表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2度目の世界で君は僕を殺さない  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/22

10.夜に立つ

夜。

カルディナ家の庭は、しんと静まり返っていた。

遠くで虫の声がする。灯りの落ちた温室のそばで、小さな影が立っていた。


リアムだった。

薄手の上着を羽織り、裸足のまま地面に立つ。両足の指で土をつかむようにして、息を止めた。目を閉じ、月の光を頬で感じる。


――動かない。

ただ立つ。

風が吹いても、枝が揺れても、揺らがない。


1度目の世界、覚えている。

暗い屋根の上、息を潜め、獲物の足音を待った夜。

…あのときの静けさを、体は覚えていた。


でも、今の体は小さい。重心が定まらず、すぐにぐらりと傾く。

「…くそっ。」

小石の上に足を置き直し、もう一度。


何度も倒れ、何度も立ち上がる。

夜露で裾が濡れても、気にしない。背筋を伸ばし、呼吸を整える。


“影”の技術を、今度は“生きる”ために使う。

誰かを殺すためではなく、誰かを守るために。



やがて、彼は片足で立つようになった。

足の裏で風を感じ、目を閉じたまま、体を揺らす。バランスを崩すたびに、息を整えて戻す。


月光が静かに降り注いでいた。

汗の粒が白く光る。


ふと、昔の自分の手が脳裏に浮かんだ。

血に濡れた刃。震える指。

その映像を振り払うように、リアムは呟いた。


「――もう、殺すためには使わない。」


声は風に溶けて消えた。

だがその決意は、心の奥に深く刻まれた。



数メートル離れた木陰で、ひとりの男が腕を組んでいた。

レオンだ。

いつから見ていたのか、気配を消していた。


「…坊、根性だけは一人前だな。」

呟きながらも、その声には笑みがあった。


リアムが何度目かに転んだあと、立ち上がる姿を見て、レオンは小さく頷いた。


「――倒れるたびに立つ。それができる奴は、いずれちゃんと“守れる側”になる。」


そう言って、静かにその場を離れる。

足音を立てずに。

あたかも、最初からそこにいなかったかのように。



夜が明け始めたころ。

リアムは汗で髪を濡らしながら、空を見上げた。東の空が、かすかに金色に染まり始めている。


「…今日も立てた。」

 かすかな笑みがこぼれる。

 両手は小さく震えていたが、足はしっかりと地を掴んでいた。


その光景を、屋敷の窓の陰からセレナは見ていた。

夜明け前にふと目を覚まし、外の気配に気づいて窓を開けたのだ。


庭に立つ少年の姿を見つめながら、

彼女は胸の奥に小さな温もりを覚えた。


「…あなたは、ほんとうに努力する人ね。」

そう呟いて、静かにカーテンを閉じる。



朝の光が差し込む。

リアムはふらつきながらも歩き出した。

今日もまた、剣を握り、礼を学ぶために。


――そのすべてが、守るための力になると信じて。

リアム寝てんのかよって思いますよね。あんま寝てないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ