22.エピローグ
それは数日前のことだった。
セレナ・カルディナは塔の上から身を投げ、
その直後を追うようにレオン・ファロウも転落し、
二人は亡くなった。
主君を失ったカルディナ家では、
屋敷中が深い悲しみに沈んでいた。
そして——
もう一人の少年も同じ日に命を落としていたことを誰も知らない。
彼の名を覚えている者は、
この世界のどこにもいなかった。
———
セレナとレオンの墓は、見晴らしの良い丘の上に並んで建てられた。
雪解けの土を押し分けるように、
若い芽が顔を出している。
その小さな芽は、まるで誰かがこっそり植えていったようにも見えた。
その日の午後。
メイドのエマは両手いっぱいに花を抱え、そっと墓前に進んだ。
「……セレナお嬢様。今日も風が気持ちいいですね。」
墓の前に白い花を置き、隣の少し小さいレオンの墓にも小さなブーケを添える。
「レオン様……お嬢様のこと、最後まで守ろうとしてくださったんですね。」
彼女は涙をこらえながら、
二つの墓標にそっと触れた。
その瞬間、
ふわりと風が吹いた。
冬の終わりの風ではなかった。
ひどく懐かしくて、
胸の奥が締めつけられるような温かい風。
エマの髪が揺れ、
花びらが空へ舞い上がる。
そして——
彼女ははっと息を呑んだ。
墓標の前に、
一瞬だけ“影”が立っていた。
金色の髪を揺らし、
微笑んでいるような細い影。
すぐに風に溶けて消えたけれど、
確かにそこに“誰か”がいた。
「…セレナ…お嬢様…?」
エマの声が震える。
返事はない。
けれど、花の香りがふわりと濃くなった。
まるで——
誰かが「ありがとう」と言っているように。
エマは胸に手を当て、
小さく微笑んだ。
「……また、お花を持ってきますね。」
———
丘の上では、
若い芽が風に揺れていた。
セレナも、
レオンも、
そして——リアムという名の少年のことも。
誰も思い出せない。
けれど、風だけは知っていた。
三人が最後に歩いた世界のことを。
三人が互いを救ったことを。
もう大丈夫と笑顔で消えていったことを。
風が丘を渡り、
墓の間でそっと縋るように吹き抜けた。
それはまるで——
三つの魂が並んで微笑んでいるかのようだった。
終わりました٩( 'ω' )و
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました٩( 'ω' )و
ちょっとだけ、ハウンターっていう映画を参考にしちゃいました٩( 'ω' )و
もし気が向いたら、同じく完結済みの
『弟の婚約者がどうみてもドアマットヒロインなので愛でることにしました。』
や『悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!』
も読んでみてくだされば嬉しいですm(_ _)m
これからも、ゆるっと楽しんで書いていきます。
ありがとうございました!m(_ _)m




