44◇クラス分け
44◇クラス分け
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教会でのステータス確認が終わると別室に案内され、紅茶と菓子がふるまわれた。
さすがは貴族の行く学園だな。
お子様連中の不平不満が出る前に懐柔するつもりらしい。
だが、壁際には採点用紙を持った教員らしき男が数人いる。
マナーでも採点しているのだろうか。
しばらくすると手押しカートに薄い手提げバッグを沢山乗せて教員らしき男が入って来た。
バッグの上には小さな紙が貼られている。
「今からお名前を呼びますので、呼ばれた方はこちらに来て教科書と文具の入ったバッグを受け取ってください。」
一人づつ名前が呼ばれ、バッグを受け取る。
俺も受け取る。
中を見てみると薄い教科書が5冊と筆記用具入りの小箱が入っていた。
小箱を開けると鉛筆が3本、消しゴムらしき黒い塊が1個、小型のナイフが1本入っている。
自分でナイフで鉛筆を削れということだろう。
鉛筆は芯が太く、簡素な造りをしていたので書きにくそうである。
芯は先ほど答案を書いた時の感触では黒鉛というよりは炭に近い書き味であった。
本の下には本より少し小さめなノートが2冊入っていた。
簡易綴じの紙束といった風情なので書きにくそうである。
まぁ教科書が配布されるだけまだマシだ。
一応活版印刷技術があるということなので、図書館にも期待が持てる。
「さて、これからクラス分けをします。クラスの後に名前を呼ばれた方は部屋の隅にクラス名の書かれた板を持っている教員の所に行ってください。」
今回の入学人数はこの部屋で全部らしい。
およそ50人くらいだろうか。
部屋の四隅にはクラス名が書かれた板を持った教員が居る。
・ハイランドクラス
・スーペリアクラス
・グランドクラス
・ゴールドクラス
どういう名前の付け方だよ。
どれも一等賞みたいな名前だな。
ハンスに前もって教えて貰っていた各意味は以下だそうだ。
・ハイランドクラス:最優秀クラス。筆記もステータスも上級。
・スーペリアクラス:優秀クラス。筆記は優秀でもステータスが普通。
・グランドクラス:普通クラス。筆記もステータスも平均的。
・ゴールドクラス:下等クラス。筆記もステータスも平均より下。
だいたい同じ人数に振り分けられた。
俺はもちろんハイランドクラスだ。
あれでも筆記も少し手を抜いている。
計算問題もあったが、何問かわざと間違えているし。
まぁステータスが過去ベストに近いだろうから、それ以下にすると上層部が黙ってないだろうし。
俺の入ったハイランドクラスの生徒は11人居た。
他のクラスより少し少なめだ。
まぁ少人数の学習環境なら教師も楽だろう。
振り分けが終わった俺たちはそれぞれの教員に引率されて各教室に移動する。
扉の上に「ハイランド」と書かれた教室に入り、好きな机に座る。
教壇に立った教員が説明を始める。
「皆さん、私が3年間このクラスを担当する教師です。名前はショーンと言い、専門は魔法理論学です。他に一般教養と物理学を教える担当となります。」
教師は40歳手前に見えるメガネをかけた背の高い男だった。
自己紹介ではその他に研究対象として、魔法行使の効率を上げる魔方陣や効率的な魔石の使い方、ゴーレムの自律動作に関する研究をしていると言っていた。
その後、一人づつ自己紹介をした。
俺は7番目だった。
「マーティン・ランバートです。魔法は家庭教師からある程度学びました。剣技も少々出来るかと思います。このクラスの皆さんもかなり出来そうですので、切磋琢磨出来たらと思います。」
ちょっと徴発してみた。
たぶん俺より能力の高い生徒は居ないはずだ。
居るなら徴発に乗るだろうから、一種の炙り出しだな。
面倒な芽は早い内に摘んでおくに限る。
まぁ万一もあるから油断はしないがな。
「ジャン・ザルツだ。俺も色々学んできた。負けるつもりはないからそのつもりでよろしく。」
「ジャック・フーバーです。本が好きで、色々専門書も読み込んでいます。学園の図書館が楽しみです。」
「ジャネット・オズマンです。私も魔法はそれなりに出来るつもりです。競い合う仲間が出来るのは嬉しいです。」
「スカーレット・バーグマンですわ。商売に関することなら誰よりも詳しいですの。ご希望の品があればご用立てしますわよ。」
おいおい、教室内で商売するんじゃない。
まぁ教師が止めないのでこれくらいは許容されているのかも。
自己紹介が済むと、教師は授業の内容を説明した。
午前9時授業開始で1時間目、15分休憩で2時間目、15分休憩で3時間目で12時半となり、昼休憩が1時間ある。
午後1時半より4時間目、15分休憩で5時間目となり、午後3時45分に基本授業が終わる。
その後15分休憩を挟んで午後4時から6時までの2時間、任意参加の課外授業になる。
時間は学園の大鐘楼の鐘の音で知らせられ、授業の始まりに3回、授業の終わりに2回、授業の始まる3分前に予鈴で1回鳴らされる。
大鐘楼は学園中央に一番高く建っており、四面に大型の時計が設置されているので学園内のどこからでも見える。
生徒は休憩時間は常に時計で時間を把握し、次の授業に遅れない様に教室に入ること。
うん。
完全に小学校だな。
ちょっと時間の区切りが分かりにくいが、予鈴もあるので失敗することはまずないだろう。
授業は国語、算数、理科、社会、剣術、魔法の6分野があり、週8日の内6日間の30時間に各5時間づつ割り付けられる。
これまた小学校みたいだが、剣術と魔法があるのがこの世界らしい。
とりあえず各学科の触りの部分から授業は始まった。
教室は固定で、教師が移動する方式なので休憩時間は同級生との会話タイムである。
自己紹介で最後の4人とは席が近かったので俺の徴発に乗ってきた。
「マーティン、俺はザルツ子爵領だからお前の所の西隣だな。今まで会ったことはあるか?」
「いや、会ったことはないな。うちの領とザルツ領との間にはあまり交流が無いだろう。」
「そうだな。俺も他領には行ったことが無い。だが俺の家庭教師は優秀だぞ。お前には負けないからな。」
「あーら、ジャンさん。私の商会の支店はザルツ領にもあるでしょう?ご存じなぁい?」
「たしか、バーグマンだったな。確かに領都にバーグマン商会はあるな。そこの娘か?」
「そうよ。私長女なので商会の跡取りなの。この学園には学ぶことの他に商売の幅を広げるために来たのよ。」
思い出した。
バーグマン商会。
ランバート領にも支店があるな。
確かウィラード商店と王都でライバル関係だった様な。
磁石関係でニコラスを屋敷に呼んだ時にセバスチャンから聞いたことがある。
この時はバーグマン商会には磁石関係の商品が殆ど無かったのでウィラード商店を呼んだんだったな。
「ウィラード商店とはどっちが大きいんだ?」
俺は純粋に興味本位で聞いたら途端にスカーレットの機嫌が悪くなった。
「あんな何でも屋とは一緒にしないでちょうだい!バーグマン商会は由緒正しい貴族のお店なの!」
へ、へぇ、それで磁石関係の玩具が殆ど無かったんだ。
さすがセバスチャン、店の見かけに惑わされずに本質のあるウィラード商店を呼んでくれた様だ。
「わかった、わかった、ウチの領都にも両方あるけど、確かにバーグマン商会の方が立派だな。」
そう言うと、スカーレットは満更でもない表情を浮かべたが、目が合うとそっぽを向いた。
ちょっと面倒な奴だがひねくれてはいないみたいだな。
「あ、僕もいいかな。僕は王都生まれなんで他の領都は知らないんだ。君たち王都まで来るのにどれくらいかかるんだい?」
ジャックが訪ねる。
確かフーバー家は魔法に秀でた人材を排出することである程度知られているんだったな。
ハンスが師事した恩師もフーバー家出身だと言っていた。
「まず俺から。ランバート領までは馬車で7日だな。途中で2回丸一日休むからそれを省略すると5日かな。」
「俺のザルツ領はそれよりちょっと遠いな。馬車で休まず走って6日ってとこだ。」
ランバート領の西に隣接するザルツ領は北接するローバー領でランバート領と道が分岐している。
距離も少し遠いのでプラス1日ってとこか。
「僕たちは3人とも王都出身なんで実家からの通いなんだよ。」
ジャックがそう言うと、スカーレットとジャネットが頷く。
同い年なので顔なじみなのだそうだ。
「俺は王都の叔父の家に居候させてもらって、そこから通うんだ。だいたい20分くらいかな。」
「俺は学園内の寮に住むんだ。授業が終わったら案内してくれるそうだ。」
「私もいいかな。私も王都の実家からの通いなんだけど王都の東の外れでちょっと遠いの。馬車で1時間半もかかるんで私も寮に入れる様に申請してるんだ。まだ返事が無いんだけど。」
「へぇ、男子寮だけでなく女子寮もあるんだ。まぁ通えない生徒は男女両方居るから当然か。」
俺が言うとジャンが今度男子寮に遊びに来いと言う。
俺とジャックは是非にと言うが、女子2人はためらっていた。
そりゃそうだろうな。




