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2◇転生

2◇転生

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はっと気がつくと俺はベッドに寝ていた。

天井の模様には見覚えが無い。


「確か俺はトラックに轢かれて死んだよな?」

そう思い出してベッドから起き上がり、周囲を見渡すとやたらと豪華で広い部屋だった。

ふと、自分の手のひらを見てみるとどう見ても32歳の手ではない。

小学生の甥の手の平がこれくらいだったかなと思い出す。


部屋を見渡すと大きな姿見があるのでベッドから出てそちらに歩くとやたらと体が軽い。

そして姿見に自分を映した時、

「えー! 外人の金髪小学生じゃん! トラック転生かよ!」

と大声で叫んでしまった。


その声を聞きつけたからか、ドアが開いて赤髪でメイドの様な格好をした高校生くらいの年齢の女性が入って来た。

「坊ちゃん! 気がつかれましたか!」


メイドらしき女性はそう言ったかと思うと叫びながらドアの外に走って行った。

「奥様ぁぁ! 坊ちゃんが気がつかれました!」


しばらくしてメイドの女性と共にドレスを着たの30歳くらいに見える外人の金髪女性が入って来た。

「マーティン! 気がついたのね!」

その外人の金髪女性は俺をガシっと抱きしめると、ぐりぐりと頬ずりしてきた。


「えっ、えっ、えー」

俺は気恥ずかしさでろくに声も出せずにうろたえているだけだった。


「アンナから馬車に轢かれて昏睡したと聞いた時はこの世の終わりかと思ったのよ。 無事に回復して良かった。」

どうやらこの金髪女性は俺の母親の様である。

しかもあちらでトラックに轢かれた挙げ句にこちらでも馬車に轢かれて異世界の現世に戻って来るとは。

ややこしいな。


「えーっと、お母様?」


「マーティン、なに他人行儀な呼び方をしているの? いつものようにママと呼んで!」


おいおい、小学生の見た目にはなっている様だが、さすがに精神は32歳だ。

いくらこの体の母親だと言っても、「ママ」とは言いにくい。


「ママ、いえこれからはお母様と呼びたいと思います。」


俺はとりあえず自分の精神を保つ為にも母親をママ呼ばわりはしたくない。

そこで話題を変えるためと共に今の自分の状況を知りたいと思い、母親に質問する。。


「それで、私は馬車に轢かれた後はどうなったのでしょう?」


今の俺自身のマーティンとしての情報は何も記憶に無いので、教えてもらわないと色々不都合だ。

まず直近の状況の確認からだ。


「マーティン、あなたは王都学園に入学するために3日前にこの屋敷を出発したの。そこで迎えの馬車の暴走に巻き込まれて轢かれ、大けがをしていたのよ。 ひどいけがだったけど、我が家の魔術治療師は腕が良くてすぐに元通りにしてくれたのだけど、なぜか意識がもどらなくてずっと寝ていたの。 覚えてないの?」


うーん、魔術だと?

俺はその単語にえらく興味を覚えた。

そう、転生につきものの、魔法を使える「異世界」だ。

とにもかくにも「魔術」の確認をしたい。


「魔術治療師が私を治してくれたと言われましたよね。 それはどういうことをする人でしょう。」


「マーティン、そんなことも忘れているの? 魔術治療師のハンスよ。 仲良かったじゃない。」


「お母様、私がマーティンという名前なのは分かりましたが、どうやらその事故の前の事を思い出せない様なのです。 できれば今の私の立場と、家族のことを教えていただけませんでしょうか。」

そう俺が言うと、母親が立ちくらみでもしたかの様に後ろに倒れかかり、それをメイドのアンナ?が支えていた。

しばらくそうして支え合っていたが、やがて気を取り直した様で母親は俺に尋ねてきた。


「マーティン、どれくらいのことを覚えているの?」


「何も。 私の名前も呼んでもらえるまでは分かりませんでしたし、自分の置かれた立場も分かりません。出来れば、幼児に言い聞かせる様に全部教えてもらえませんでしょうか。」


その後、母親は再び倒れそうになり、メイドのアンナが支えて椅子に座らせた。

それからの母親から語られる内容はちょっと驚くものであった。


当家は伯爵家で、名字はランバートと言う。

父親の名前はジョージ・ランバート、母親の名前はウェンディ・ランバート。

マーティンはランバート家の次男で、兄と妹が居る。

マーティンは12歳、兄のマイケルは14歳、妹のシンディーは10歳となる。

当家の位置はカルダナイト王国の南東部の海岸を含む領土になる。

ランバート領は東を魔の森に、西を隣のザルツ子爵領に、南を海に、北をローバー伯爵領に接し、さらにその北に王都直轄領がある。

魔の森の先は隣国であるサタナイト王国の領地となる。


当家の主な収入は、農業と漁業と林業、魔物狩りでの収益、魔の森の鉱物資源の採掘等の税で賄っている。

王都からの距離は馬車で一週間。

王都学園は王国内の貴族なら12歳になったら次の1月の終わりに入学する義務がある。

王都内の学生は通学が可能だが、馬車で数時間以上かかる場合は学生寮に入ることになる。

兄のマイケルは14歳なので2年前に入学して学生寮に入っている。

兄は1月の長期休み帰省は予定どおり終え、3週間前に既に王都に向かっていた。

マーティンは3日前にその王都学園に入学をする為に出発するところで事故に遭った。


ということを俺の質問を挟みながら母親のウェンディが語ってくれた。

最後にそこに居るメイドのアンナはあなたの専属よとも聞いた

今度はこちらの番だ。


「では、私は王都学園に行かねばならないのでしょうが、いかんせん記憶がありません。このまま行っても何も分からず無駄になるどころか、ランバート家にも恥をかかせます。」


「そうねぇ。 王都学園には急病ということにして、療養のため一年間入学を延期させてもらいましょうね。」


「そうしていただくと私も安心です。 必ずやこの一年間で入学に問題無い様に知識を身につけたいと思います。」


母親は大きくため息をつき、執事を呼んでくる様にとアンナに言った。

アンナが退出し、暫くすると執事と思しき初老の男とやって来た。


「セバスチャン、マーティンが大変なの。 あの事故のせいで記憶が無くなったらしいの。 それで王都学園には入学を一年延期することの連絡と、その間に記憶の回復をするのに役立つ家庭教師の手配をお願い。」


「奥様、承知いたしました。 領都の管理部署から指導の経験のある者を寄越しましょう。」


その後、父親と妹も俺の部屋に呼ばれたが、俺が気がついたことよりも記憶の無いことに驚かれた。

父親はやたらと心配していたが、俺の受け答えが常識的なことからひとまずは安心していた。

妹は何故か父親の後ろに隠れて何も言わなかった。

たぶん知らない人に見えるんだろうな。

兄は王都学園に行っているので会うのは次の盆暮れだろな。

ん?こっちで盆暮れの帰省ってあるのか?

と思って母親に聞くと、王都学園には1月と7月にそれぞれ一ヵ月の長期休暇があり、兄のマイケルは毎回帰省しているとのことだった。



そうして、俺の人生が異世界で再スタートしたのだった。


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