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2度目の世界で君は僕を殺さない  作者: ちょこだいふく


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17/22

17.レオン

カルディナ家の庭に、朝の空気が満ちていた。

木剣の乾いた音が、一定の間隔で響く。


レオンが低く言う。


「坊、足だ。踏ん張りが甘ぇ。」


「はいっ…!」


リアムは歯を食いしばり、木剣を構え直した。


いつも通りの訓練。

いつも通りの朝。


しばらくして、レオンが手を上げる。


「よし、今日はここまでだ。」


リアムは息を整えながら頷いた。


「ありがとうございました、レオンさん。」


「おう。」


レオンは軽く笑い、リアムの頭を乱暴に撫でる。


そのとき——

庭の向こうから、セレナの声が聞こえた。


使用人と話しながら、花壇の方へ歩いているらしい。


レオンは無意識に、そちらへ視線を向けた。


そして、ぴたりと動きを止めた。


リアムはすぐに気づいた。


「…レオンさん?」


レオンは返事をしない。視線は庭の奥、塔のある方角を向いたままだ。


数秒の沈黙のあと、掠れた声で言う。


「……今」


リアムの背中に、冷たいものが走る。


「…お嬢様が…塔の上に立ってるように…見えた。」


リアムは言葉を失った。


セレナは今、確かに庭にいる。

塔に登っているはずがない。


「…それ…は…」


リアムが言いかけたところで、

レオンははっとしたように首を振った。


「いや、違うな。…気のせいだ。」


そう言い切ろうとした声が、わずかに揺れた。


レオンは眉を寄せ、こめかみを押さえる。


「…変だ。続きが…見えた。」


リアムは息を呑む。


「続き、って…?」


レオンは言葉を探すように、しばらく黙り込んだ。


「…手すりが…折れたような…」


それだけを言って、口を閉ざす。


リアムの心臓が大きく脈打った。


「…塔の上に…いた、その、…」


問いかけると、レオンは苦しそうに笑った。


「わからねぇ。誰だったのかも、なんで見えたのかも…さっぱりだ。気のせいだ!」


レオンは胸に手を当て、小さく息を吐く。


「…なんだか、胸が痛ぇな。変な朝だ。」


それだけ言って、いつもの調子に戻ろうとする。


「まぁいい。飯にするぞ、坊。腹減ったなぁ。」


そう言って歩き出す背中は、いつもと同じに見えた。


けれどリアムは、その背中から目を離せなかった。


何かが、少しずつ、確実に——

ズレ始めている。


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