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19◇磁気コンパス

19◇磁気コンパス

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数日後、アイリスから返事の手紙があった。


・磁気に関する簡単な説明が知りたい。

→鉄鉱石でたまに産出する物で、お互いに引き合ったり反発しあったりする性質のことです。


・磁気コンパスの存在を知りたい。

→あります。


・既に実用になっているのか?

→実用になっています。


・製品があるならその資料はあるか?

→製造元の宣伝用の冊子があります。


・使うとどの様な利点があるのか?

→どの地域に行っても、東西南北がはっきり分かります。


・どの様な動作原理なのか?

→不明です。


・価格はどれくらいか?

→門衛の月給の半年分程度です。


・入手性はどうか?

→生産が追いつかないらしく入手困難です。


・地図との連携はどうなっているか?

→地図に東西南北を正確に書き込んであればそのまま適用可能です。


・魔道コンパスとの関連性はどうなっているか?

→原理が全く異なるので関連性は無しです。


うーん、やっぱり地磁気を利用した方位磁石だな。

これなら俺でも作れるか。

この世界に特許とか専売権とかあるのかな?

これもアイリスに聞いてみよう。


俺は紙を取り出し、アイリスへの返事を書き始めた。

・調査ありがとう。

・製造元の宣伝用冊子を入手したい。

・磁気コンパスの動作原理はこちらでも理解している。

・これは非常に便利な物なのでぜひ普及させたい。

・磁気針の製造方法は分かるので、試作を作って市場の反応を見たい。

・磁気を帯びた鉄を入手したい。

・磁気コンパスを製造販売するに当たって、何か保護権や専売権みたいなものはあるか?


うん。ちょっと利権問題が絡んで来そうだな。

王国法での権利なら仕方がないが、貴族が力で押さえているのならそれを上回る権力で押さえれば良いな。

ウチは伯爵家なので子爵と男爵には強気に出れられる。

アイリスに対する返事の手紙を書き、アンナに定期便に入れる様に頼む。



さて、とりあえず原理検証をしてみよう。

一番一般的なのは鉄の縫い針を磁化させて、葉っぱに縫い付けて水に浮かべることだな。

ところで磁気のある製品ってあったっけ?

俺はアイリスに追加質問すると同時にセバスチャンとハンスにも聞いてみることにした。


「セバスチャン、磁石て知ってる?」


「ジシャクですか。それはどういう物でしょう?」


「鉄の板や釘に近づけると、引き合う様な動きをする物なんだ。」


「鉄鉱石でたまに産出するものがそうではないでしょうか。それを使った子供のおもちゃで、二つの板がくっ付いたり離れたりする様な物はあります。」


「それだ!手に入るかな?」


「承知しました。明日領都の雑貨商を呼びます。」


「できるだけそれに近い物も持って来て貰えるかな。それと、磁気コンパスについても入手性と価格について聞きたい。」


「はい、その様に伝えます。」


たぶんそれは天然の磁鉄鉱の磁石だろう。

弱い磁化された物なら数もそこそこありそうだ。

磁鉄鉱が落雷などの瞬間的な大電流で磁化された物だが、この世界では実用には使われていないのかな。

それくらいの磁力ではいくら鉄針を擦っても方位磁石としてはまともに使えないだろう。

葉っぱに刺して水に浮かべてしばらく待つと、じわっと鉄針が回るくらいだろうし。


では、どうやって冒険者が携帯できる磁気コンパスは作られたのか?

極めて強力な磁気を持つ磁鉄鉱でも見つかったのかな?


ひょっとして、電磁石を作れる技術がこの世界にあるのか?

ならばどうやって発電する?

ボルタ式の電池程度では電流はしれてるし。

謎だ。


電気、電気、そうだ!

ライトニング系の魔法があるじゃないか!

あれを特定方向に進化させ、大容量コンデンサの様な媒体を使って電力を溜めるのだ。

一人のライトニングの電力で足りなければ複数人で溜めればよいし。

絶縁被覆を塗った銅線を作り、それを短剣を作る途中の鉄棒の周囲に多量に巻き付け、溜めた電力を一気に流す。

これで鉄棒はある程度磁化するだろう。


さて、それではどうやって大容量コンデンサを作る?

まずある程度の太さの銅線を叩いてごく薄く伸ばして長い帯状の銅箔にする。

それより少し幅の広い紙の帯を作って長く繋げる。

2枚の銅箔帯と2枚の紙帯を互い違いに重ね、細い木の棒にきつく巻き付けていく。

ある程度の太さまで巻いたら2枚の銅箔を違う位置で横に引き出して電極にし、巻いた箇所がほどけない様にきつく縛る。

これを多量に作り、直並列接続で全体の耐電圧と静電容量をアップさせる。


うーん、この程度の細工ではあまり電荷は貯まらず、すぐに自己放電しそうだ。

紙に油を染みこませてオイルコンデンサ、紙の代わりに雲母を使ってマイカコンデンサというのもあるな。

いずれにしても魔法で作れる電力に依存するから、ごく小さな鉄棒しか磁化出来ないかもしれないが。

それなら、細い鉄針が入る程度のコイルにして、直接磁化すればいいかもしれないな。


―――――――――――――――――――――――――――――


午後からハンスにも磁石について聞きに行くが、その時にライトニング系の魔法についても聞いてみよう。

俺はアイリスが送ってきた手紙を持ってハンスの所に行った。


「ハンス、今いいかな。」


「はい、いいですよ。何かご用でしょうか。」


ハンスは丁度護衛の訓練傷の治療が終わったところみたいで、治療道具を片付けながら返事をした。


「まず、磁気コンパスについてアイリスから返事が来たよ。一緒に見よう。」


俺はそう言い、アイリスからの返事の手紙を見せる。

・磁気コンパスは存在する。

・既に実用になっている。

・製造元の宣伝用の冊子がある。

・どの地域に行っても、東西南北が正確に分かる。

・動作原理は不明。

・価格は門衛の月給半年分程度。

・生産量が少ない為入手困難。

・方位が記入された地図とそのまま対比可能。

・魔道コンパスとは動作原理は全く異なる。


「磁気コンパスは東西南北のある方向を針が示す様に動作するみたいだね。」


「魔道コンパスと結界魔道具との関係とは全く違う動作原理ということでしょうか?」


「うーん、何かに引かれるという点では同じかもしれないが、磁気コンパスは結界魔道部の様な明確な相手が無いんだよね。」


「それでは磁気コンパスの針は何に引かれているのでしょう?」


「私も今のところはっきりとは分からないが、この大地の表面にはある方向に磁気の流れがあるみたい。磁気コンパスの針はその流れに従って、沿う様な方向に振れるんだと思う。」


俺は惑星規模の地磁気のことを言う訳にもいかないので、地表を一定の方向に沿って流れる力と表現した。


「ところで、磁気を帯びた鉄っていうのは売っているの?」


「さぁ、聞いたことはないですね。魔法関係では使いませんので。」


「なるほど。話は変わるけど、ライトニング系の魔法でライトニングフラッシュってあるでしょ。あの魔法は瞬間的に両手の間で放電するけど、放電時間を長くすることは出来ないのかな?」


「どれくらいの長さです?」


「とりあえず1秒。出来れば10秒。」


「あの魔法は両手の間に魔力を放出して溜め込み、一気に雷に変換して放電させるので単位時間当たりの魔力使用可能量が少なくても使えるのです。それを1秒間放電を続けるというのはかなり難しいかと思います。」


やっぱりなー。

人体コンデンサだったよ。

でもあれだけの長さを放電させなくても、両手の間隔をもっともっと狭くしてやれば放電時間を延ばせるんじゃないかな。

今は20cmくらいなのを5mmくらいまで狭めるとか。

20cm間を放電させるにはだいたい600kVくらい要る。

約60万ボルトだな。

これを5mm相当にすれば15kVで1万5千ボルトだ。

電圧を1/40に調整出来るなら放電の持続時間を40倍しても総電力量は同じだ。

もっと狭めて0.5mm相当にすれば1500Vで400倍の持続時間になる。

これなら自作の大容量コンデンサへの入力も余裕が出てくる。

あまりにも高電圧だと絶縁処理が大変だしな。

そして、実際にコンデンサへの充電に使うには放電させるわけではないので、もっと電圧を落としてもよい。

たとえば100Vくらいまで。


「なるほど。ところで、今はこれくらいの両手の間隔で放電してるんだけど、かなり勢いを付ける様に雷に変換してるでしょ。これを間隔をごく狭くし、勢いをだいぶ下げて短くても放電する様にすると、放電時間は伸びないかな?」


俺は両手の人差し指の間隔を20cmくらいから5mmくらいまで変化させながらハンスに聞いた。

ハンスは両腕を組んでしばらく考えていたが、


「そういう考え方もあるんですね。距離を開けて威力を増す方向にしか考えたことはありませんでした。たぶんおっしゃる通りになると思いますよ。」


「ちょっとやってみるね。」


俺はそう言って、まず普通のライトニングフラッシュを1発出してみる。

目は瞑っていないと自分で自分にダメージを喰らう。

当然俺もハンスも目を瞑る。

瞼越しにもまばゆい閃光が見える。


今度は目を開けたまま人差し指同士の間隔を5mmくらいまで接近させ、電圧をかなり低くする様なイメージでライトニングフラッシュを使う。

最初は放電しなかったが、だんだん電圧を上げていくイメージにするとチリチリと音がし始め、ついにはしっかりと放電した。

そして、その時の放電の持続時間は1秒程度は続いた。


「坊ちゃん、器用ですね。そんなことが出来るなんて。」


「うん。ここまで上手くいくとは思わなかったよ。これで目処は付いたかな。」


「ところで、それを何に使うんです?」


「あ、それを言ってなかったね。実は私には今の記憶が無くなった代わりに、別の世界の物と思える記憶があるんだ。そんなにはっきりとした記憶ではないんだけど、色々試すのに役に立っているんだよ。」


俺は少しごまかす。

実は非常にはっきりしてます記憶。

特に電気系機械系に関しては。


「ライトニングフラッシュで出す雷は実は電気というエネルギーなんだ。これは魔力から電気に変換して出しているので分かるとおもうけど、一回出すのにだいたい魔力を50くらい使うよね。これは変換された電気も魔力50相当の力を持っていると考えられるんだ。そうすると、放電距離を短くして雷の大きさも小さくすると、その分長い時間放電出来るでしょう?」


「うーん、ちょっと分かりません。なんでその様なことが出来るのか。今、私も距離を小さくしてやってみましたが、確かに雷の大きさは小さくなりますが、放電時間はそんなに変わりませんね。」


ハンスのを見ると、同じ5mmくらいの間隔でも放電のアークが太い。

思ったよりも電圧が下がっていないんだろう。

そして、そこに大電流が流れているんだろうとは思う。

確かにそっちでもいいんだけど、コンデンサに充電するには向いていない。

やはりイメージの差なんだよなー。


「私の出した小さい雷の場合、そのエネルギーを特殊な構造をした容器に溜めることができるんだ。そして、それを使って強力な磁気を発生させて磁気コンパスを自分で作ろうという訳なんだよ。」


「それはすごいですね。成功すれば今話題で入手困難な磁気コンパスを売って大儲けですね。」


ハンスはちょっと乗り気になった様だ。

磁気コンパスについて少し調べていた様で、高価なので自分で作って売れば大儲けと思っているのかな。


俺はもうちょっと詳しい原理を紙に書いてハンスに説明する。

ふんふん頷いていたが、たぶん半分も分かってないだろうな。

まぁ今はそれでいい。


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