10◇魔の森
10◇魔の森
=============================
数日後、朝食の時に兄のマイケルが父親のジョージと共に魔の森にハンティングに出かけると言う。
護衛部隊のミラーも部下を4人連れて同行する。
俺はそれを聞いて、「私も参加させてください!」と勢い良く言う。
母親のウェンディが、
「まぁ、マーティンにはまだ早いわよ。」
父親のジョージも、
「そうだぞ。魔の森は危険だが、領主として定期的に観測と実猟をして状態を把握しておく必要がある。今回のハンティングも遊びではないんだぞ。」
と言うが、アイリスに鍛えてもらった魔法とマークに鍛錬してもらった剣技をぜひ実戦で試してみたい。
現時点での俺の魔法は以下の様になっていた。
アイリスの的確な助言の元で練習したので、半年前よりも大幅に伸びている。
これはステータスに表示されるが、他人には見えないので説明用に紙にメモとしてわざと大雑把に書き出しておく。
威力は「はじめての魔法」に書かれていた図解の表現でおよその効果も知っていたので、それを超えない様に注意する。
ファイア系
・ファイア:指先や手の平に込めた魔力に従った大きさでオレンジ色の炎が吹き出す。最大1mくらい伸びる。
・ファイアボール:両手の平から同時に霧の様なものが噴出し、交点で混ざりあって点火して爆発する。威力はグレイウルフの顔面に撃つと目と耳が同時に損傷して気絶するくらい。最大5mくらいまで。
・ファイアブレード:両手の平から円弧を描くように火のアーチが出て、両手を閉じると火のアーチがリング状になって飛んでいく。威力はあまり無く、威嚇目的に使用する。
ウォーター系
・ウォーター:エールのジョッキを5杯満たす程度の水が出せる。
・ウォーターカッター:強力な水鉄砲で、接触寸前で放つと薄い銅板なら切断可能。鉄板はまだ無理。
・ウォーターボルト:強力な水砲弾で、5mくらい離れた場所のグレイウルフを昏倒させるくらい。
アース系
・アース:土の地面に直系1m、深さ1mの穴を数秒以内に掘れる。土は消滅せず、周囲に盛られる。
・アースシールド:土の地面から土砂をかき集めて前方に幅1m、高さ1m、厚さ30cmの壁を数秒以内に作れる。
・アースバレット:土の砲弾で、5mくらい離れた場所のグレイウルフを昏倒させるくらい。
ウィンド系
・ウィンド:3mくらい離れた場所にいる人をよろめかせる程度の風を出せる。
・ウィンドブレード:3mくらい離れた場所にある布の服を切れる程度の風の刃が出せる。
・ウィンドエバキュレーター:3m以内くらいの場所に真空の直径1m程度の球を作り出せる。
ライトニング系
・ライトニング:親指と人差し指との爪の間に5cmくらいのアーク放電を出せ、人に触れると気絶させられる。
・ライトニングフラッシュ:両手の人差指を10cmくらいの間隔で向かい合わせて発動するとごく短時間アーク放電し、5m離れた場所の生物を一時的に目くらませ出来る。
・ライトニングショット:人差指を頭上に掲げて空気中の雷雲要素を呼び寄せて10m以内の目標物に軽度の落雷をさせ、軽く痺れさせることが出来る。
アシスト系(New)
・パワーアシスト :筋力を補助し、平均で1.5倍、数秒以内なら2倍の力を出せる。
・スピードアシスト:筋速度を補助し、平均で1.5倍、数秒以内なら2倍の速度が出せる。
・センスアシスト :視力、聴力、触覚力を補助し、それぞれ2倍程度の能力が出せる。
ライト系(New)
・ライト:身体の任意の位置から少し離れた場所に任意の光量の照明球を出せる。
・フラッシュ:手の平から強力な閃光を発せられる。1秒間に最大4回発光可能。
・レーザー:指先から指向性のある細い光を発せられる。色は任意に変更可能。魔力を込めれば紙に火が点く程度。
ちなみに、1mとか30cmとあるのは俺の元の世界での感覚だ。
こちらの単位は別にあるが、インチっぽい面倒な単位系で感覚的に使いにくので一人の時はメートル法だ。
幸い、距離だけは1キロム≒1kmなのでそのまま使っているが。
ハンティングには足手まといになるからと、父親の同行許可はなかなか下りなかったが、俺はしつこく食い下がった。
家庭教師だったアイリスの所まで行き、現在俺の発動できる魔法一覧のメモを見せて近くの川まで行って河原で一通りの魔法を実演して見せる。
俺はアイリスの魔法授業が終わっても助言を受けながら自主鍛錬を続けており、ステータス表示で見たレベルも相当に上がっていた。
「ステータス表示」(12歳6ヵ月)
「名前:マーティン・ランバート」,「年齢:12歳」,「性別:男」
「レベル:5」,「体力:240」,「魔力:580」,「精神力:540」
「攻撃力:280」,「防御力:350」,「素早さ:260」,「器用さ:630」,「賢さ:620」,「運の良さ:540」
「スキル:自衛隊魔法」
「スキル:粉砕魔法」
「スキル:自衛隊魔法」
「転生者特典:元の世界の自衛隊装備を召喚出来るスキル。」
「召喚可能品:レベルに応じて強力な武器や装備を召喚可能。」
「ランク1武器:9mm拳銃、9mm実包100発、9mm拳銃用スペアマガジン、ガンベルト(ホルスター、ポーチ付き)」
「ランク1装備:レーション、飲料水、医薬品キット、簡易工具類、戦闘服上下、ブーツ、ヘルメット、テント」
「消費魔力:ランク1を1式召喚で魔力を600消費。」
「スキル:粉砕魔法」
「転生者特典:元の世界の産業廃棄物破砕機で砂粒程度の大きさまで破砕可能なスキル。」
「ランク1粉砕:片手で持てる程度の体積、重量の物体を砂粒レベルに破砕可能。」
「消費魔力:ランク1を最大体積・重量で実行すると魔力を200消費。」
但し、スキルに関しては内容が一切変化していない。
それでも魔力が290→580と大幅に増えたことからスキルを実行出来る回数もかなり増えた。
ひょっとしたら、スキルはレベルに連動しているのかもしれない。
定番ならレベルのキリの良い数字でスキルもランクアップしたりするんだろうな。
ちなみに、ステータス内容は俺自身にしか見えていないからアイリスには実演と共に感覚的なことしか伝えていない。
もちろん、ステータスの自前表示やスキルの自衛隊魔法は俺だけの秘密だ。
「先生、どうでしょうか?これだけ魔法が上達していれば父上達の足手まといにはならないと思いますが。」
「そうですねー。ただ、実践はまだでしょう?もう少し待って予行演習などをやった方が良いのでは?」
「今回のハンティングは父上と兄上と護衛部隊から5人参加するそうです。これだけ人数が多く、私より2歳年上の兄上も参加するのならそれほど危険性は無いと思います。是非、父上に推奨文を書いていただけないでしょうか。」
「わかりました。マイケル様も参加とならそれほど危険性も無いでしょうね。」
そう言って、アイリスは俺の推奨文を書いて渡してくれた。
―――――――――――――――――――――――――――――
翌日、父親にアイリスの推奨文を渡すと、一読してから今回のハンティングへの同行を許可してくれた。
「マーティン、お前の努力は認める。だが、未経験であることには変わりないので今回は同行するだけで、何もしないこととする。武器の携行は許可するが、間違っても魔物と戦おうとするなよ。」
「はい、分かりました。私も最初から魔物に向かって行こうなどとは思っていません。」
そう言って、俺は明日からのハンティングへの同行の準備を始めた。
父親から分からないことは護衛隊長のマークに聞けと聞いているので、護衛隊詰所に行ってマークと話をする。
「そうですか。旦那様が許可されましたか。では、今回のハンティングの概略と目的を説明します。」
マークはそう言って、紙にペンで書き始めた。
「まず、行先は魔の森116番ゲートです。ゲートとは農地と魔の森の境界に建てられた管理棟です。この管理棟に設置されている結界魔道具は複数個連携して動作し、隣接する結界魔道具との間で一種の魔力防壁を作ります。この防壁は魔物が接近すると、近づくにつれて激しい痛みを感じる様な効果があります。これにより、魔物は防壁に近づかなくなるので、魔の森から農地への魔物の進出を止めています。」
「魔の森ゲートは全部で何個くらいあるの?」
「魔の森は南北200キロムの長さがあります。結界魔道具同士の連携距離は約1キロムなので、それ以下の距離で管理棟を設置する必要がありますので、現在のところ約250基設置されています。」
「大変な数だね。設置や管理コストもかなりかかるんじゃぁないの?」
「私達は費用面については詳しく知りません。もしご興味がある様なら御父上か、領都の領内管理部で訊ねられたら分かるのではないかと。」
俺はそう聞いて、ハンティングの後に父親に訊ねてみようと思った。
「今回の魔の森116番ゲートは比較的魔物の発生が少ない場所です。マイケル様の実地訓練と共に我々護衛部隊の訓練も兼ねています。」
「兄上は今まで何回くらい魔の森にハンディングに行っているの?」
「マイケル様は今回が2回目です。半年前の長期休暇時に初めて旦那様から同行を許可され、私も同行しました。」
「そうなんだ。兄上の王都学園での成績が判断されたのかな?」
「旦那様から、マイケル様の学園での実績で魔の森116番ゲートなら問題無いだろうと言われ、同行となった様です。」
俺はちょっと早まったかなと思った。
兄の感情を考えると、いくら家庭教師や護衛の元でこの半年鍛えたとて、自分と同じ同行を許可されるとは思っていなかっただろう。
先日の剣技の手合わせの結果のこともあるし。
まぁぐだぐだ考えていても始まらない。
俺は気分を変えて、マークにハンディングに必要な装備を聞いて準備をしてもらった。




