研究結果にして貰った方が良いかも。」


俺は授業の後、担任のショーンを呼び止めてアポを取る。

全ての授業が終わった午後4時過ぎにショーンの個室に5人で訪れ、符号表の話をする。

文字出現頻度に応じた可変長コードで、文章伝達にかかる時間を短縮出来ることも言う。

制御コードは6文字の固定長とし、「通信開始」「通信終了」「再送信せよ」「訂正」「了解」を割り当てるなど。


「そうだね。確かに覚える手間はかかるが、一旦覚えてしまえば使い道は広いね。よし、魔石専門職の研究者に打診してみよう。」


「ありがとうございます。その符号表は写しなのでお持ちください。また、その割り当て内容は私が独自に考えたものなのでそれがベストかどうかは分かりません。もっと良い組み合わせがありましたら変更しても良いと思います。」


「うん、それは連中に聞いてみよう。だが、君が書いたこれはなかなかの完成度だと思うけどね。」


「そう言って頂けると嬉しいです。実はその表はちょっと苦労したので出来ることなら変えたくないです。」


俺の表はちょっとだけ自信がある。

なにせモールス符号の長短信号の構造を使った可変長コードだ。

この世界にはまだ無い概念だろうし。


ショーンは頷いてまず符号表を自分の紙に書き写していった。

他の4人も符号表を書き写し、個別に覚えていく。

1時間経ったころ、ショーンが顔を上げて皆を見る。

ショーンは個室の棚にあった光る魔石と同期魔方陣、発光魔方陣を持って来た。


「では、この対になった光る魔石で伝達をやってみようか。この部屋の隅のテーブルに行き、そこで魔石の光る面を向こうに向けてそれぞれ見る様にしようか。」


俺とショーン、ジャンが今座っている席、ジャックとジャネット、スカーレットが向こうのテーブルに着いた。

それぞれお互いに光る魔法石の発光面を見えない様に置き、更に目隠しの箱をその前に置く。


「では、私が簡単な文章を伝えてみるからそちらで書き取ってくれないか。」


「はい、ではどうぞ。」


ショーンが発光魔方陣の紙を光る魔石に断続して触れ、短い文章をゆっくり伝えていく。

ジャックがペンを取って紙に向かっている。


「OUTOGAKUEN NO MASEKISENMON」


ジャネットとスカーレットが符号を読み取って声に出して言う。

ジャックがそれを紙に書く。

2回同じ文章を送り、ジャックが一部訂正していた。


「さて、答え合わせだ。」


ジャックが書き取った紙を持ってこちらに来る。

ショーンが下書きした紙と見合わせる。

王都学園の魔石専門。


「確かに合っているね。符号さえ覚えればこれは便利かもしれないね。」


ショーンは送る方向を変えて何回か伝達の往復をした。

やっているうちに光ではなく、音でトンツーを聞けた方が良いという意見が出た。

ジャックが光の点滅を見ながら紙に書くのが辛いと言ったのがきっかけだった。


「確かにね。音なら聞きながら目は紙の上に向けられるから、書き取るのに苦労しないだろうしね。」


うん。

実は俺もそれは思っていた。

モールス信号も電波の搬送波の有る無しで、受信器の音の断続で聞いて伝えるものだし。

だけど、光を音に変換する方法が思いつかなかったので先延ばしにしていたが、これは渡りに船だ。


「それ、いいですね。耳で聞くなら目を瞑っていても分かりますもんね。光なら気がつかなかったり見逃すこともありそうですし。」


「そうだね。それも含めて魔石専門職の連中にやって貰おう。」


「もし、それが実用に耐えると判断されたらその伝達方法の符号表で統一して普及させたいんですが。」


「それも分かるよ。勝手に変えられたり追加されるとお互いに意志の疎通が出来なくなるしね。よし、専門の連中が実用の判断をしたら学園の後ろ盾で広めようか。で、この符号表の名前は何だい?」


「ランバート符号でいいんじゃない。」


「そうだな、マーティン符号ではちょっとおかしいんでやっぱりランバート符号だな。」


「うん。僕もそれがいいと思うよ。」


「賛成。やぱり発案者の名前にするのが一番いいわよね。」


ジャネット、ジャン、ジャック、スカーレットが賛同する。

ちょっと恥ずかしいんですが。

俺はニヨニヨしてしまうのが止められなかった。


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