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13◇土魔法

13◇土魔法

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次の日の昼食後、父親に言われていた木の洞での土魔法の実演の準備が出来たとセバスチャンが言ってきた。

庭には既に父親と兄のマイケルが庭の中央に居り、ミラーと今回同行した護衛4人達はその後ろに居た。


ミラーより洞のだいたいの大きさを聞いていたみたいで、庭に用意された高さ2mくらいの木の切り株に見える灰色の物体の根本には確かに二人入れるくらいの洞が開いていた。


「セバスチャン、どうしたのこれ?」


俺が問うと、セバスチャンの後ろからハンスが顔を出した。


「坊ちゃん。無事生還されて本当に良かったです。最初聞かされた時は心臓が止まるかと思いましたよ。」


ハンスはそう言うと、木の切り株に向かって魔法を唱えた。

すると切り株に見える灰色の物体は茶色の木と洞に変わり、上部に木の幹が伸び上がって緑の葉が生い茂り、立派な大木になった。

皆があぜんとしているとハンスが、


「み、皆さん切り株は土魔法で作った実体のある物ですが、上の幹と葉は実体の無い投影魔法です。大したことはありませんのでご安心ください。」


何が安心しろだ。

ハンスが説明し終わっても、まだ皆ぽかんと口を開けて空を仰いでいる。

予め聞いていたであろうセバスチャンも同じだった。


しばらくして俺がまずハンスに問いかける。


「ハンス、心配してくれてありがとう。セバスチャンからどう聞いていたの?」


「執事殿からはマーティン様がミラー殿と共に避難して立てこもった木の洞を再現したいと聞きました。ミラー殿にだいたいの寸法は聞いていたのですが、お庭で再現するとなると本物の木は持って来れません。ならばと、木の根元部分を土魔法でそれらしく作り、色とその上に伸びる幹は投影魔法で表現すれば実物に近い見た目になるかと思い、ご覧の様に調整させていただきました。」


俺はハンスの答えを聞いてぶっ飛んだ。

なんだよ元の世界のバーチャルとリアルの融合エンタメだよ。

3Dプリンタとプロジェクションマッピングと空間投影のハイブリッドだ。

これ、後で絶対教えてもらおう。

俺は父親に言われた洞保護の実演を忘れて妄想に興奮していた。


「さて、マーティン。これだけ立派な大木を用意してくれたのだ。実演してみせてくれ。」


俺はハッっと気が付いた。

俺のやった土魔法の板で洞を覆うのはハンスのやったこれの後ではショボ過ぎて何とも気恥ずかしいことを。


「えーっと、父上、私のやったことはハンスが出した目の前のコレに比べてあまりにも拙いのでゴニョゴニョ。」


「ハンスはハンスだ。お前とは比べるべくもない魔法の専門家だ。お前の魔法が劣っているのは当然のことだから気にせず当時やったことを実演してみてくれ。」


そう言われて俺は納得し、やっとやる気になった。


「では実演します。」


俺はそう言って土魔法、アース系のアースシールドを使い、周囲の土をかき集めて40cm四方で厚さ20cmの土の板状に圧縮して洞の入口に配置していった。

かなり重たいが、パワーアシストをかけているので何とか持ち上がる。

何枚も並べて入口を塞ぎ、その上からも半分ずらしながら更に重ねてゆるいドーム状に三重に覆った。

もちろん、一枚一枚の土板も配置するときに土魔法で曲げてゆるく曲面を付けている。

土板同士の接合面はアース系魔法を細かく使い、お互いに一体化する様なイメージでくっつける。

重ねる時に小さな通気口と覗き穴を開けるのも忘れない。

最後に俺自身が中に入るための小さな穴を開け、頭からもぐりこんでその後その穴を塞いだ。

そして内側から追加の接合と強化の魔法をかけた。

俺は平べったい覗き穴から外に向かって大声で話した。


「こんな具合にやりました。通気口にはミラーの持っていた魔獣よけの薬草を石ですり潰して塗っています。これで一晩過ごしましたが、魔獣に襲われることもなかったです。」


俺はそう言うと再び小さな穴を開けて外に這い出した。

父親や今回同行した護衛達は無言で木の洞の周りを熱心に見て、げんこつで土壁を叩いたりしていた。

一通り観察した後、父親は皆を下がらせて護衛から練習用の鉄剣を受け取り、ドーム状になった土板に鋭く切り付ける。

5分ほど切ったり突いたりしていたが、洞を覆う土壁は3枚重ねの一番外側の土板が半ばまで削れただけであった。

しばらくすると父親が俺に聞いてくる。


「これはどこで知ったのだ?この構造は一人で思いついたのではあるまい?」


父親の疑念はもっともだ。

俺は石作りの建築などではドーム状の屋根構造が強度が高いことを言い、今回の土板もその構造になる様に下から順番に少し板を曲げながら積み重ねてゆき、重ね合わせる時には半分づつ重なる様にして全体的な強度と密閉性を出したと言った。

また、板同士を重ねる時は上下左右の板との接合面は少し溶かして一体化する様に細工し、重ねる板同士も同じ様にお互いを少し溶かして一体化させたと言う。


「アース系の魔法の訓練をしている時に思いつきました。私の魔法はまだまだ作れる物は小さいですので、巨大な土壁の様な防壁を作ることは出来ません。ならば私の作れる小さい土板をうまく重ねていけば防壁代わりになるのではないかと思いました。」


石の建造物でアーチ状やドーム状の物はこの世界でも普通にある。

それの絵も参考にしたと答える。


ぶっちゃけ、俺の魔力がもっとあればドーム状の一枚板を被せれば一発なんだけどね。

それが出来ないからの苦肉の策だという様に説明した。

実際そうだし。


「なるほど。魔力が少なくとも工夫次第で成果を出せるということか。うむ、でかした!」


父親にお褒めの言葉を貰って俺は微笑む。

領主と言えども建築関係は素人なんだろな。

俺の説明に素直に納得してくれた。


「ありがとうございます。今回これが出来なかったら私は死んでいました。」


そう言うと、父親も頷いて説明会は終わった。


その後、後片づけをする様に父親が言うとハンスが投影魔法を解除し、俺の作ったドーム状の蓋ごと土魔法で切り株を崩していった。

ミラーと護衛達は崩された土魔法の小山を均していく。


「ハンス、さっきの大木に見える投影魔法はすごかった。今度私にも教えてくれないかな。」


「もちろんですとも。ただ、ちょっと難しいので習得までに時間はかかります。私の時間の取れる時にお教えすることになりますが、予定を確認しますので少しお待ちください。」


ハンスはそう言って、懐から手帳を取り出してめくり始めた。


「そうですね、来週の中旬くらいからなら始められます。来週の頭に具体的な日程をお知らせしますね。」


ハンスはそう言うと、後片づけに戻る。


俺は少し疲れたので自室に戻り、ベッドに倒れ込んだ。


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