4.2度目の朝
光が差し込んでいた。
瞼の裏を温かく撫でていくようだ。
リアムはゆっくりと意識を取り戻した。
そして重たいまぶたを開ける。
最初に見えたのは、淡い金の光だった。
それが朝日なのか、人なのか、一瞬わからなかった。
だが、焦点が合ったとき、心臓が止まりそうになった。
ベッドの傍らに、一人の少女が座っていた。
白いドレスに、陽の光を含んだ金の髪。
薄い青の瞳が、真っすぐこちらを見つめている。
息が詰まった。
あの日のあの瞳だった。
自分を刺した、あの瞬間の目。
記憶が一瞬で蘇る。
冷たい刃。血の味。
悲しみとも怒りともつかない表情で自分を見下ろした少女の顔。
ーーーこの子だ。
名前も知らなかった。
だが、確信だけはあった。
目が語っていた。魂が覚えていた。
リアムの喉が震えた。
「……ごめんなさい。」
少女はわずかに目を見開いたが、怒りの色はなかった。
代わりに、静かな驚きと、どこか懐かしそうな優しさが滲んだ。
「……あなたは、まだ何もしていないわ。そうでしょう?」
リアムは息を呑む。
「……まだ?…え??」
少女は立ち上がり、陽の光の中でそっと言った。
「そう。二度目の今を、私は生きている。そして……あなたも…そうなのでしょう?」
言葉の意味が、胸に刺さる。
リアムは震える声で問う。
「あなた…もしかして……」
少女は頷いた。
「ええ。私も、覚えているの。あの朝、あなたが息絶える前に“ごめんなさい”と言った声も。」
リアムの視界が滲んだ。
あの朝焼け。血の光。
最後に見た空が、今ここに続いている。
少女は一歩、彼に近づく。
その瞳は、もうあの時の涙ではなかった。
「状況はお父様から聞いたわ。そして今のあなたを見ていて思ったの。正しく導かれてさえいれば、あなたはきっと…優しい子だった。」
リアムは首を振る。
「俺は……人を殺した。何も、優しくなんか……」
「だったら、今度こそやり直せばいいのよ。」
少女は柔らかく微笑んだ。
「前回確かに罪を犯したかもしれない。けれど生き方は変えられる。今回は正しく生きればいいのよ」
静寂。
遠くで鳥の声が響く。
少女は少しだけためらい、そして言った。
「お父様から提案もされたわ。あなた、私の従者になって学びなさい。」
リアムは息を詰まらせたまま、うつむく。
涙が、頬を伝って落ちる。
「……俺が……あなたの……?」
「そう。あなたは今日から、私の従者よ。」
窓の外の朝焼けが、静かに差し込む。
二人の影が、重なった。
少女は、光を見つめたまま静かに呟く。
「私もあの日、あの朝命を終わらせたの。…だから…今度こそあの朝の続きを、生きましょう。」
リアムはその言葉を聞きながら、
胸の奥に新しい鼓動を感じていた。




