25◇隠蔽工作
25◇隠蔽工作
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バレットM95を試射した日の夕食後、俺は父親の部屋に報告に行った。
「父上、魔強銃の試射及び照準器の調整を完了しました。まず、今回の試射で全弾的の後ろに作った小山の範囲内に当たり、逸れて他に当たる様なことはありませんでした。」
「うむ、ごくろう。それで命中率と威力はどうだったのだ?」
「今回撃った的がこれになります。」
俺はそう言って2個の的を見せる。
直径1mほどの的の中央部30cmくらいの範囲に12.7mmの大穴が20個くらい開いている。
もう一つの的は中央部30cmくらいが5.56mm弾で蜂の巣状になっていた。
的の周辺にも弾痕が散らばっているが、サイトイン途中の外れ弾だ。
書き写した地図を見せ、説明を始める。
「まず、河原に直線距離で射場の10倍相当の位置を決め、そこに的と発射地点を決めました。的の後ろには射場の横幅くらいの小山を作り、厚さも十分に余裕を取りました。」
「的までの距離はどうやって測ったのだ?」
「魔法組3人の歩幅測定で測りました。3人とも同じ距離を示したので正確だと思います。」
俺は双眼鏡のスケールの事は誤魔化した。
方位磁石のこともあるし、見ただけで距離測定出来るのもあまり広めたくない。
「うむ。試し撃ちの結果はどうだ。」
「はい、こちらの大きな穴が開いている方が今回召喚した魔強銃です。照準器を合わせると、あの距離で中央のこれくらいにまとまります。こちらの小さな穴が沢山開いている方は、魔長銃の照準器を合わせた時のまとまりです。」
「これはすごいな。あれくらいの距離離れると、魔法では決定的な打撃を与えることが出来ない。どうしても途中で散らばってしまうしな。」
俺は魔法組から魔法での攻撃方法は色々聞いていた。
土系魔法が主な攻撃手段だが、いかんせん遠くを狙ってもまともに当たらなく、威力も足りない。
・アースバレット:魔法組が3人がかりで飛ばすと約1kgの土弾が100m程度飛び、30m以内のレッサーべアーに直撃すれば倒せる。
・ウォーターボルト:魔法組3人がかりで20m離れたグレイウルフなら倒せる。
・ファイアボール:魔法組3人がかりで10m離れたグレイウルフを重傷に出来る。
・ライトニングショット:魔法組3人がかりで30m以内のレッサーベアーを気絶させられる。
魔法組3人がかりでもこれくらいなので、一人で発動させるとかなり威力が落ちる。
王家直属の上位魔法兵ならもっと違う系統の威力の強い遠距離攻撃魔法を出せるらしいが、侯爵より下の貴族には方法が公開されていない。
まぁ反逆や暗殺を考えたら疑り深くなるのも仕方がないということだ。
ただ、今回俺が出した89式とバレットM95はこの力関係を完全にひっくり返すことが出来るチート武器だ。
魔の森との境界の領地ということを理由にして、何とか誤魔化し切らないとウチの存続が危ない。
それについて父親に聞いてみた。
「父上、私が今までに出した銃器は魔拳銃、魔長銃、魔強銃の3種類があります。魔拳銃は威力が小さいので実戦で使ってもそれほど問題にされることはないでしょうが、魔長銃と魔強銃は上位貴族や王族に知られると非常に面倒になると思われます。」
「そうだな。それは私も考えている。魔拳銃は護衛部隊直属の秘匿兵器として扱い、他言無用は徹底してある。訓練も護衛射場で十分出来るしな。確かにこの程度の威力なら熟練者のアースバレットと大差無いとも言えるな。しかしそれ以上となると一旦実戦で使ってしまうと隠すことが難しくなる。下手をするとお前は捕らわれて一生武器を召喚する奴隷とされるやもしれんな。」
これはもっと効果的な隠蔽方法を考えないとならないな。
89式はまだいいとして、バレットM95は銃口に付ける物理的なサプレッサーを作ろう。
弾頭が音速を超える衝撃音は仕方がないが、銃口からのガス膨張の破裂音は大きなサプレッサーを付けることでかなり小さくなる。
前世の動画サイトでみたことがあるが、銃口に70cmくらいの長さで直径10cmくらいの筒が付いていた。
あるなしで撃ち比べていたが、確かにそこそこ発射音は小さくなる。
これなら俺一人でウィンドエバキュレーターを出した程度で十分消音されるな。
サプレッサーの原理もだいたい分かるので、早急に図面を書いて作れるところを探そう。
「父上、魔長銃までなら私や魔法組が出すウィンドエバキュレーターで十分発射音は低減できます。熟練の魔法使いが放つファイアボールの方がよっぽど大きな破裂音がしますので、魔長銃を使う時は魔法攻撃者と組み合わせれば誤魔化せるかと。ただ、魔強銃については発射の音の大きさがかなり大きいですので、一人のウィンドエバキュレーターでは誤魔化し切れません。なので、魔強銃に付ける音を小さくする筒を作りたいと思います。金属加工の得意な工房をご存じではないでしょうか。」
「うむ。それならマークに言って、護衛部隊の武器を調達している工房を紹介させよう。領都下にあるので魔法組も連れて尋ねてみるのも良いかもしれんな。費用はこちらに付けてくれ。」
今日はここまで話し、あとは上位魔獣の動向次第ということになった。
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次の日、俺はマークと魔法組のスティーブを伴って城下町の護衛部隊御用達の鍛冶工房に向かった。
バレットM95のバレルブロックを外して布に包み、俺の背中に背負っている。
屋敷から5分くらい歩いたところの裏通りに鍛冶工房の看板があった。
マークが「ガーソン工房」のドアを開け、中に声をかける。
中はカウンターの様な細いテーブルがあり、奥ではカンカンという金属加工の音が響いていた。
「おやっさん、いるかな?」
暫く鉄を打つ音が響いていたが、フッと静かになると髭面のがっちりした男がハンマー片手に現れた。
「おう、マークじゃねいか。どうした、こないだ打った剣に何か不都合でも出たか?」
「いや、今日はそうじゃない。こちらのマーティン様が金属加工の伝手が欲しいと言われてまずこちらに来たのだ。」
「ランバート家の次男のマーティンです。ちょっと鉄で作りたいものがあって相談に来ました。」
「これは領主様のお子様ですか。失礼しました、ガーソンと申します。ここの主をやっております。私の名前は呼び捨てにしていただけますでしょうか。」
「わかりました、ガーソン。ではこの図面を見て欲しいんだけど。」
俺はそう言ってカウンターに前日に書いたサプレッサーの図面を広げる。
背中に背負っていたバレットM95のバレルブロックを降ろして布を取り、鉄のバレルを直接カウンターに置く。
マズルブレーキは召喚した工具で外してある。
「この鉄の筒は魔道具の一種で、銅の塊を打ち出す箇所になるんだ。ただ、撃ち出すときにかなり大きな破裂音がして撃った本人の耳が難聴になるくらいなんだよ。それを何とかしたくて、撃ち出す口の所に鉄の筒を付けて音を抑えたいんだ。ちょっと複雑な構造になるんだけど、こちらで作ることは出来るかな?」
俺はそう言い、バレットM95の銃口に筒を延長する様に手で示した。
長さと太さも手を広げて示す。
内部の構造はとりあえず最初は単純に平らな鉄板の仕切り板をずらっと並べる構造にした。
本来は仕切り板はラッパ状にしたいところだが、そこまでの加工技術はあるまい。
バレルの延長には直径14mmくらいになる様に中心に穴を開ける。
モナカ合わせにして、端部を断面をコの字の角材で挟んでリベット止めにする様にしている。
取り付けは、バレットM95の大きなマズルブレーキを外し、サプレッサーはバレルにすっぽり被せて中心を出す様にする。
バレルに被せるスリーブ部が余分に50cmくらい伸びる形になるな。
先端には外したマズルブレーキを付け、上下に固定金具を付けてリベット止めする。
一通り説明するとガーソンは腕組みをして唸った。
「うーん、言われていることは分かりますが、それなりに手間がかかりますね。そうですね、 発注いただけてから5日間といったところでしょうか。」
「うん。それでお願い。費用は後で父上に請求して。これは置いていくから、何か分からないことがあったらマークを通して言って。」
俺はそう言うと、鍛冶屋を後にした。




