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2度目の世界で君は僕を殺さない  作者: ちょこだいふく


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18/22

18.真実に近づく

夕刻、カルディナ家のサロンにて。


リアムは躊躇していた。

何度も胸の奥で言葉がつっかえて、

けれど結局、その足はセレナの部屋の前に止まった。


扉をノックすると、すぐに返事が返る。


「入りなさい。」


部屋には淡い夕陽が差していた。

セレナは机の上の本から顔を上げ、柔らかく微笑む。


「どうしたの? そんな顔して。」


リアムは喉を鳴らし、

躊躇いながらも決意して言う。


「…セレナ様。レオンさんのことで……話したいことがあります。」


セレナは一瞬だけ目を細め、

静かにペンを置いた。


「……座って。聞かせて。」


リアムはベッド脇の椅子に腰を下ろし、

ひとつ息を吸い込んだ。


「今日の訓練のあと……レオンさんが、変なことを言ったんです。“塔の上にセレナ様が見えた”と。」


セレナの表情がわずかに硬くなる。


リアムは続けた。


「それだけじゃなくて……“手すりが折れた気がした”って。…その時のレオンさん、とても動揺しているように見えて…」


そこまで言うと、セレナは息を静かに呑んだ。


そして、ゆっくりと自分の胸元に手を添える。


「…私もあるの。」


リアムは顔を上げる。


「…セレナ様も?」


セレナは頷いた。


「夢じゃないの。塔の上で…誰かに腕を掴まれた感覚。落ちる直前の、強い引き止める力。あれは、あの日の私が誰かに助けられようとした“断片”。…でも、誰が掴んだのかは見えなかった。」


リアムの心臓が強く脈打つ。


「俺…レオンさんの言葉が、どうしても気になって…」


セレナはしばらく俯き、

そして顔を上げた。


「…いっそ、三人で話してみない?」


リアムは驚く。


「レオンさんも、ですか?」


「えぇ。私たちだけで抱えても、何もわからない。

覚えていることを、“断片”でもいいから出し合えば、きっと何か見えてくるはずよ。」


その言葉の強さに、リアムは圧倒された。


彼女は前へ進む覚悟を、恐れと共に抱えている。


「…わかりました。レオンさんを呼んできます。」


リアムは立ち上がりかけて、ふと足を止めた。


「…セレナ様。…怖く、ないんですか…?」


セレナは少し驚いた表情をし、それから柔らかく笑った。


「怖いわ。でも——」


窓の外の塔のシルエットを見ながら続ける。


「この“二度目の世界”が本物でも、夢でも、私たちが立ち止まったら先に進めない。…私は、真実を知りたいの。」


リアムは息を飲んだ。


その横顔は、前の人生で復讐に染まった少女とはまるで違う。


「…すぐに、呼んできます。」


リアムの声は震えていたが、目は真っすぐだった。


部屋を出る前、セレナが小さく言う。


「リアム。」


「はい。」


「あなたが言ってくれた勇気に、私も背中を押されたのよ。」


リアムの胸に熱いものが広がる。


そして彼は走り出した。


—— 三人で真実に近づく“第一歩”が、静かに始まろうとしていた。


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