34◇尾栓改良
34◇尾栓改良
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昨日の発射試験は一応成功だと父親に報告する。
まだ本チャンの鉛玉での試験ではないが、代わりに護衛装備の矢を撃ち出してみてマークの引く弓よりも威力が強いと言う。
この調子で鉛玉と矢の両方試してみると言っておいた。
うーん、さすがに9mm拳銃やバレットM95を使っていた魔砲組にいきなり火縄銃もどきではちと可哀想か。
魔法があることだし、燃えかすの殆ど出ない発火魔石粉もあることなのでここは薬莢を使用した後装銃を考えるべきか。
燃えかすが殆ど出ないということは、燃焼速度さえうまく調整出来れば9mm実包などに使われている無煙火薬と同等に使えるということだ。
冶金技術もガーソンにあれこれ入れ知恵すればもっと高度な金属加工が出来そうだし。
うん、先日作った据え置き型魔道銃第一号は威力測定にそのまま使うとして、機構は後装銃と薬莢を考えてみるべきだな。
俺は自室で紙に落書きを始めた。
あれこれ前世の火器を思い出し、これなら今のこの世界でも作れるかなという構成を思いついた。
後装銃の単発でいいんだ。野戦砲みたいにスライド式の尾栓とし、真鍮か銅製の薬莢を使えば爆発で側面が膨らんでシールとなり、尾栓からの吹き出しを十分押さえられる。
または前世の後装式銃黎明期の様に中折れ式、尾栓振り上げ式、ボルトアクション式と色々考えられる。
極端なことを言えば薬莢を入れた後ろに形の合った鉄のブロックを差し込むだけでも用は足りるな。
それよりも雷管だ。
前世ではセンターファイア式は薬莢尾部中央に雷管という起爆装置を差し込み。それを撃針という先が細くなった鉄の棒で叩くことで雷管の表面が凹み、中の金具との間の起爆薬を強く挟んで発火させていた。
それが発火魔法石粉では使えない。
極小の発火魔方陣を発火魔石粉に当てるという動作を薬莢にどう組み込むか。
ここで俺はミスリルの存在を思い出した。
セバスチャンに買って貰った材料工学に近い本に書いてあったな。
ミスリルは魔道伝導率が高く、純度や合金比率によって伝えられる魔道信号の種類が変化するらしい。
これはハンスだな。
早速聞きに行こう。
「ハンス、居るー?」
「はいぼっちゃん。まだ試薬3号は出来ていませんよ。」
「今はそれどころじゃないんだ。ミスリルについて聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
俺はそう言うと、セバスチャンに買って貰った魔法金属が載っている本を見せた。
「「初めての魔法金属」ですね。私も学生時代に持っていました。これのどの部分が知りたいのでしょう?」
「ミスリルって魔道伝導率が高く、魔法や魔方陣の効力を伝達出来るって書いてあるけど、そこを詳しく知りたいんだ。」
「例えばどんなことでしょう?伝えたい魔法や魔方陣、伝えたあとどういう効果が欲しいかですね。」
「ずばり、発火魔方陣!発火魔方陣の効力を発火魔石粉に伝えるのに直接触れるだけでなく、ちょっと離れて伝えたいんだ。それにはミスリルを介せばいいかなと思って。」
「そうですね。それなら魔道銃を離れた所から発射出来ますもんね。」
ハンスは今の魔道銃の改良と思った様だが、勿論それもあるが薬莢の雷管ですよ雷管。
起爆装置としての雷管の代わりを発火魔方陣にさせるのに使いたいんだ。
だけど一足飛びに後装銃に行く訳にはいかないと思い止まり、話を合わせる。
技術的な実証も要るしな。
「今の魔道銃の構造では火口はただの小穴なんで、発火と共にそこから火柱が上がるでしょ。危ないし、せっかくの爆発力の無駄にもなるんで、完全に塞いだ状態で発火魔方陣の効力を内部に伝えられたらいいかと思って。」
「なるほど、確かにそうですね。完全に塞いだ方が安全で使い勝手も上がりますね。その上威力も増すのならやらない手はないですね。」
ハンスも賛同し、俺たちは魔道銃一号の撃発構造をあーでもないこーでもないと検討し始めた。
まず火口の穴を無くす。
火口の部分に発火魔法石に純度を合わせたミスリルを埋め込む。
爆発で吹き飛ばない様に銃身尾栓部の内側から頭のある釘の様な形状に加工して差し込み、外側で曲げて固定する。
ミスリル釘の太さは火口に少し叩き込むくらいの直径にしておけば漏れも少ないだろうし。
そのミスリル釘の外に出ている部分に発火魔方陣を触れさせれば内部で爆発するんだけど、それだけでは芸が無い。
やはりハンマー機構とトリガーは必須だな。
構造はまんま火縄銃でいいし。
「ハンス、バネってある?」
「ばね、ですか。それはどういった物で?」
「ガーソンの所で作っている長剣は叩いて作る奴でしょ。ああやって作った剣はある程度柔軟性があって、少し曲げても手を離すともとの真っ直ぐに戻るんだ。その金属の性質をバネって言ってるんだよ。」
「それならありますね。馬車の人が乗る箱部と車輪の付いている台車部との間に、乗り心地を良くするために板バネというのが入っています。それのことでしょうか。」
なんだ、あるんだ板バネ。
どうりで馬車の乗り心地がそんなに酷くないと思ってた。
「その板バネってガーソンは作れる?」
「馬車のメンテナンスも請け負っていたと思いますんで、たぶん出来るんじゃないですか。詳しくは直接聞いてみてください。」
「うん、分かった。明後日またガーソンが注文した物を持ってくるからその時聞いてみるよ。」
俺は紙に火縄銃に近い構造のハンマーとトリガーの図を書き、それに小さな板バネを付けて動きが連動する様に配置する。
ハンマーのヘッドに小さい魔方陣を彫った金属板を付け、トリガーを引いてハンマーが落ちると魔方陣がミスリルの釘に接触する様な構成で説明した。
同時に手持ちで撃てる様な火縄銃的な外観の銃を書き、尾栓の所にハンマーとトリガーを縮小して書き加える。
安全装置として、ハンマーのヘッドとミスリル釘との間に挟むスライド式のレバーも付ける。
火縄銃の火蓋の様なもんだな。
撃つ前に「火蓋を切る」って言うし。
「なるほど!これなら発火魔石粉と弾を装填したまま走っても問題無いですね。うっかりトリガーを引いても発射することが無いでしょうし。」
ハンスはバレットM95を触ったことが無いので銃のセーフティレバーは操作したことが無い。
しかし、先ほどの火縄銃もどきの安全装置についてはすぐに必要と気がつくくらいだ。
これなら少し射撃訓練をした方がより良いアイデアを出してくれそうだと思い、次の訓練に参加させようと思った。
それに、一人でもウィンドエバキュレーターが使える射撃手がいた方が戦力になるしな。
念のため、父親にも許可を貰っておこう。
報連相は大事だ。




