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28◇上位魔獣

28◇上位魔獣

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昨日帰宅してから父親に報告し、魔法組3人の魔強銃訓練は一応の成果は出たことを伝えた。

まず、俺だけではなくあと3人魔強銃を使える様になったことが一番大きい。

これで銃があるのに扱えなくて右往左往することは無いな。

但し、一通り扱えてある程度的に当たるようになったレベルなので、今後の継続的な射撃訓練は必要だ。

定期的な訓練内容は追々考えていこう。

俺の12.7mm弾の召喚ペースもあるしな。


再度12.7mm弾を毎日召喚し、訓練で殆ど空になった分を補充する。

12.7x99mmNATO実包20発:魔力340 ×4=1360

これを毎日繰り返し、4日後には4人各80発のストックが出来た。

とりあえず自室のガンロッカーに全部突っ込んでおく。


12.7mm弾のストックが出来たのでその日の午後に魔法組と魔強銃の訓練に出かけようとしていたところ、魔の森213番ゲートから早馬が到着した。

冒険者が管理官の書簡を持って父親に直接渡していた。

内容はついに上位魔獣が一匹魔力障壁を越えて農地に出て来たということだ。

父親は護衛全員に武器を持って練兵場に集合の命令をかける。

門衛の一人が指示書を持って練兵場に伝令に走った。

父親と俺は護衛の馬車に乗ってマークは御者をし、他の魔法組の3人を含む護衛は全員馬に乗って練兵場に行く。

バレットM95はケースに入れた4人分のフル装備を馬車に乗せて床に固定してある。

これだけでも100kg前後あるしな。

屋敷に残るのは門衛の5人だけになった。

上位魔獣が屋敷まで来ないことを願うばかりだ。


練兵場の兵舎の前には領兵が200人ほど整列していた。

他の領兵は領内の各地にある駐屯地に分散している。

父親が馬車から降り、一同が敬礼する。

父親も敬礼を返し、今回の緊急招集について説明する。


「先ほど魔の森213番ゲートから早馬の連絡があり、上位魔獣が一匹魔力障壁を越えて農地に出たとのことだ。我々はこれから上位魔獣の捜索と討伐に向かう。各人、3日間の糧食と武器を携行し、30分以内で準備せよ。」


父親がそう指示すると領兵は一礼し、兵舎に走り去った。

20分後、兵長が装備を調えて父親の前に来た。


「領主様。あと10分以内には準備は完了します。今回の行動予定をお聞かせください。」


兵長は俺と魔法組の3人、護衛の16人がひとかたまりで横に居るのを横目で見ながら尋ねた。

俺と魔法組の3人は腰に妙なベルトをしている。

俺はフードを被っているので小柄な護衛と思われているだろう。

父親には予め俺の存在を秘匿する様に頼んでいたので護衛と同じ服装を用意して貰っていた。

他の護衛達は大きなバッグを持ったり小さな折りたたみの机を持っている。


「うむ。今回は少し部隊の構成を変える。まず、偵察部隊は今までと同じ様に先行して散開し、目標を確認する。目標を発見したらすぐに護衛部隊長のマークに連絡せよ。ここに居る護衛部隊が先攻で上位魔獣に攻撃する。領兵はそれを補助し、迅速に護衛部隊が移動出来る様にしてくれ。但し、上位魔獣が迫って来た場合その限りではない。」


兵長は護衛部隊が命令系統の上位に来ることが少し不満だった様だが、領主に直接指示されれば逆らう訳にもいかない。

気を取り直して了解の敬礼をした。


「では魔の森213番ゲートに向けて発進。」


父親が号令をかけると偵察部隊が馬で先行し、213番ゲートに向かう道の周辺に散って行った。

護衛部隊と領兵は馬で進行し、俺と魔法組の3人と御者をするマークだけが馬車に乗っている。

装備も積んで移動する必要があるので馬車は欠かせない。

父親は練兵場の兵舎に残って指揮をするらしい。

まぁ大将が最前線に出ても意味ないもんな。


主要道路を213番ゲートに向かって1時間ほど進んだ時、212番ゲートに近い方に行った偵察部隊の一人が馬で帰って来る。


「発見しました。上位魔獣はブラックタイガー一匹!」


「護衛部隊先行する。案内せよ!」


マークが叫び、馬車の手綱を振るう。

馬車は激しく揺れて時々小石で跳ねるが、積んである装備はロープで固定してあるのでずれない。

バレットM95も馬車に乗る前にケースに入れて床に固定してあるので問題ない。

さすがに18kgもの鉄の棒を担いだまま馬車に乗ると辛い。

スコープをぶつけて照準が狂ったら元も子もないし。


1時間ほど走ると領兵が30人程度固まっていた。

その向こうに黒と灰色の縞模様の大きな虎が見える。

領兵の20mほど手前に馬車を停め、俺と魔法組3人は素早くバレットM95を装備する。

他の護衛に折りたたみテーブルを持って来て貰い、開いて4人の前に置く。

12.7m予備弾運搬係もそれぞれ一人づつ配置し、その後ろに付いた。

さすがに40発もの12.7mm弾は重い。

6g以上はあるな。

俺たち4人はそれぞれ5発装填済みのマガジンを2本づつポーチに入れて持っている。

とりあえず10発以上撃つことは無いと思いたい。


領兵は魔法兵を前面に出し、土魔法と雷魔法、火魔法を取り混ぜてブラックタイガーを牽制していた。

土魔法で壁を作って行く手を遮り、火魔法で牽制し、雷魔法で時折ダメージを与えている様だ。

アースバレットは殆ど効かないので無駄撃ちはしないらしい。

その周囲を長い槍を持った領兵が囲んでいる。

ブラックタイガーの足下には農民と思われる死体が数体転がっていた。


俺はマークに言って領兵に射線を空ける様に言い、魔法組3人に指示して発射準備をする。

4個並べた折りたたみテーブルの上に各々サプレッサー付きのバレットM95を置く。

椅子は無いので片膝立ちの姿勢だ。

2脚を開いて向きを合わせ、ボルトを引いて素早くマガジンを装着し、初弾を装填してブラックタイガーに狙いを付ける。

距離は150mほどに見える。

スコープの修正は無しと3人に伝える。

マークと護衛数人はそれを見て領兵を誘導し、ぎりぎりの射線を空けさせる。

まず、俺とスティーブが同時に発射する。

続けて僅かに遅れてデビットとルークが発射する。

1秒ほどずらずのは対象の動きで初弾を逃した場合の押さえだ。


俺の弾がブラックタイガーの左目に当たり、ルークの弾が首に当たった。

スティーブとデビットの弾は外れたらしい。

4人とも素早く再装填し、その後は各自速射をする。

マガジンを交換して各10発撃ち尽くした頃にはブラックタイガーは完全に沈黙していた。


護衛部隊はそうでもないが、領兵は静まりかえっていた。

俺たち4人は護衛から装填済みマガジンを2本づつ受け取り、空のマガジンを預ける。

マガジンを装着し、ボルトを操作して初弾を送り込む。

念のため、4人で1発づつ撃ち込んでおく。

その状態で30分経過した。

マークの助言によると、魔獣は一旦討伐したと思っても生命力が強いので暫くしたら逃走する場合があるとのことだ。

しかし、動かなくなって30分も経てばまず動くことはないと言う。


俺はマークに指示し、領兵の長槍を持っている者数人にブラックタイガーの確認をして貰った。

その結果、ブラックタイガーは頭蓋骨が完全に砕かれて頭部の上半分が消失しているとのことだった。

さすが.50BMG、半端ないな。


戸惑っている領兵にマークが説明する。

「これは護衛部隊の秘密兵器である。上位魔獣を討伐する為に新たに開発された強力な魔法銃である。現在、護衛部隊の特別訓練を受けた4人だけがこの魔法銃を扱える。ここで見たことは領兵の守秘義務に相当するので他言無用だ。もし漏らした場合は大きな罰則があるのでそのつもりで。」


マークはそう言い、ブラックタイガーの死体の着弾した頭部を馬車に積んでいた幌で覆う様に指示する。

現地に護衛3人と領兵10人を残し、残りは練兵場に引き上げる。


練兵場には兵長が送った先触れが到着しており、父親が兵舎の前で待っていた。

マークが馬車から降りて走り寄り、報告する。


「領主様、上位魔獣はブラックタイガーでした。先行した領兵が魔法で牽制し、ブラックタイガーは領民数人を殺したところで留まっていました。そこに護衛部隊が到着し、魔強銃を4人で一斉に放ってすぐにブラックタイガーは沈黙しました。」


「そんなに簡単に討伐出来たのか?」


父親は過去の経緯から信じられないという面持ちで尋ねる。


「詳しくは魔強銃を使った4人にお尋ねください。私ではどの様な状態だったのかよく分かりません。」


マークはそう言って俺たち4人の方を見る。

確かに撃った本人じゃないと手応えは分からないな。

初弾がうまく左目に当たり、それが最初に致命的なダメージを与えたのだと思う。

しかし前世の狩猟ではヒグマは頭に数発撃ち込まれても逃走したケースが多く伝わっている。

その場合は30口径のライフル弾がヒグマの頭蓋骨で弾かれており、威力が足らないとそうなるらしい。

今回は上位魔獣とは言え、7.62mmの30口径弾とは段違いの12.7mm口径だ。

弾頭重量で5倍、銃口エネルギーでも5倍程度ある。

弾速は同じくらいだが、この圧倒的な破壊力の前には上位魔獣も耐えられなかった様だ。


「父上、討伐した上位魔獣について少しお話が。」


俺はそう言い、父親と一緒に護衛の馬車に乗ってドアを閉めた。


「父上、討伐は成功しましたが、やはり威力が強すぎる様です。今回は初回ということもあり、4人並べて一斉に魔強銃を発射しました。ブラックタイガーの耐久性が分からなかったので各人10発を連射し、合計40発の大半が命中しています。その結果、ブラックタイガーの頭蓋骨の上半分が吹き飛び、頭から首にかけて多数の弾痕が空いています。今はブラックタイガーの頭部を幌で包んで隠し、現地に護衛3人と領兵10人を見張りとして残しています。マークが射撃を見た領兵に守秘義務を言って他言厳禁にしていますが、ブラックタイガーの弾痕を見られたらその威力にあらぬ噂が立ちます。早急にブラックタイガーの死体を屋敷の護衛部隊の所まで引き上げ、頭部の証拠隠滅をする必要があると思います。」


俺はそれだけ一気に言うと、緊張していたのかぐったりとしてしまった。


「マーティン、分かった。護衛部隊に荷車を調達させ、早急にブラックタイガーの死体の回収をする。よくやったな。前回の災厄のことを思ったら上出来だ。いや、上出来過ぎるな。これは上位に報告する時にかなり工夫する必要があるな。」


そう言って俺の頭を撫でた。

父親は馬車を降り、マークと兵長に指示をする。


「マーク、ブラックタイガーの死体はお前が指揮して護衛詰所の裏に移動しろ。その時に幌で全体を覆い、途中見られない様にしろ。」


「了解しました。直ちに実行します。」


マークはそう言い、馬に乗って護衛を8人ほど引き連れ、屋敷の裏に荷車を取りに行った。


「兵長、今回の討伐は経緯と結果の両方とも極秘とする。討伐を見た領兵は特に守秘義務が厳しく適用されることを徹底せよ。」


兵長は詳しい情報が知らされないことに少しだけ不満そうな表情をしたが敬礼して領兵を集合させ、指示をした。


今回の損耗は領兵及び護衛の死亡ゼロ、怪我も軽傷止まりで入院する様な者もいない。

農民が4名ブラックタイガーの襲撃を受けて死亡したが、これくらいなら領としては被害ゼロと言っても良いらしい。

まぁ農民の地位は低いもんな。


父親は引き続き、偵察部隊をローテーションを組んで24時間巡回する様に指示していた。

あの1匹だけではないかもしれんしな。

俺はそう思いながら馬車の椅子で寝てしまった。


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