正式名称はEjaculate Overload Syndrome
西暦2200年。
地球の人口は、かつての70億からおよそ35億にまで減少していた。
戦争や環境破壊の影響もあったが、最も深刻な原因は、ある奇病の蔓延だった。
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そんな時代のとある病院でのお話
◇ 西暦2200年──静かに半減した世界
西暦2200年。地球の人口は、かつての70億から35億へと落ち込んだ。
戦争でも、環境崩壊でもない。世界を蝕んだのは、ひとつの疾患だった。
その名は過負荷性生殖系疾患──E.O.S.。
男性だけが罹患する謎の病。
発症すれば、体内の“生殖機構”が暴走し、命の維持より排出機能が優先されてしまう。
結果、体力と臓器に過剰な負担がかかり、数日以内に多臓器不全に至る。
人々はその最終段階を、恐怖と祈りを込めて**「破裂」**と呼んだ。
◇ 原因と歴史
原初のルーツは、21世紀初頭に流行した新型感染症。
数百年の変異と宿主適応の果て、“男性の生殖制御系”に作用するウイルスへと変貌した。
国境は関係なく、富も権力も救わなかった。
ただ静かに、しかし確実に、世界の“半分”を奪う病。
◇ 病態
E.O.S.は神経系と内分泌系に異常を引き起こす。
特に下腹部神経束と生殖関連の自律制御回路が過敏化し、
過剰な“排出信号”が連続的に発生する。
・本能による反応ではない
・意思の制御は効かない
・羞恥も苦痛も理解したまま進行する
屈辱と恐怖の中で意識が保たれる──それが残酷だった。
◇ 病期ステージ(医療分類)
ステージ症状状態
Stage1軽度の過活動1日数回の自然排出で抑制可能。私生活維持可能。
Stage2自力制御困難医療介入(ジェル処置)必要。発作間隔が短縮。
Stage3常時危険領域発作が頻発。持続的ケアと管理が必要。
Stage4臨界破裂状態臓器圧限界。延命困難。安楽死選択例あり。
※上記は“医学的に必要な説明”であり、性的な意味合いは一切持たない。
◇ 唯一の延命手段:「ジェル処置」
治療法はまだない。だが唯一、進行を遅らせる手段が存在する。
それが特殊ジェル薬剤による外部介入処置。
・神経過敏を抑える
・生殖系内部の圧力を調整
・安全に排出路を確保
・破裂の回避
誤れば血圧急変・心停止の危険があるため、
扱えるのは国家資格**「ジェル資格」**保有者のみ。
取得率は看護師の1%未満。つまり──百人に一人。
彼らは人々から**“命の境界線に立つ者”**と呼ばれる。
◇ 世界が求めたのは「優しい救命者」
E.O.S.患者の多くは羞恥と恐怖の中にある。
だからこそ、処置者は技術だけでなく尊厳を守る心が求められた。
「恥ずかしくないですよ」 「大丈夫、ここにいますからね」
その一言が、命をつなぐ薬より強かった。
《E.O.S.対策国際医療協議会声明》
本作品における疾患「E.O.S.(過負荷性生殖系疾患)」は、
架空の病態であり、実在の疾患・病者・団体とは一切関係ありません。
本設定は、医療倫理・患者尊厳・救命技術を主題とするものであり、
作品内における症状描写および処置描写はすべて
医学的・生理学的視点に基づくフィクションです。
本作は、いかなる性的描写・目的を持たず、
医療に携わる者の精神、患者が抱く羞恥と恐怖、
そして「生きたい」という意志の尊重を中心に構成されています。
読者各位におかれましては、
本作を医療ヒューマンドラマ・生命倫理物語として
ご理解いただきますようお願い申し上げます。
E.O.S.対策国際医療協議会
倫理審査部/広報室
(架空設定)




