表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2度目の世界で君は僕を殺さない  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

21/終わらせる決意

塔の上。

世界が崩れ始めていた。


足元の石が薄く透け、

遠くの街並みも夜空の星のように滲んでいく。


風の音ももう聞こえない。

三人の呼吸だけが、ここに存在していた。


リアムは拳を握りしめ、

消えかける景色を見渡す。


「……これで……終わるんですね。」


声は震えていたが、

その背中は初めて“迷いのない従者”のそれになっていた。


レオンが優しく笑う。


「終わる……というより、実際はやっと休めるんだろうな。」


セレナは二人の間に立ち、空へ溶ける朝焼けを見つめた。


その色は、

前の人生で心を折り砕いた光と同じはずなのに——

もう、目にも胸にも痛くなかった。


彼女はゆっくりと振り向く。


世界はもう、三人の輪郭以外ほとんど残っていない。


そしてセレナは、

震える声で、しかし確かな微笑みで言った。


 


「リアム——あなたは誰も殺さなかったわ。」


リアムの瞳が揺れる。


「……俺…」


「本当に強かった。」


セレナは続ける。


「前の人生で奪った命を、二度目ではひとつも汚さなかった。…それは、誰よりも尊いことよ。」


リアムは涙を堪えながらうなずいた。


 


「そして、私も……あなたを殺さなかった。」


言葉を発した瞬間、彼女の表情に安堵が広がった。


「あなたを憎むだけで終わらず、あなたを許す道を選べた。…あの時の“私”を、ようやく救ってあげられた気がする。」


リアムは声を詰まらせ、ただ涙を流していた。


 


最後に、セレナはレオンへ視線を向けた。


世界の崩壊はもう目前。

レオンの輪郭もふちが光に溶けている。


 


「レオン…あなたは、二人を守ってくれた。」


レオンは驚いたように目を見開き、そして照れ隠しのように鼻を鳴らした。


「守ったなんて立派なもんじゃねぇ。…二人が勝手に走っていくから、仕方なく後ろからついてっただけでさぁ。」


セレナは首を振る。


「違うわ。あなたがいなければ、私たちはここまで来られなかった。」


その一言に、レオンはほんの少し目を伏せた。


「……なら、守れたって思ってもいいか。」


リアムが泣き笑いで言う。


「もちろんです。レオンさんは……誰よりも強くて、優しい大人でした。」


レオンは照れ隠しにリアムの頭をくしゃくしゃに撫でる。


「ったく…坊は泣き虫だったんだな。」


 


世界の光が強くなる。


三人とも、もう中央だけが辛うじて形を保っている。


セレナは二人の手を取り——

ぎゅっと握った。


「…これで終わりでもいい。でも、三人で来られてよかった。」


リアムが頷く。


「はい……僕もです……。」


レオンが笑った。


「じゃあ、最期は三人一緒に。」


三人の足元が光に溶けていく。


セレナの声が、

最後の風のように優しく響いた。


 


「もう大丈夫よ。」


 


光が弾け、三つの影はそっと世界から消えた。


朝焼けだけが、

何もなかった塔の上に残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ