表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼氏は消えて残ったのは連帯保証人の借金だけ。私はダンジョンに潜ることにした  作者: 華洛
第一章 ダンジョンへ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第5話 人間の種類



 ダンジョンの中を、特に会話もなく、ライカと横並びで進んでいく。

 互いに信頼もなければ信用もない。

 ライカは私を『債務者』として、私はライカを『監視者』として見ている。

 背中を預けるなど論外だ。

 だからこそ、互いを視界に入れ、警戒を解かぬまま横並びで歩く道を選んだ。

 人を信じることが、どれだけ危険か――ヨウスケが身を以て教えてくれた。


「ところで、貴女は「セカンド」? それとも『サード』かしら?」


 その問いかけに私は足を止める。


 ダンジョンが発生して半世紀。

 魔素の影響か、あるいは別の要因か――。

 学者たちが研究を重ねているものの、未だに具体的な原因は分かっていない。


 人間は現在三種類に分類されている。


 一つ目はファースト。

 普通の人間。

 人類の約六割がこれに属している。


 二つ目はセカンド。

 異能や超能力といった特殊技能を発現させた人間。

 人類の約三割がこちらに属している。

 ダンジョンに潜る探索者や、特殊技能を活かせる職業に就いている人が多い。


 三つ目はサード。

 身体に魔物などの人外のパーツを持つ者、あるいは人外そのものの姿で生まれた人類。

 確認されているだけで人類の約一割未満がこちらに属している。

 こちらは身体的特徴から、差別などに遭いやすく、一部から魔物扱いされるケースがある。


「……なんで、その二種類なの。ファーストかも知れないでしょ」


「ありえませんわ。このダンジョンに黒慟さまに連れられてきた時点で、どちらかに決まっていますもの。

もしもファーストなら、五千万程度の借金なら夜の街に沈めて回収するでしょうし」


 冷徹な指摘に、喉の奥が引きつる。


「……なんで種別が分かるの?

差別助長を防ぐために公的記録には残されないはず。

調べようがないわ」


「黒慟さまは、サードですの。

普通は人の姿をしていますが、真の姿は悪魔そのもの。

悪魔のような赤い獣の目だけは隠す事ができないので、いつも黒いサングラスをしてますのよ」


「――悪魔そのもの?

まさか人間の心を読み取って正体を看破するとでも言うつもり?」


「その通りですわ。

ただサードは魔物の部分が『ノイズ』となって読みにくいと仰っていましたわ。

完全に読み取るには、直接対峙する必要があるそうですの。

まあ、貴女は顔に出やすいようですから、あの方でなくとも読み取るのは容易でしょう」


「……私、は」


 ライカはまるで答え合わせをしたいかのように言った。

 初めて会った時から、爛々と輝く強い瞳は全てを見透かしているようだった。

 きっと私がどれに属しているかは、さっきの話し合いで見抜かれている。

 

 ――言う必要があるのだろうか。

 いや、隠しても意味はない。戦えばすぐに分かる。

 それに、ここで嘘をついても何の得もない。


 喉まで出かかった答えを口にしようとした、その時だった。


 私とライカの間を、赤白い閃光が通り抜ける。

 ダンジョンの奥から、重厚な駆動音を響かせ、三体の人型機械が姿を現した。

 銀色の外装、発光する単眼カメラ、全身に装備された火器。

 ゴーレムではない――完全な戦闘ロボットだ


「あれは、このダンジョンに出現する『ジェノサイドマシン』ですわ。

多数の火器を所持し、敵対者を全滅させるまで攻撃し続けるタイプ。

貴女は運が良いですわね。

あれの魔石は最低でも黄色以上。一つ百万以上は下りませんわよ」


 魔石は価値の低い順から、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色に分かれている。

ただし、大きさによっては下の色が上の色の価格を上回ることもある。


「ここでは、獲物を倒した者が魔石を手にできますの。

――お先にいただきますわ」


 ライカがそう告げた瞬間、彼女の全身に雷霆が奔った。


 ライカが雷光と化して駆けだす。

 ジェノサイドマシンが火器を構えた瞬間には、すでに彼女は射線の外。

 岩壁を、天井を、縦横無尽に駆け巡る。

 機械の照準速度では、捉えきれない


 そしてジェノサイドマシンがいる真上に行くと、そのまま垂直に突き抜けた。

 まるで落雷だった。

 雷を纏った斧が、ジェノサイドマシンを真っ二つに切り裂いた。

 続いて、ライカは近くにいたもう一体のジェノサイドマシンを斧で横一線。

 瞬く間に二体の魔物を屠って見せた。


「凄い」


 素直に感嘆の声が出た。

 見た限りで、ライカはセカンド。能力は『雷』だと思う。

 私と同じ歳ぐらいなのに、圧倒的に強い。

 ……でも、あんなに強くて、格好良くて、戦いを魅せる人でも、人権をあのヤクザに買われて奴隷扱いされている。


 あの人は、なぜここにいるんだろう。

 これだけの実力があれば、国のシーカーとして活躍できたはずだ。

 それなのに、悪冥会に所有されている。


 ――私と同じように、何か事情があるのだろうか。


≪WARNING...ELIMINATE TARGET≫


 同機を破壊されたジェノサイドマシンが、怒号のような電子音を上げた。

 残る一体がライカに銃口を向けて――、唐突に停止した。

 ライカは近寄ると、その機体に指先で触れる。

 ジェノサイドマシンのカメラレンズがぎりぎりと音を立てて私を捉え、先ほどまでとは比較にならないほど激しい駆動音が鳴り響いた。


「初回サービスですわ。一体だけ差し上げます」


 ライカは冷ややかに微笑んだ。


「――ただ、私の異能でハッキングして、限界まで出力を引き上げていますわ。

さあ、私も見せたのですから、貴女も力を私にお見せなさい」


 ジェノサイドマシンが、腰のホルスターから筒状のデバイスを抜き放つ。

 直後、そこから高エネルギーの光が噴出し、まばゆい刃を形成した。


 ブースターが咆哮を上げ、機体が加速する。

 光の刃を構えた銀色の殺戮機械が、轟音と共に突進してきた。

 距離が、一瞬で詰まる。


 ――来る!


読んでいただきありがとうございました!

少しでも「いいな」と思ったら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ