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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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49◇光る魔石

49◇光る魔石

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その日の夕食後、自室で昼間に5個ほど買っておいた光る魔石をいじる。

大きさにもよるが、およそ1個500シエク(5千円)だ。

俺は父親から通常の小遣い以外に特別手当の様なものを貰っている。

通常小遣いは月5000シエク(5万円)。

特別手当は月50000シエク(50万円)になる。

魔の森での功績や魔道銃の製作指導、9mm拳銃、89式、バレットM95などの召喚などへの報償だな。

功績の割には少ないなと思うが、俺がまだ13歳であることを考慮してあえて少なめにしてあるとのことだった。

それに、今では俺が要求すれば殆どスルーで様々な物を購入したり製作依頼出来るので実質問題は無い。

まぁランバート領では使うこともあまり無かったので、俺の商業組合の総合銀行口座の残高はえらいことになっているがな。

引き出しはどこの地方の銀行でも出来るんだが、ある程度以上の高額引き出しになると銀行間の連絡が必要になる。

近い所は早馬でやっているが、ある程度離れると伝書鳩を使っている。

これを何とか出来たら大儲け出来そうだ。


おっと、光る魔石だったな。

まず、発光魔法陣を紙に書いて触れさせてみる。

確かに光るが、少しぼんやりとした明かるさで周囲を照らす程ではない。

発光魔方陣を色々調整してみるが、明るさは殆ど上がらなかった。

図書館で調べた光る魔石の使い方の様に、買って来た1個を2つに割ってみる。

テーブルの上で1mほど離し、両方の下に同期魔方陣を描いた紙を敷く。

分割面を自分に見えるようにし、片方の光る魔石に発光魔方陣を触れる。

すると両方の光る魔石の分割面から眩しい光が出た。

あわてて発光魔方陣を離すと光はすっと消えた。

片方の光る魔石と同期魔方陣を部屋の隅のテーブルに移し、同じ様にしてみると少しだけ発光量が減った。

更にその光る魔石と同期魔方陣を屋敷の廊下の一番遠い所に置いて試すと更に発光量は更に減る。

やはり距離に応じて同期する量が減るから光量も減るようだ。

試しに発光魔方陣に魔力を込めて光る魔石に触れてみるといきなり「バン」と音を立てて割れた。

割れた光る魔石は魔力を込めない発光魔方陣を当ててももう光ることはなかった。


更に試す。

光る魔石を4分割し、全てに同期魔方陣を敷く。

その内の一つに発光魔法陣を当てると4個全てが光った。

但し、光量はかなり下がる。

すげぇ、ネットワーク・ブロードキャストだ。


とりあえず2分割での性能を試すことにした。

発光魔方陣に魔力を加えると光量が増すことが分かったので、予め一定の魔力を込めた魔石を発光魔方陣に貼り付ける。

込める魔力を徐々に増やしていくと、ある程度で光る魔石が割れることが分かった。

なら、余裕を持たせた範囲で使えば良いな。


更に色々試す。

発光魔方陣を描いた紙の端をギザギザに切る。

そこを光る魔石に擦る様に当てるとかなり速く点滅する。

豆電球というよりはLEDに近いかな。

これなら情報伝達デバイスとしてある程度使えるかもしれない。


俺はステータスの魔法隠蔽のことをすっかり忘れて光る魔石に夢中になっていた。

はっと気付くと書き散らした紙の束に顔を突っ込んで寝ていた。

外はもう薄ら明るい。

俺は諦めて寝間着を室内着に着替えてダイニングに行く。

調理師が朝食の準備をしていたので眠気覚ましになるものを欲しいと言う。

最近叔父がはまっているというカーヘという飲み物を淹れて貰った。


「これ、コーヒーじゃないか!これってどこでも飲めるの?」


「わたしゃカーヘと聞きましたが、コーヒーとも言うんですかい?少し前に旦那様が持って来て淹れ方を書いた紙を渡されまして。誰か眠気覚ましが欲しいと言われたら淹れる様に指示されてましたんでお出ししたんですよ。」


「そうなんだ。これ、美味いね。今度から私のは紅茶じゃなくってコレにしてくれないかな。」


「へい、分かりました。しかしその苦いのがいいんですかい?」


「うん、これ飲むと気分がはっきりするんだ。叔父上にも後から言っておくね。」


俺は思いがけず前世で好物であったコーヒーにありつけ、眠気も吹っ飛んで元気がみなぎった。

朝食時に叔父にコーヒーを飲んだことを言うと、「同志よ!」と言わんばかりに喜んだ。

今までかなりの人数に飲ませてみたが、皆拒絶したらしい。

まぁ初見は苦い泥水だもんな。


その後、メイド達にも俺には紅茶じゃなくコーヒーを入れて欲しいと言うと、叔父も今後自分もそうして欲しいと言っていた。

今まで一緒に飲む人が居なかったので、よっぽどのことが無いと飲まなかったとか。

まぁメイドにしたら余計な手間が増えるから奥方もあまりいい顔しないしな。


俺は珍しい飲み物には手間もお金もかかることは分かっていたので、メイドと調理師にはコーヒー代を渡した。

叔父にも渡そうとしたが、それは拒否された。

さすがに甥にたかる様で気が引けるらしい。

しかし俺も父親からまかされている事業でかなり稼いでいることを話し、これは自分の為でもあるし、色々な種類のカーヘを飲みたいと希望を言うと、叔父は喜んで賛同してくれた。

実は叔父は屋敷内で見た目泥水のカーヘを飲むことはかなり家族に気を使っていたらしい。

俺という同好の士が出来てだいぶ気が楽になったとか。


さて、脱線したが本題に戻ろう。

昨日の実験でデータ通信に使えそうなのは分かった。

そこで構成を脳内シミュレートしてみる。

まず、一番単純なモールス信号だ。

モールス符号という「トン」と「ツー」の2種類の長さの信号を組み合わせて扱う情報伝達だ。

これを光る魔石の発光時間で再現する。

地球のモールス通信では打鍵器という手動で断続しやすくした道具を使う。

ある程度大雑把に力を加えてても、一定の接触の断続をすることで安定したトンツーが打てる様になる。

発光魔方陣を手で持って光る魔石に触れさせて安定した断続をするのは至難の業だしな。

光る魔石を入れた箱の上に穴の空いた板を被せ、石の一部を板の上に覗かせる。

箱の光る魔石の下には同期魔方陣を描いた紙を貼り付ける。

箱の手前には小さな窓を開け、中の光る魔石の発光する分割面が見える様にする。

その上にシーソー状になった板に発光魔方陣を貼り付けた物を付け、小さい板バネで僅かな隙間が空く様にする。

隙間はネジで調整出来るようにする。

板の上に握りやすい丸い取っ手を付ければ完成だ。

早速図面を書いて護衛と共に王都の工房を訪れる。


予め叔父に聞いていた城下で有名な工房を訪ね、叔父に書いて貰った紹介状を見せる。

すると最初は横柄な態度だった店主が手の平を返した様に愛想が良くなる。

まぁこっちは見た目13歳なガキだしな。


「この紙に書いてある様な物を2つ作って欲しいんだけど、出来るかな。」


「へい、作れると思いやす。特に変わった行程も要らない様なので、3日もあれば。」


「材料込みでいくらくらいで作れる?あ、光る魔石はなるべく大きい物を市場で仕入れて2つに割っておいて欲しいんだ。それをそれぞれに入れて同じ様な構造にして欲しい。」


「そうですね。全部で1万シエク(10万円)ってとこでしょうか。」


意外と安いな。

まぁ3日で作れる程度なんでいくら有名工房でもそれ以上はぼったくれないか。

魔石も大きくても2千シエク(2万円)程度だろうし。


「では、それでお願い。出来たらここに届けられるかな?」


俺は叔父の屋敷の地名番地と簡単な地図を書いた紙を渡した。

それと共に1万シエク金貨を1枚渡す。

店の親父は護衛付きとは言え、子供がいきなり1万シエク金貨を出したことにちょと驚く。

本当に仕事の価値が分かっているのかという様な表情を僅かにしたが、すぐに真面目な顔に戻して礼を言う。


その後、工房を出て叔父に聞いていた素材屋に行く。

昨日買った光る魔石よりもっと大きくて高品質な物が欲しいので叔父に聞いていたのだ。

その素材屋は表にでかい獣の頭蓋骨や背骨、大腿骨みたいな太い骨を陳列していた。

その横には薬草や鉱石をある程度分類して展示している。

店内に入るとカウンターがあり、その後ろの壁は一面小さな引き出しの付いた棚になっていた。

薬品の匂いがプンとする。

頭のハゲた壮年の男がこちらを値踏みする様に見てくる。


「光る魔石ってないかな。」


俺が言うと男は黙って後ろの棚から割る前の魔石を2個出して来た。


「この店で一番大きい光る魔石を見せて欲しいんだ。」


俺がそう言うと、男は不機嫌そうに尋ねる。


「何に使うんだ?子供のおもちゃじゃないんだぞ。」


そこで俺は叔父に書いて貰った紹介状を見せる。

またもや男の態度はクルっと回った。


「いらっしゃい。へへ、どういう光る魔石がご希望なんで?」


「なるべく大きい物か、なるべく明るく光る物がいいな。」


「そえならこちらはどうでしょう。この店で一番大きくて明るく光る魔石になりやす。」


まぁこの手の店が貴族の権威主義に弱いのは仕方がないが、初見で侮られるのはやはり悔しい。


「まぁまぁだな。もっと大きくて明るいのは入手出来ないのか?」


「暫くしたら入荷する予定がありますので、その時に取り置いておくことは出来やす。どうしましょ?」


もみ手をしそうな勢いで愛想笑いをしている。

俺は先ほど出して来た大きな光る魔石を買うと言い、次回入荷でもっと大きな光る魔石があったら取り置いてくれと言う。

この魔石が6千シエク(6万円)で、取り置いて貰う石はその時の入荷価格で決まると言われる。

どちらも了承して千シエク銀貨を6枚渡した。

それとは別に予約料として千シエク銀貨を3枚渡す。

念のため予約の領収書を書いて貰った。


「まいどあり~」


ハゲ男の愛想笑いと共に店を出て馬車に戻り、留守番をしていたザンドに預ける。

今買ったこの大きな光る魔石は俺自身がいじくり倒す用の魔石だ。

モールス用の魔石とは別に欲しかった。

言わば、原理試験用だな。


次に再び中央図書館に行く。

当日入館料を払い、司書に光る魔石について聞く。

昨日と同じジュリアが担当してくれた。


「光る魔石についてですか。でしたらこちらの鉱物に関する書籍が詳しいですね。」


今度は階段を一つ上がった2階の中央付近の書架に案内された。

昨日同様、書架の案内が書かれた案内図を貰う。

今度はずばりの解説が載った本があった。

近い書籍も合わせて5冊くらい抜き出し、書架の端の閲覧机に置く。

デビッドと合わせて光る魔石に関するページを20枚くらい書き写した。

コピー機かカメラが欲しいところである。


をっと、そこで思い出した。

自衛隊魔法のランク2装備にインスタントカメラがあったことを。

早速デビッドに上着で影を作って貰って、その中でインスタントカメラを召喚する。

書架の中は暗いので、階段の近くの明るい所に本を持って行ってこそこそ撮影する。

完全手巻きで電池も入っていないので勿論ストロボなんてものも無い。

だが、インスタンカメラなので写したその場で現像される。

一緒に召喚された10枚入りフィルムパック5個を全部使い切ったな。

勿論、レンズがショボいのであまり鮮明ではないが、さすがは現代日本のフィルム、文字程度ならはっきりと読める。

うん。

バレたら大変なことになるなと思いながらデビッドとこそこそ作業した。


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