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29◇火縄銃もどき

29◇火縄銃もどき

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昨日は討伐後に馬車の中で寝てしまい、屋敷に着いたところでちと父親に起こされてちょっと赤面した。

完全にお子様じゃないか!

まぁ実際そうなんだけど。


夕食を食べた後、やはり相当疲れていた様で自室に戻るなりベッドにダイブして即寝落ちした。

魔法組はバレットM95一式を俺の部屋まで持って来て、父親が鍵を開けたガンロッカーに仕舞ってくれていた。

確認すると俺の分も含めて4セット入っていた。

やはり護衛詰所のガンロッカー設置は至急だな。


あの後、マーク率いる護衛部隊が屋敷の裏手にある大型の荷車を馬と御者ごと連れだし、ブラックタイガーの回収に行ったらいしい。

回収して屋敷に着く頃には日も暮れていたので、その日は護衛詰所の横の訓練場の隅にブラックタイガーの死体は幌に包んだままで置かれた。

一応秘匿物件なので護衛が二人組で夜番をしたとのことだ。


翌朝、朝食後に父親と一緒に護衛詰所にブラックタイガーの死体を見に行く。

マークとスティーブが全体の幌を外し、頭部の幌もめくる。

うげっとなってちょっと後すざる。

頭の上半分が無くなって、口周りから下だけ残っている。

父親とマークはそんな見た目にも臆した様子はなく、木の棒で死体をつついて調べている。

12.7mm弾は殆どが貫通した様で、死体の目に見える所には残っていなかった。

後で解剖するらしいので、骨などで止まっていたら見せて貰おう。


うーむ、四人がかりで撃ちまくったせいでぐっちゃぐちゃだな。

確かにオーバーキルだ。

銃自体も重いし、サプレッサーを付けないと発射音が響き渡るし。

海外には狩猟用のマグナムライフルで丁度良いのがあるんだが、さすがに自衛隊は持ってないよなぁ。

象を一発で仕留められる.460マグナムライフル弾なんて日本国内にあるわけないしな。

あれならライフルの重量は5kgくらいなんでお手頃なんだけど。

銃口エネルギーは12.7mm弾の6割程度だが、それでも十分だろう。

7.62mmや5.56mmに比べたら.460口径の11.6mmは十分強力だ。

おれが腕組みしながらうなっていると父親が声を掛けてきた。


「マーティンよ、改めて見ると凄まじい威力だな。通常の魔法ではここまでの威力は到底出ない。王族配下の魔法部隊ならこれ以上の威力があるかもしれないいが、私は見たことがない。これを上位にどう報告するかだな。」


無かったことには出来ないんですね、そうですね。

農民も数人殺されたことだし、あっという間に噂は広がるだろう。

その噂を聞きつけた他領や王都の軍部は確実に聞いてくる。

ううむ、何かうまい言い訳というか誤魔化し方はないかなー?

俺は半分現実逃避をしていると父親がある提案をしてきた。


「マーティンよ、この武器を鍛冶の工房で作ることは出来ないか?」


おお!その手があった。

何せこちらは魔法世界だ。

俺が入れ知恵をすれば魔力で現代冶金学を超えることも可能かもしれない。

あと、火薬についても魔石を一気に暴走させて爆発させる方法で代わりに使えるかどうかも試してみよう。


「はい、今気がつきました。こちらでも作ればいいんですよね。専門家ではありませんが、ある程度の銃に関する知識はあります。これをこちらの魔法と組み合わせれば実現出来るかもしれません。」


俺が拳を握ってフンスという顔をすと父親は少し悲しげな顔をした。


「お前が「こちらの」と言う度に少し悲しくなるぞ。本当にマーティンとしての記憶は無いのか?」


俺はしまったと思い、またそれが顔に出てしまった。


「はい。残念ながら。前の世界の記憶もだんだん薄れて来ている様です。今のうちに色々書き残しておく様にします。」


俺がそう言うと、父親はもっと悲しそうな顔をした。

俺はなんとも言えない気持ちになり、父親に一言告げて護衛詰所から立ち去った。


―――――――――――――――――――――――――――――


自室に戻り、この世界の銃器を想像してみる。

マークやアイリス、ハンスに聞いた限りではこの世界に「火薬」で弾を撃ち出す「銃器」は存在しないそうだ。

その代わり、魔法を数種類組み合わせ、発動体を介して弾丸を発射する大砲もどきはあるということだ。

これは火薬の様な物は一切使わず、魔力を魔石と併用して実現しているとのこと。

詳しい原理は上位貴族が秘匿しているので分からないらしい。


うーん、それなら俺が作っても問題無いな。

天才的発想で思いついたことにすれば良い。

実際には俺は凡人なんだが、前世の物理現象と機械工学と機械メンテナンスの知識はそこそこある。

銃器についても火縄銃からレールガンまで原理と構造はだいたい分かる。

電気、電子回路設計も出来るがこの世界では無用の長物だな。

ならばオールメカ+魔法で考えてみるか。


俺は紙を取り出し、ペンで現状を箇条書きにする。

・金属加工は中世ヨーロッパと似たり寄ったりだ。

・板金鎧はあるので、鉄を薄く延ばして曲げる技法はある。

・鉄の接合もリベットがあるので問題無い。

・溶接はひょっとしたら魔法のライトニング辺りを上手く使えば何とかなるかもしれない。

 ごく短距離に強力なアーク放電をさせ、溶接箇所をウィンドエバキュレーターで真空にすればTIGもどき溶接が出来そうだ。

 高温に強い電極に使える材質も見つける必要があるな。アーク放電で溶けない電極を使わないと強烈に消耗するし。

・バレットM95用に作ってもらったサプレッサーの様に、組み立てた後でバインド系のタイトンで締めれば高い内圧に耐えるな。

・ネジの概念は時計があるので一応あると思う。火縄銃の尾栓はネジだったと思うので、作れないことはないだろ。

・鉄剣も鍛造でちゃんと焼き入れがしてあるし、ある程度のしなりもあるので曲げてもすぐには折れないそうだ。

 これを進めればスプリングも作れるな。


なんだ、機械的な基本要素はちゃんとあるじゃん。

鍛造ができるんなら火縄銃くらいならすぐに出来そうだな。

この世界で硝石と硫黄を見つけるのも手だが、せっかく魔法があるのでスマートに行きたい。

そこでハンスに聞いたことがあるのを思い出した。

ある成分を持つ魔石は粉末状にして特定の魔方陣を接触させると発火するらしい。

発火も瞬時に燃え尽きる感じで、照明などには使えないとか。

それって丸っきり黒色火薬の特性だよな。

粉を圧縮して点火すれば爆発しそうだ。

ならば火縄銃ならぬ魔石銃は簡単に作れるな。

よし、まずこれから手を付けるか。


俺はすぐにハンスのところに行き、質問をする。


「以前に発火する魔石って教えて貰ったけど、それって持ってる?」


「少しだけならありますよ。結晶のままなのですり潰さないと発火には使えませんが。」


「それを少し分けて貰えないかな。ついでにすり潰しの道具も借りられたらうれしい。」


「すり潰すのは少々力とコツがいりますので私がしますよ。魔法で補助すればすぐですし。」


「それ、スプーンに3杯くらいでいいからやって欲しい。どれくらいで出来る?」


「30分もあれば出来ますね。すり潰す過程もご覧に入れますので少しお待ちください。」


ハンスはそう言うと壁面一杯の引き出しの中から黒い石を数個取りだした。

鉄板の様な台の上に布切れを置き、それに軽く包んでハンマーで叩きだす。

ある程度砕けるとそれをすり鉢の様な入れ物に入れた。


「擦ったら発火しないの?」


「決まった魔方陣を接触させない限り発火はしませんよ。」


ハンスはそう言うと力を込めてゴリゴリすり潰しだした。

前世の火薬は摩擦で静電気が起きると発火したのでヒヤヒヤする。

ある程度潰したところで今度は陶器の様な白い鉢を持ちだした。

前世でいうところの乳鉢だな。

これに入れて更に細かくすり潰す。

息を吹きかけると粉が舞うくらいになって完成と言われた。


「では試してみますね。」


ハンスはそう言って粉末を少量鉄板の台の上に置いた。

大きな紙の端に小型の魔方陣を描き、それを軽く丸めて筒状にし、手を伸ばして恐る恐る粉末に触れた。

魔方陣の図形が粉末に触れた瞬間、シュッという音と共に眩しい発火をしてすぐに消えた。

やっぱり黒色火薬と同じだ。

爆竹をバラすと出てくるので子供の頃によく遊んだな。


「ちょっと試したいことがあるんだけどいいかな?」


俺はそう言い、紙を丸めて内径3mmくらいの細い管を作ってもらい、長さ2cmくらいに切る。

片側を塞ぎ、空いている方からすり潰した粉を入れて細い棒で突いて圧縮する。

ある程度圧縮できたらそっと鉄板の台の上に置き、筒の中から導火線として粉を手前に細く延ばして垂らす。

先ほどの魔方陣を描いた紙筒を手に取り、部屋にあった間仕切りを移動して鉄板の前に置く。

ハンスと間仕切りの後ろに隠れ、腕を伸ばしてそっと導火線の末端に魔方陣を振れる。


シュッと音がしたと思うと次の瞬間、パンッという破裂音がした。

ハンスは驚いて間仕切りから顔を出し、鉄板上に細かい紙片が舞っているのを見て声を上げた。

要は爆竹と同じ物だな。

火薬の燃えた匂いはしないが。


「坊ちゃん!危なかったですね。破裂するなんで思ってもみませんでした。」


「いや、それ想定どおりなんだ。むしろ破裂してくれないとどうしようかと思ったくらいだ。」


「それはどういうことでしょうか。」


まず、先ほど破裂したのは発火魔石粉を圧縮すると火の回りが格段に速くなり、粉状のまま点火するのに比べて延焼時間が一瞬で終わるので破裂する様に見えると説明した。

黒色火薬とはそこら辺の原理は違うかもしれない。


俺は紙に原始的な先込めの大砲の断面図の絵を描いた。

片方が塞がった分厚い筒が横向きに置かれ、もう片方の開いた方が少し上を向いている。

塞がった方の側面にごく小さい穴を開ける。

塞がった方の中に正方形に見えるくらいの塗りつぶした箇所を作る。

その横の開いた方に丸い弾丸に見える印を描く。


「これ、王都の魔法部隊が使っている魔道砲に見えない?」


「確かに。ただ、こんな簡単な構造でまともに使えるのでしょうか。」


「そう簡単ではないよ。ある程度試行錯誤しないと実用にならないと思う。だけど技術的にはそれほど高度なものではないので、試してみる価値はあるよね。」


俺は図の細い穴の上に魔方陣っぽい小さな丸を描き、火炎が穴を伝って筒の内部の塗りつぶした魔石粉に伝わり、先ほどの様に破裂した魔石粉の圧力が丸い弾丸を筒に沿って押し出すまでをイラストで追記しながら説明した。


「さっきの粉を包んだ紙筒が粉々になっていたでしょ。あれが破裂した証拠だよ。」


「しかしぼっちゃん。こんな大量の発火魔石粉が一気に破裂するとあの紙筒みたいにこれも吹き飛びませんか?」


「そうだね。何も考えずに余裕無しで作ると確実に吹っ飛ぶ。そこは少しづつ魔石粉を増やしてみたり、筒の厚さを変えてみたり、筒の材質や作り方を変えてみないと何とも言えないけど、王都の上位貴族が独占して使っているというから実用にはなってるんだよ。それならこちらだって試行錯誤すれば必ず出来るはずだ。」


俺が力強く言うと、ハンスも頷いた。


「それは昨日のブラックタイガー討伐に関連してますよね?先ほど死体をちょっと見ましたが、頭が吹き飛んでいます。領主様とマーク隊長との話を漏れ聞くに、撃ち出した場所はかなり離れていてアースバレットでは届かない距離と言ってましたし。」


俺は今までハンスには内緒にしていたが、手伝って貰う都合上経緯を話すことにした。


「これ、今極秘事項なんだけど、ハンスに協力してもらいたいから話すね。」


俺は自分でステータスを呼び出すことが出来るのを打ち明け、その中のスキルで護衛部隊が使っている魔道銃というのを召喚することが出来ると言う。

試しに9mm実包を100発召喚して見せた。

紙箱が2つ出現し、蓋を取ると50個の9mm弾が並んでいる。


「これは護衛詰所横の射場で最近訓練している魔拳銃という手に持って撃つ武器の弾丸だよ。今、魔法組の3人に魔拳銃を渡して訓練しているところなんだ。隣からパンパン聞こえて来るのがそれだね。ウィンドエバキュレーターを併用しているからあれくらいの音で済んでいるんだ。無しだと耳鳴りがするくらいの音がするよ。」


俺は9mm弾を1個箱から出してハンスに手渡す。

ハンスはひっくり返しながら9mm弾を観察する。


「これ、すごく精巧に出来てますね。まるで装飾品の様です。」


「実はこの金色の筒の中に発火魔石粉と同じ働きをする物が入っていて、こちらの銅色の部分が的に向かって飛んでいくんだ。この平面になっている真ん中の小さな丸の中に発火の魔方陣が入っていると思ってくれたらいい。」


俺は9mm拳銃も召喚し、発射の手順を過去に父親にした様に一つづつ説明した。

実際に撃つ訳にはいかないので空撃ちと装填排莢の動きだけだ。

両方で魔力270なので今の俺には低コストだな。

出したこれは俺のスペアにしよう。


「こんな小さな鉄の道具でそんなことが出来るんですね!これはどこから来たのでしょう?」


「私もよく分からないんだよね。頭の中にこれに関する知識が既にあって、召喚した物をすぐに扱えるんだ。どこから来たかは私も分からないのでそれ以上は聞かないでね。」


俺は無駄に詮索されるのを防ぐ意味でも知らないで通した。

そして、昨日ブラックタイガーを討伐した武器は9mm拳銃より10倍くらい大きく、威力も30倍くらいあると言う。

実際、9mmと12.7mmでは銃口エネルギーはそれくらい差があるしね。

これは今のところ父親とマーク、魔法組の3人に限定した秘匿情報なのでこれ以上は話せないと言う。

ハンスは面倒ごとには関わりたくないのか、素早く頷いて了承した。


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