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17◇魔拳銃

17◇魔拳銃

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数日後、朝食を終えた後に再び父親の後を追いかけ、後ろから声をかける。


「父上、また少しお話ししたいことがあります。お邪魔してよろしいでしょうか。」


父親は振り向いてちょっと不安げな表情をしたが、「うむ。」と頷いた。


書斎に入り、メイドに出て行って貰う。

やはりまだ父親以外には秘密にしておきたい。


「昨日の続きなのですが、よろしいでしょうか?」


父親は少し不安な表情のまま頷いた。


「昨日、ハンスにウィンドエバキュレーターの護衛への指導を打診しました。現在居る3人の魔法担当であれば習得することは可能だとの返事を貰いました。」


「おおそうか。ならハンスに指導する様に指示しておこう。」


父親はデスクに向かい、指示書形式の書面に指示内容を書いて署名した。


「これをマークの所に持って行きなさい。マークがハンスに依頼してくれる。」


俺は指示書を受け取り、畳んでポケットに入れた。


「父上、それに関して少しお願いがあります。」


俺は昨日見た護衛詰所の奥の射場について話した。


「あの射場なら私がスキルで出した魔拳銃の練習に使えると思います。まずは試しに私にあの場所で魔拳銃の試し撃ちをさせてもらえませんでしょうか。」


「うむ。それはいいな。私も見たいと思っていたところだ。早速今から行ってみるか。」


即決だな。

理解が早い。


「では、今から自室に置いている魔拳銃を持って護衛詰所の射場に行きます。」


「うむ。私は先に行ってマークに話しておく。」


そう言うと、父親はその足で護衛詰所に向かった。

俺は急いで自室に戻り、机の引き出しの奥の9mm拳銃一式を取り出す。

ガンベルトを丸めて上着を被せ、抱えて持って行く。


護衛詰所では父親がマークと話していた。

俺が着くと、すぐに射場へ案内された。


「さて、マークにも少し話しておく必要があるな。」


「はい、では簡単に説明します。」


俺は抱えていた上着をテーブルに乗せ、ガンベルトを取り出して腰に巻く。

ホルスターより9mm拳銃を抜き、マークに見せる。


「これは魔拳銃というものだよ。父上には昨日詳しく説明してあるので詳細は省くけど、この魔拳銃はアースバレットの様に遠くに塊を打ち出せる魔道具になるんだ。私がスキルで出せる様になったので試してみたいと思ってこの射場に来たんだ。」


俺はマークに尋ねる。


「あの白い的はどれくらい頑丈なの?」


「魔法担当がアースバレットを繰り返し当てても破壊や貫通はしません。その魔道具はどれくらいの威力なんでしょうか。」


「騎士の金属鎧くらいなら貫通すると思う。少し厚めの鉄板があればあの的の前に置いてくれないかな。」


マークは装備の修理場に置いてあった厚さ5mm程度で30cm四方くらいの鉄板を持って的の前に置いた。


「あれくらいの鉄板なら貫通はしないと思います。それでは試し撃ちをします。」


俺はそう宣言し、ポーチからマガジンを取り出して9mm拳銃に入れる。

スライドを引いて初弾を装填する。

的に狙いをつけ、両手にパワーアシストをかけながらウィンドエバキュレーターを銃口に展開してトリガーを引く。

ハンマーが落ちた瞬間、目の前に発射の閃光が迸り、強い反動と共に鈍いバスっという音がした。

同時に弾頭が空気を引き裂くパシーンという音がし、直後に的の鉄板からカンと言う命中した音がする。

魔の森で使った時は気にならなかったが、静かな場所で撃つと発射音はそこそこ大きいな。

弾頭の衝撃波音は仕方が無いが、発射薬の燃焼に伴う破裂音はもう少し低減したい。


父親とマークは9mm拳銃の発射を見て思わず後ずさった。

発射音はウィンドエバキュレーターのおかげで驚くほどではないが、やはり発射時のマズルフラッシュと俺の反動を受け止める姿勢から危険な雰囲気を感じたのだろう。


俺は続けて残りの8発を連射した。

全て鉄板の的に命中する。

空薬莢が周囲に舞って散らばった。

発射煙が少し漂う。

素早くマガジンチェンジし、もう9発連射する。

最後に一発わざと外した弾頭は後ろの的を貫通した。

撃ち終わると父親の方を向き、声をかける。


「父上、これが昨日言った魔拳銃です。威力と速射性に優れていますが、発射音が大きいのでウィンドエバキュレーター無しでは落雷の様な轟音がします。」


「うむ。確かに威力はある様だし、命中率も高い。あの小さく見える鉄板に殆ど当たっているし。鉄板の横の的も貫通しているしな。しかも魔法で撃つアースバレットよりも繰り返しが速い。これは確かに使えそうだ。」


「マーティン様。それは誰にでも使える魔道具なのでしょうか。」


マークは撃ち尽くしてスライドストップした9mm拳銃を見て尋ねる。

俺はスライドストップレバーを下げてスライドを戻し、デコッキングしてマークに手渡す。

マークは少し及び腰になりながら9mm拳銃を受け取り、色々な角度から眺めた。


「それにはもう発射する物は入っていないからどう扱っても安全だよ。練習は必要だけど、誰にでも扱えるよ。」


俺がそう言うと、俺が射撃していた姿勢を思い出して同じ様に的に向かって構えてみる。

まぁへっぴり腰なので様になっていないが、一応グリップを握ってトリガーに人差し指を入れている。

よく見てるな。


「父上、先ほど頂きました指示書はマークにそのまま渡します。このまま進めてもよろしいでしょうか。」


俺が言うと、父親は頷いてまだ狙いをつけているマークに声をかけた。


「うむ。マーク、マーティンに指示書を渡してあるので、後でそれの通りにしてくれ。」


マークは慌てて狙いを外し、父親に返事をした。


「承知いたしました。マーティン様の指示に従います。」


父親は発射炎と反動に少しビビったのか、自分では9mm拳銃を撃ちたいとは言わずに射場から立ち去った。


―――――――――――――――――――――――――――――


「さて、最初から説明しよう。」


俺とマークは護衛詰所に戻り、隊長室の応接セットに座る。

ミラーも呼んで貰い、ドアを閉めてもらった。


「ミラー、父上に全て話したよ。これで隠し事無しで使えるな。」


「それは良かったです。私も真実を言えずに少し辛かったです。」


「マーク、これは私がいいと言うまでミラーには内緒にしていて貰ったんだ。だから責めないでね。」


「はい、分かりました。旦那様も了承されていましたのでご指示に従います。」


俺は9mm拳銃をデスクの上に置き、話し始めた。


「まず、私とミラーが魔の森から生還したのはこの魔拳銃があったおかげなんだ。これを私がスキルで出して、利き腕を怪我したミラーの代わりにレッサーベアーを倒したので無傷で帰って来れた。」


「そのとおりです。マーティン様が負傷した私の代わりにその魔拳銃で近づいて来たレッサーベアーを倒してくださったので、安心して木の洞で一晩過ごせたのです。」


「そう、後はキラーバードを追い払い、グレイウルフも一頭倒したかな。」


「はい。私は3度もこの魔拳銃でマーティン様に助けられました。」


「最初に父上に報告した時はまだこの魔拳銃を人前に晒すのは危険だと思い、ミラーに秘密にして貰ってたんだ。あれから少し経って、私も踏ん切りが付いたので父上に全部打ち明けた。」


「そうなんですね。旦那様はどの様に言われてましたでしょうか?」


「うん。だいたいは納得してくれた。それで護衛でも使える様にしたいと私が提案して、護衛の魔法担当にウィンドエバキュレーターを覚えて貰う指示書を書いて貰ったんだ。」


俺はそう言って、ポケットから指示書を出してマークに渡す。


「護衛の魔法担当の3人に、ハンスからウィンドエバキュレーターを指導して貰う様にして欲しいんだ。ハンスには一応話はしてあるので、後日でいいからだいたいの訓練予定を教えて欲しいな。」


「はい、分かりました。」


「そうそう、なんでウィンドエバキュレーターを使うかの説明をまだしていなかったね。」


俺はそう言うと、隊長室に備え付けの紙とペンを取って魔拳銃の概略図を書いた。


「この魔拳銃は先ほどはあまり大きな音がしなかったと思うけど、本来は雷が間近に落ちたくらいの発射音がするんだ。」


俺が魔拳銃の銃口付近から放射状に線を引いて、銃口から大きな音がすることを示した。


「そこでウィンドエバキュレーターを魔拳銃の発射口に展開し、発射音を吸収させて音を小さくするんだ。」


銃口から直径1mに見える様に丸を書き、その中に放射状に線を引く。


「これで、発射音に引かれて魔獣が集まるのを防止するんだよ。効果は先ほど見せたとおり。」


「これは一人でウィンドエバキュレーター展開も魔拳銃発射もしないといけないのですか?」


「えーと、基本的に一人で両方扱える様にしたいんだけど、魔拳銃で的を狙ってまともに当てることが出来る様になるまでにはかなりの訓練が必要になるんだよ。だから魔法担当の適性によっては、魔拳銃を撃つ者とウィンドエバキュレーターを魔拳銃の前に展開する者を分けてもいいかな。」


「魔拳銃はどれくらいの命中率があるのでしょうか?」


「先ほどの射場の的までの距離なら私ならだいたい広げた手の平くらいの丸に当てられるよ。」


「それはすごい命中率ですね。アースバレットならあの白い丸い的のどこかに当たるだけで十分優秀と言えます。」


俺は更に9mm拳銃の取り扱いについて一通り説明し、とりあえずハンスの指導が終わるまではこの続きは休止とした。


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