37◇鉛玉
37◇鉛玉
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ハンスのバレットM95の訓練をした翌日の朝方、ガーソンが鉛玉関係一式を持ってきたとルークが呼びに来た。
護衛詰所に行くと、マークと魔法組、ハンスが揃っていた。
「お待たせしました。これがご依頼の鉛玉を作る工具と鉛の塊と溶かす鍋です。」
ガーソンがテーブルの上に置かれた包みを広げて見せる。
鉛玉工具を手に取って開いてみる。
確かに前世で見た火縄銃に使っていた奴と殆ど同じだ。
閉じて合わせ目を窓に向けて透かして見ても隙間は殆ど無い。
湯口の上も漏斗状になっていて溶けた鉛を入れやすそうだ。
「うん。思ったとおりの仕上がりだ。これで試してみるよ。」
「何回も開いたり閉じたりすると噛み合わせが緩くなる場合があります。もし鉛が漏れてくる様になったら調整しますのでお持ちください。」
「うん、分かった。ちょっと小さめに作って貰っているから調整で内径を少し大きくして貰うかもしれないよ。」
「承知しております。少し削るだけですので1時間もあれば出来ますよ。」
ガーソンはそう言うと今回の納品書を出して来た。
了承してマークに渡す。
「では、あっしはこれで。また何かありましたらよろしくお願いします。」
ガースはそう言って帰っていった。
さて、お待ちかねの鉛玉だ。
一式持って射場に行き、射場に敷き詰めた土を一部土魔法で変形させてかまどを作る。
その上に鉛の塊を1個入れ、下からファイアで炙る。
ハンスとデビッドも手伝ってくれ、10分くらいで鉛が溶けてどろどろになった。
鉛玉工具の先もファイアで1分ほど炙り、鉛が流れやすい様に温度を上げる。
予め作っておいた大きめの鉄製のスプーンを曲げて作ったひしゃくで、工具の上の漏斗状になっている部分から溶けた鉛を流し込む。
満杯になって上から溢れたら止め、しばらく待って工具を開くとひしゃげた丸い物体が転げ出る。
うーん失敗だ。
工具の温度と流し込む勢いを何回か試してやっと丸い鉛玉が出来る様になった。
ハンスと魔法組にも一通りやらせてみて、すぐに全員が丸い鉛玉を作れる様になった。
みんな器用だね。
湯口の「へそ」を本格工具から出したニッパーで切り、ダイヤモンドヤスリで削る。
工具の合わせ目に少し溢れたバリも削り、ほぼ真球に仕上げていった。
30個くらいほぼ真球の鉛玉が出来たのでひとまず玉造りは終了とする。
失敗した鉛玉を鍋に放り込んで溶けたところでファイアを止める。
冷えると鍋ごと固まるが、次回そのまま溶かして使おう。
鉛玉を入れた箱を持って射場のテーブルの上に置き、試作魔道銃の尾栓を抜く。
銃口を少し持ち上げて全体を斜めにし、ハンスに銃口から鉛玉を入れてもらう。
それを尾栓の方から見ていると10個のうち7個はスムーズに転がって来る。
3個くらいが時々引っかかって少し銃身を叩くと落ちて来た。
うーん、ちょっと緩いかな。
銃口を下にすると玉ポロするし。
まぁ試作魔道銃は水平にしか置かないし、フェルトのワッズも詰めるので問題無いだろう。
水平に戻して貰い、尾栓を締めてその後ろに木のブロックを差し込んで発射準備に移る。
ハンスに試薬3号を用意して貰い、発射準備をする。
試作魔道銃の銃口を上に向け、試薬3号をまず3g入れてみる。
木の棒で試薬を突き固め、分厚いフェルトを入れる。
その上から作った鉛玉を入れて軽く押さえる。
銃を水平にしてテーブルに置き、銃口を的の方に向けて狙いを調整する。
火口に試薬3号を小さじで入れて少し盛る。
皆にテーブルの後ろに下がる様に言い、発火魔方陣を木の棒の先に付けて用意する。
全員耳栓は装着済みだ。
俺は試作魔道銃の斜め後ろに盾を構えて上から目を出す。
ウィンドエバキュレーターを銃口に展開し、防護メガネ越しに見ながら火口に発火魔方陣を当てる。
パンという軽い音と共に鉛玉は的の一番下に当たり、後ろの土壁に3cmほどめり込んでいた。
試薬3号を6gで撃つと、的の少し中央寄りに当たって、後ろの土壁に6cmほどめり込む。
試薬3号を9gで撃つと、的のほぼ中央に当たり、後ろの土壁に10cmめり込んでいた。
護衛用の矢の重さが約26g、鉛玉の重さが約24gなのでこ短距離でのこの結果は妥当なところだ。
参考までに9mm拳銃で同じ的を撃ってみると、後ろの土壁に16cmめり込んでいた。
これは初速が速いのと、弾頭が小さくて固いので貫通力が高いせいだろう。
鉛玉の初速は測定器具が無いので分からないが、土壁へのめり込み度合いからして威力はこんなもんだろう。
あまり欲張ってもキリが無いし、なにより危ない。
ここらで一旦妥協し、河原の射場に持って行ってみよう。
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午前中に鉛玉作りと短距離での試射が終わったので、試作魔道銃と周辺部材を馬車に積んで河原のの試射場に行く。
マークとハンスと俺は馬車で、魔法組は馬で来た。
まず、小山を少し修正して的を4個並べる。
次に目印を置いていた100mの位置に移動してテーブルを降ろし、テーブルの水平を確認する。
分度器に糸を付けた錘を組み合わせた簡単な物だ。
試作魔道銃を据える。
一番左の的に向けて尾栓を外して後ろから覗き、銃身の中心の延長に的が真ん中に見える様にしてテーブルに目印の線を引く。
他の的に対しても同じ様にしてテーブルに目印の線を引いた。
装填後に適当に狙うよりもかなり精度は高いだろう。
試作魔道銃に試薬3号を9g入れ、木の棒で試薬を突き固めて分厚いフェルトを入れる。
その上から午前中に作った鉛玉を入れて軽く押さえる。
銃を水平にしてテーブルに置き、銃口を一番左の的の方に向けて狙いを調整する。
火口に試薬3号を小さじで入れて少し盛る。
発火魔方陣を当てて撃つ。
着弾は的の20mくらい手前の地面に当たって河原の石が砕けて粉が舞った。
次に再装填した試作魔道銃の銃身の下に木の板を噛ませ、5度ほど上向きにする。
撃つと的の上の方に着弾した破片が舞った。
小山を超えても500mも飛びはしないだろうし、小山の向こうも1kmくらいは河原と川面だから安心だ。
次は3度くらいに角度を調整すると的の右端に当たった。
続けて10発ほど撃つと、的の右半分くらいにばらけて5発当たったので少し右に逸れるクセがある様だ。
一番左の的を替えててもらい、試作魔道銃をほんの僅か左に向ける。
角棒の辺を見ながら小山の的の半分くらい左に向く様に微調整する。
テーブルには新たに線を引いておく。
これで10発撃つと、的全体にばらけて6発当たった。
的の所に行って見てみると、的を貫通して後ろの土壁にだいたい5cmほど食い込んでいた。
的も厚さ5mmくらいの丸い木の板なので、とりあえずこの程度の威力があれば初回ロットは十分だろう。
これで手持ちの火縄銃的外観の魔道銃を量産しよう。




