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26◇サプレッサー

26◇サプレッサー

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ガーソン工房にバレットM95用のサプレッサーを発注して5日後、午前中にガーソンが注文した物を抱えて護衛詰所に持ってきた。

スティーブが俺を呼びに来る。

詰所に行くとマークとガーソンが話しをしていたが、俺が顔を出すとテーブルの上に置いた包みをガーソンが開いて説明する。


「マーティン様。言われた通りに一応出来たと思います。こちらをご確認ください。」


俺があちこち覗いていると、


「仕上げはあまり綺麗に出来ていませんが、ご指定いただけたらそのとおりに出来ますよ。」


「いや、仕上げは今はいい。実際の状況でテストしてみてから良かったら考えるよ。しかし、よくこんなに指示通りに作れたね。まるで機械で曲げたみたいだ。」


「はい、あっしら鍛冶屋には変形魔法が必須になってまして。永らく王都の親方の所で修行してやっと身に付けて一本立ちしました。鍛造の技術と組み合わせてそれを使えば感覚できっちり作れまさぁ。」


なるほど。

だから鍛冶屋でカンカン叩いてたんだ。

魔法だけで出来るんなら前世のベンディングマシンやフォーミングマシンみたいに静かな油圧プレスっぽい感じみたいだしな。


「そうなんだ。それなら今後もっと複雑な物でもまかせられるね。期待してるよ。」


俺はそう言い、バレットM95のバレルに被せられた直径15cmくらいの鉄の筒をバレルごと持ち上げた。

うん。

8kgくらいは追加されてるな。

板厚は2mmくらいに指定してある。

それを熱してハンマーで叩いて曲げて切ってついでに魔法で加工するのだ。

全部鉄製なんで、そりゃーそれくらいの重量にはなるか。

ちゃんと先頭にはマズルブレーキも付いている。

リベット止めも数打って頑丈にしてあるな。

チャンバー部から覗いてみると、遮るものなく向こうが見える。

手で軽く揺すったり叩いたりしてみてもがたつきも異音もしない。

うん。

形はこれでとりあえずは良いな。

表面処理をしていない鉄だから放っておくと錆びるが、試作だから気にしない。

後は実際に撃ってみてどれくらい消音されてるかだな。


「うん。形状は注文どおりだね。内部には仕切り板も入っている様だ。スティーブ、この追加した部分を魔法で補強出来るかな?」


スティーブは少し考えて、


「どういう方向の補強がよいでしょうか。」


「中で爆発すると思って貰って、この筒がそれで裂けたり膨らんだりするのを防止したいな。」


「それならバインドの魔法を桶のタガを嵌める様に巻き付けると効果的と思います。」


「それでしらたあっしが出来ますぜ。大きな樽を作る時なんか絞めるのに使いますし。」


「どういう魔法なの?」


「バインドの上位魔法でタイトンと言います。一度仕掛けると、効果は10年くらい続きます。」


「ぜひやって。別料金でいいから。」


俺がそう言うと、ガーソンはテーブルの上のサプレッサーを囲う様に両手で輪っかを作り、先端から1cm置きくらいに繰り返しタイトンの魔法を発動した。

少しづつオーバーラップさせてあるので、掛けた魔法の隙間から漏れることも無いらしい。

実際にこれで圧力に耐えられるかは試射してみないと分からないが。


「出来やした。これで元の鉄板だけの時より2倍くらいは強度が上がっているはずです。」


「うん。ありがとう。これで試してみるよ。あ、これの名前は「減音器」でお願い。」


俺はそう言い、ガーソンは費用を書いた紙に「減音器」と書き加え、マークに渡して帰って行った。


―――――――――――――――――――――――――――――


昼食後に父親にサプレッサーが届いたことを報告し、護衛詰所に行ってマークと魔法組の3人を前回と同じ装備で連れ出す。

馬車で10分ほど走って前回の河原に着いた。

的の小山ブロックは前回のままの形状で残っていた。

的を置く台が少し崩れていたので修正して的を2枚置く。

馬車に全員乗って移動し、的から20mくらい離れた所にテーブルを出してもらう。

その上に、馬車の中でケースから出したバレットM95を置く。

えらく重いな。

まずは至近距離でサプレッサーが吹っ飛ばないかどうかの確認だ。

マガジンに弾を5発詰め、装着する。

ボルトを引いで戻し、発射準備をする。

自分でウィンドエバキュレーターを発動し、左の的の中央を狙って発射した。

銃口から閃光が走るが、以前よりはかなり少ない。

発射音も俺が89式を使う時くらいの音量だ。

重量も増えたので反動も少なくなっている。

サプレッサー無しでは俺のウィンドエバキュレーターではかなり響き渡っていたのでこれなら実用になるな。

10発ほど至近距離で試射し、サプレッサーに異常が無いことを確認して装備を馬車に積む。


200mの発射地点まで馬車で行き、テーブルを出して装備を降ろして馬車を後退させる。

バレットM95はサプレッサーを付けたので元のケースには収まらなくなった。

仕方ないのでケースの銃口部分を切断し、木材でケース外装を延長してある。

そのせいもあって、中身が入った状態ではかなり重くなっている。

俺がパワーアシストを最大にかけて、やっとテーブルの上に持ち上げられるくらいだ。

たぶん30kg近くはあるだろう。


ケースを開け、サプレッサー付きバレットM95を持ち上げる。

全体で18kgくらいにはなっていそうだ。

パワーアシストかければ何とか持って走れるな。

発射の寸前まで護衛の誰かに持って貰ってもいいし。


「さて、前回と同じ的だけど、サプレッサーの影響はどれくらいあるかな。」


俺はつぶやいて装填したバレットM95を構え、右の的を狙う。

初弾を発射し、スコープを24倍にして着弾を確認する。

前回より20cmくらい右にずれていた。

そのままのスコープ設定で10発ほど撃つ。

直径30cmくらいにばらけたが、中心は右に20cmくらいずれたままだ。

前回はもっとまとまっていたので、サプレッサーの影響で少しばらけるみたいだ。

まぁ200mでこれくらいなら許容範囲だな。

スコープの水平を調整し、センターに集弾する様に設定した。


「うん、これなら十分に実用になるな。」


「マーティン様、その筒はどういう理屈で音が小さくなるのでしょう?」


さすがにスティーブは気になる様で聞いて来た。


「これは魔法を使わずに純粋に物の工夫だけで音を小さくするものだよ。発射時に大きな音がするのは銃口から弾が出た後に強烈な勢いで爆発の煙が出るからなんだ。ファイアボールを放出して的で発動した瞬間に大きな音がするのと似たようなものだよ。地面に深い穴を掘ってその中にファイアボールを入れると、そのまま撃つよりかなり音が小さく聞こえるだろう。ちょっと違うけど、それと似たような理屈と思ってくれたらいいかな。ここに煙が一気に広がらない様に徐々に勢いを殺していく筒を付けると、最終的にはかなり勢いが削がれて音が減るんだ。」


みんな首を捻って頭の上にハテナマークを付けている。

俺の説明もまずいが、まぁそんなものだろう。

物理現象を魔法の人に説明するとこうなるという見本だな。


「さて、サプレッサーが付いていることだし、一発だけウィンドエバキュレーター無しで撃ってみよう。皆後ろの馬車くらいまで下がって。」


俺はそのままトリガーを引いた。

素の9mm拳銃くらいの音が響き、川の対岸から小さく木霊した。

やはり12.7mmはやばい。

少し耳がキーンとする。

でも、これでウィンドエバキュレーターが使えない人でも何とか撃てるな。

サプレッサーさえあれば鼓膜も何とか持つだろう。


―――――――――――――――――――――――――――――


合計60発くらい撃ち、サプレッサーにもがたつきも緩みも出なかった。

ガーソン、いい仕事してますな。

俺は撤収して屋敷に戻り、父親の部屋に報告に行った。


「父上、音を小さくする筒の試し撃ちが終わりました。十分実用になります。」


俺はそう言って、紙に今回の結果を書き出した。

・魔強銃のそのままでは一人のウィンドエバキュレーターでは十分に消音出来ず、かなり周囲に響く。

・魔強銃に消音の筒を付けると、一人のウィンドエバキュレーターで十分な消音が出来、ファイアボールと紛れる。

・魔強銃に消音の筒を付けても、ウィンドエバキュレーター無しではかなり音が響く。

・魔強銃に消音の筒を付けると重量が2倍近く増すが、私でも何とか持ち歩ける程度ではある。


「上位魔獣の脅威はどれくらいでしょうか。」


「いまのところ結界魔道具の魔力防壁を超えて農地に出て来たという報告は無い。但し、213番以外のゲートからも上位魔獣の発見報告が来ている。いずれにせよ、領兵をある程度分けて配置する必要があるな。」


「そこまで差し迫っているのでしたらもう他領を気にすることも無いですね。前回の被害のことを考えたら早急に魔強銃をある程度の数量配備する必要があるかと。」


「うむ、やってくれるか。背に腹は代えられん。全責任は私が持つ。」


「はい、父上。早速召喚と配備、訓練計画を練ります。」


俺はえらいことになったと自室に戻り、試算を始めた。


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