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みののくに!  作者: ユキハ
23/23

明智の双影

 私が出て行く前まであった、落ち着いた空気はどこへやら、二人の亡霊が仰々しい空気を病室内に漂わせ、瀧葉さんの前で膝を付く。


 「若、お久しゅうございます」


 年老いた白髪の亡霊が、瀧葉さんを敬うようにして言葉を述べると、その亡霊の言葉を聞いた瀧葉さんが、


 「爺も相変わらずで、安心したわ」


 嬉しそうに微笑んでそう返すも、その後すぐに、


 「でも、私はてっきり爺に恨まれていると思っていたから、こんなふうにまた、敬意を払われるなんて思わなかったわ」


 白髪の亡霊の態度に、瀧葉さんは意外そうな顔をしていたが、瀧葉さんの言葉を聞いた白髪の亡霊は、それに対して快活に笑う。


 「はっはっは、恨むなんてとんでもない。若との戦に負けたのは、すべて私の力不足が原因。ましてや死してなお、敗れた相手を怨むなんて、そんな女々しい真似はしませんぞ」

 「ふふっ・・・・・そう言ってくれると、私としても助かるわ」


 ・・・・・・なんか、私達が入り込める雰囲気じゃないんだけど。

 瀧葉さんと白髪の亡霊との間には、どこかしんみりとした空気が流れ、事情を知らない私はもちろん。ロリっ子も気まずそうにして二人を見守っている。

 

 ・・・・・・なんでこんな状況になったのか、しんみりした空気が流れる中、私もロリっ子と同じように二人を見守りながら、つい数十分前のことを思い出す。






 「天才科学者?」

 「ええ」


 明智ひかりと名乗った目の前の少女は、自分のことを天才科学者と言い切った。

 あれ?もしかして、相当痛い子なのでは・・・・・?

 恥ずかしげもなく、堂々と自分のことを天才だと言った彼女は、


 「私の頭脳にかかれば、どんな不可能なことだって可能にできるわ」


 自分の頭を人差し指で差し、誇らしげにそんなことを言っているけど、そんな痛い子に対してどう反応したらいいのか、ロリっ子は茫然と彼女を見て、私も呆れるというより、彼女の痛々しさに憐れみを感じてしまう。


 「・・・・・いや、誰もそんなこと聞いてないんだけど」


 私がそう返すも、彼女は話しが通じないのか、


 「あら?その無関心な姿勢は良くないわね。もっと視野を広く持たないと」


 なぜか、そんなことを偉そうに言ってくる。


 「無関心というか、聞いてもいないこと言われても、こっちとしては困るっていう話し」

 「困る?・・・・・・まあ、しょうがないか。凡人では私の考えに追いつけないものね」


 コイツ・・・・・ッ‼

 自分を天才だと思い込んでるせいで性格も鬱陶しいし、やれやれといった表情で私を見てくるから余計に腹が立つ。

 

 太々しい彼女の顔を見て、一瞬、自分の拳を握りかけたが、


 「うぅ・・・・・そんなことよりひかり殿ー、早く私を解放するように言ってくだされぇ」


 私達の横から、今にも泣き出しそうな、弱々しい男の声が聞こえ、その声が私の怒りを霧散させる・・・・・・

 声がしたほうを見てみると、ロリっ子の力によって拘束されていた亡霊が、涙目になりながら、なにかを訴えかけるような目でこちらを見ていた。

 

 ・・・・・・ああ、そう言えば、すっかり忘れていた。

 目の前の生意気な少女のインパクトが、あまりにも大きかったせいで、亡霊の存在自体を忘れてしまっていた。

 すると、そんな拘束された亡霊の姿を見て、もう一人の白髪の亡霊が、


 「・・・・はあー、情けない」


 ため息を吐いてそう言うと、ロリっ子に向かって、


 「土岐家のお嬢さんよ、そこの愚甥を解放してやってくれぬか?」


 どこか申し訳なさそうに、ロリっ子に拘束を解くよう願い出たけど、そう言われたロリっ子は、


 「え?・・・・・・でも」


 拘束を解いていいのか、自分で判断がつかなかったみたいで、ちらりと私に視線を送ってくる。


 「・・・・・べつに、こちらに敵対するつもりはないんでしょ?」


 私が白髪の亡霊に聞くと、


 「無論だ。あの子はわからぬが、儂達にそんな意思は毛頭ない」


 白髪の亡霊は少女に目を向けつつ、敵対する意思はないと言った後、


 「それに、この体ではなにもできぬよ」


 自分の体を見ながら苦笑する。

 ・・・・・まあ、それもそうか。

 あまりにも姿がはっきり見えているから、つい忘れてしまうけど、この亡霊達も道三と同じで、実体のない霊だった。

 物には触れられないし、少女が仮に敵対するようなことがあっても、この亡霊達がなにかできるってこともないか・・・・・・

 そのことを思い出し、

 

 「・・・・・解放してあげて」


 私は拘束を解くよう、ロリっ子にお願いする。


 「う、うん。わかった・・・・・」


 ロリっ子は少し戸惑いながらも、なにやら呪文のような言葉を口にすると、その呪文を言い終えたと同時に、亡霊を縛っていたお札のようなものがはじけ飛ぶ。


 「おおっ‼自由に動ける」


 拘束が解かれ、嬉しそうに体を動かす亡霊。

 そんな亡霊に対し、白髪の亡霊は呆れながらも


 「まったく、いつまでも世話の焼ける奴じゃ・・・・・・・光秀よ。喜ぶ前に殿への謁見を済ませるほうが先決じゃ」

 「おお、そうでした」


 拘束から解放された亡霊に声をかけ、光秀と呼ばれた亡霊もそれに答えると、二人は道三のもとへと向かって行く。

 そして、道三の前に立った二人だったけど、当の道三はというと・・・・・・いつまで拗ねているのか、さっきから不貞腐れたように文句を吐き続けていて、話しかけづらい雰囲気を出していたが、そんな道三に構うことなく、二人の亡霊は道三の前で片膝を付き、恭しく言葉を述べ始める。


 「殿。この明智光安、殿を最後まで守り通すことができなかった上、殿へのお目通りが遅れたこと、お許しくだされ」


 明智光安と名乗った白髪の亡霊が、道三に謝罪をするように頭を下げると、それに続いて、


 「殿。殿の一大事に駆けつけることが間に合わず、主君であるあなた様に尽力できなかったこと、この明智光秀、一生の不覚であります」


 拘束していた亡霊、明智光秀が悔しそうな表情で、道三に謝罪の言葉を口にした。


 「おおっ!光安に光秀か、久しいな」

 「はっ!お恥ずかしながら、甥の光秀とともに、現世へと舞い戻って参りました」


 二人の謝罪で道三は機嫌が直ったのか、さっきまで拗ねていたのが嘘かのように、嬉しそうな顔で二人を見て、


 「光安よ、もう気にするでない。お主が裏切らず最後までワシに忠義を果たしてくれただけで十分じゃ・・・・・・」


 そう光安に声をかけた後、今度は光秀に向かい、


 「光秀も過去の失態をいつまでも引きずるな。ワシの最後の戦はほぼ負け戦であったし、ワシのせいで起こった戦だからな。そんな戦に未来あるお主が巻き込まれる必要はない」


 なにやら偉そうに、耳障りの良いことを言っているけど、道三の言葉を聞いた二人の亡霊は、


 「「ありがたきお言葉」」


 忠誠心あふれる感謝の言葉とともに、深々と頭を下げていた。

 

 ・・・・・・そうだった。斎藤道三って、あんなんでも一国の殿様だったわね。

 最近会った稲葉一鉄の態度がおかしかっただけで、本来ならああやって、敬われるような存在だったってことを、二人を見て思い出した・・・・・・

 

 うーん、それにしても、


 「あれが明智光秀ねぇ・・・・・」


 遠目で道三達を眺めながら、私は思わず、そんなことを口にしてしまう。

 白髪の亡霊の明智光安は、言い方はあれだけど、そこまで有名な人物じゃない。

 一方で、その甥にあたる明智光秀は、歴史の教科書で誰もが一度は目にするほど、とても有名な武将で、もしかしたら道三よりも知名度があるかもしれない。

 主君であった織田信長を討ち取り、下剋上を果たした本能寺の変は、歴史的な大事件として、今も教科書に大きく載るほど、後世に語り継がれているんだけど・・・・・・・

 

 明智光秀って、もっと威厳があって、勇ましいって感じの武将をイメージしていたんだけど、なんか、思っていたのと全然違う・・・・・・・


 さっきまで半べそをかいて、少女に助けを求める姿が、私の中にあった明智光秀のイメージとかけ離れすぎて、あれって、本当に明智光秀なの?そう思えてしょうがない。

 想像とのギャップが激しい光秀に、私が困惑していると、隣にいたロリっ子が、


 「でも、よくわかったね。私達の近くに彼女・・・・・というか、光秀の霊がいたなんて。私だって気付かなかったのに」


 ふいに、そんなことを聞いてきた。


 「・・・・・ああ、私だって気付いていなかったわよ」


 近くに光秀が潜んでいたことに自分が気付けず、私がそれに気付いたってことに、ロリっ子は少し悔しさを見せていたけど、道三が気配がしたって言うまでは、私だって気付いていなかった。


 「最初に道三が気配を感じたって言った時は、とくには気にしていなかったんだけど、病室でまた気配を感じたって言うもんだから、勘違いで済ますには不気味だし、私もその気配について考えていたら、あなたに言われたことを思い出したのよ」

 「私が言った?」


 ロリっ子は首を傾げているけど、ちゃんとヒントになることを言っていた。


 「病院の屋上で、霊を降ろした人間は私と凛一さん以外、まだ見つかってないって言ったでしょ?」

 「うん」

 「その時に聞いた、霊の居場所は特定できているのに、あなたから逃げ回っている人がいるって話しを思い出して、もしかしたらって思ったのよ」

 「うーん・・・・・・・・?」


 私の説明が悪いのか、それともロリっ子の理解力が足りないのか、ロリっ子は難しい顔をして、頭から煙を噴いている。

 ・・・・・・・これは頭から煙を出すほど、難しい話しじゃないと思うんだけど。


 「普通、霊の居場所を特定できているんだったら、優位なのはあなたのほうなのに、それが近付こうとしたら逃げられるっていうのは、どう考えてもおかしいでしょ?」


 本当ならロリっ子の力で、もっと簡単に彼女達を見つけれていたはずなのに、それができなかったということは、


 「明らかにこちらの動きを把握してるとしか思えない・・・・・・・・それこそ私達の近くに誰かを潜ませて、行動を見張っておかない限り、そんな都合よく逃げられるなんてことはまずありえないんじゃない?」


 光秀を見ながら私が言うと、ロリっ子もここでようやく理解したのか、


 「・・・・・ああ、なるほどね」


 謎が解けてすっきりしたような顔で、ロリっ子は納得すると、


 「だから私や瀧葉に、霊を操ることができるのかって聞いたのね」


 病室で私が瀧葉さんとロリっ子に聞いた「霊を操ることができるのか?」という、質問の意味もそこで理解し、ロリっ子は感心したように私を見てくる。


 「まあ、私も、もしかしたらっていう程度で考えていたから、まさか本当に、こんな近くで見張られていたなんて思わなかったけどね」


 実際、私も半信半疑だったから、こんなにもうまく、光秀や少女達を見つけられたのは、むしろラッキーだったのかもしれない。

 すると、私達の会話を盗み聞ぎしていたのか、


 「ふーん、なるほどね。絶対にバレないと思っていたのに、避け続けていたのが逆に仇になったのね」


 少女が私達の間に割って入り、納得したように言うと、


 「そんな少ない情報で、ここまでたどり着けるなんて・・・・・あなたもなかなかやるわね」

 「・・・・・・それはどうも」


 なぜか上から目線で、馴れ馴れしく接してきた彼女は、ながらの里について触れてきた。


 「もしかしてだけど、ながらの里のやつも、あなたがやったの?」


 今もニュースで大々的に報道しているから、内容については彼女が知っていても不思議ではないんだけど、素直に私がやったなんて認めたら、彼女がどういう行動を取ってくるかわからない。


 「・・・・・・・なんのこと?」

 

 とりあえず、私は知らないふりをしてみたけど、


 「ごまかさなくてもいいわよ。それだけ頭の回転が早いんだから、あなたがやっていても不思議じゃないし、それに、電波を妨害される前までは、あなた達の会話もちゃんと聞いていたんだから、大体のことは把握しているわよ」


 そうだった。病室で話していたことも聞かれているんなら、とぼける意味もまったくなかった・・・・・・ってか、わかっていたんなら、一々私に聞かなくてもよかったんじゃない!


 彼女のペースに乱されそうになったけど、そのペースに飲まれまいと、


 「私なんかのことより、あなたがどんな方法で亡霊を使って、私達を監視させていたのか、そっちのほうがよっぽど気になるわね」


 光秀という亡霊を使って、どんな方法で私達を見ていたのか、それが一番気にっていた私は、彼女に聞いてみたけど、


 「うーん、べつに教えてもいいんだけど、ここで話すってのは微妙かも」


 少女は周囲を見渡しながら言う。

 

 ・・・・・まあ確かに、こんな外で、しかも人の目がある場所で話す内容ではないか。

 彼女の言うことに賛同するのは癪だけど、私もここで話しを続けるのは微妙だなって思っていると、少女は要領を得ないような言葉を口にする。


 「それに、同じ説明を二回することになるかもしれないってのは、効率的じゃないし」

 「どういうこと?」


 私が聞き返すと、


 「ほら、あなた達のところにまだ私が会っていない人がいるでしょ?話しはその人と会ってからにしたほうが、手間も省けるんじゃない?」


 少女はそう言いながら、にこっと笑う。






 そして現在、彼女の要望通り、まだ会っていないって言っていた瀧葉さんに会わせるため、彼女を連れて病室まで来たはいいんだけど、光安と光秀が瀧葉さんと話している中、会おうと提案した少女は、我関せずといった様子で、病室内をなにやら物色している。


 「あなたの希望通り、せっかく瀧葉さんのところまで案内したのに、当の本人は興味がないみたいね」

 「そんなことないわよ。彼女には興味があるけど、久しぶりの再会を邪魔しても悪いじゃない」


 私が言っても、彼女は物色している手を止めることもせず、それらしいことを言って、興味がある素振りだけを見せる。

 すると、そんな少女に瀧葉さんのほうから声をかけた。


 「そんな気を使わなくていいわよ。私もあなたに聞きたいことがあったもの」


 瀧葉さんの言葉に、少女は物色していた手をピタッと止め、


 「へぇー、それはなんです?」


 振り返りながら瀧葉さんに聞き返すと、瀧葉さんは、前にこの病室であった出来事について話し出す。


 「以前、就寝中に、この部屋に何者かが忍び込んできたことがあってね。私はてっきり、竹中夜半の手の者か、蛇龍会の刺客かなって思っていたんだけど、こちらに手を出してくる気配が一切なかったし、他になにか荒されたっていう形跡もなかったから、その時はあまり気にしていなかったのよね」


 この瀧葉さんの話しは、ロリっ子も知らなかったのか、少し驚いた後、心配そうに瀧葉さんを見ていたけど、当の本人である瀧葉さんはというと、何事もなかったかのように話しを続ける。


 「夜中だったから暗くて顔も見えなかったし、私の様子を見に来た看護師っていう可能性もあったんだけど・・・・・・」


 瀧葉さんはそこで言葉を区切り、少女に視線を向けると、

 

 「もしかして、その時に忍び込んできたのって、あなただったかしら?」


 その瀧葉さんの問いかけに対し、図星だったのか、少女は黙り込む。

 しかし、沈黙していたのは数秒ほどで、


 「・・・・・・へぇー、気付いていたんだ」


 あっさりと、ここに侵入したことを自白する少女に、私は呆れてしまう。

 盗聴に盗撮に、さらには不法侵入って・・・・・・やりたい放題ね。

 倫理観のかけらもない彼女だったが、不法侵入された瀧葉さんは、


 「夜襲をするなら、もっと気配を絶たないとだめよ」


 怒るどころか、侵入する際のアドバイスまで少女に送っていて、瀧葉さんの寛容さというか、気にしていない様子に、私は自分の度量が小さいのかと錯覚してしまう。

 

 私だったら、寝ているところを襲われるって、普通に嫌なんだけど・・・・・・

 

 戦乱の時代を生きていたからなのか、べつに大したことがないように言う瀧葉さんに、改めて感覚が違うなーっと、私は感じながら、


 「というか、ここに忍び込んだりもしていたのね」


 ここに侵入したことを少女に聞いてみると、


 「本当は盗聴器を仕掛けようとしたんだけど、この部屋はなにもなさ過ぎるから、変に物を置いてバレても嫌だったから、部屋の様子だけを見て、そのままなにもせずに帰ったのよ」


 悪びれた様子もなく。ってか、そもそも悪いことをしているという認識がないのか、少女は平然とそんなことを口にしていたけど、盗聴器を仕掛けようとしたってとこに、私は疑問が浮かぶ。


 「盗聴器?でも、霊を使って私達の動きを見ていたんだから、わざわざ盗聴器なんて仕掛けなくてもよかったんじゃない?」


 侵入して見つかる可能性だってあるし、どうやってやっているのかは知らないけど、光秀を使って私達を見ていたんなら、そもそも盗聴器を仕掛ける必要もない。

 そう私は思っていたけど、私の問いかけに彼女は首を横に振る。


 「私が発明した機械もまだまだ改良する余地があってね。時たまノイズが入ったりして不便だったのよ」


 少女はやれやれと言って、肩を竦めていたけど、


 「機械?それを使って私達を見ていたの?」

 「まあ、そんなところね」


 てっきり、霊の力とかいった、そんなオカルト的なもので盗み聞きをしていたのかと思っていたけど、オカルトとはまったく正反対の、機械なんていう科学的なものを使っていたことに、私は少し驚く。

 すると、会話を横で聞いていた瀧葉さんが、


 「その機械については私も知りたいわね。よかったら、詳しい話しを聞かせてもらえないかしら?」


 興味があったのか、前のめりになって少女にお願いすると、ロリっ子も気になって仕方がないようで、うんうんと首を縦に振っている。


 まあ、霊を降ろした本人からすると、どうやってやっているのか気になるか・・・・・

 病室にいる全員が、少女に視線を集める中、


 「・・・・・うーん、べつに教えてもいいんだけど、タダで教えるってのもねぇ」


 少女はまた、めんどくさいことを言い始める。


 「さっきは普通に教えるって言っていたじゃない」

 「そうなんだけどさ、少し気が変わってね」


 私が問いただすも、少女は平然とした態度で、そんなふざけたことを言ってのける。


 説明するって言ったから、瀧葉さんがいる病室まで来たというのに・・・・・

 気分だけでこちらを振り回してくる少女に、私は腹が立ったが、瀧葉さんはそんな少女に対しても、

 

 「なにをしたら教えてくれるの?」


 変わらぬ笑顔で聞き返すと、少女はその言葉を待ってましたと言わんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべ、


 「いやー、あなたは話しが早くて助かるね」


 なんか、遠回しに私の話しが遅いって言われているような気がしたけど、少女は構わず、


 「途中で妨害されて最後まで話しは聞けなかったんだけど、さっきのあなた達の会話の中で、蛇龍会が動くかもって話しをしてたでしょ?」


 少女達の存在に気付く前、この病室で話していた蛇龍会について、少女は瀧葉さんに尋ねる。


 「ええ、そうね。まず間違いなく、なにかしらの動きを見せると思うわね」


 瀧葉さんがそう答えると、


 「でしょうでね。ながらの里のニュースは、市役所にもダメージを与えたけど、それ以上にダメージを負ったのは、子供達を斡旋していた蛇龍会のほうだからね」


 少女も蛇龍会が確実に動いてくると思っているようで、瀧葉さんの意見に同意を見せる。

 だけど、ながらの里の内情を、まるですぐそばで見ていたかのように言う彼女に、


 「ずいぶんと詳しいのね」


 私がそう聞くと、私の顔を見ながら、


 「タイミングがなかっただけで、私もあなたと同じことを考えていたからね」


 またニヤリとした笑みを浮かべ、少女は言う。

 

 ・・・・・・・なるほどね。私と同じように、ながらの里については調べていたってことか。

 少女のその言葉を聞いて「だったら自分でやらずに、この子にやらせておけばよかった」そんな考えが頭を過ったけど、瀧葉さんの言葉が、私を現実に引き戻す。


 「でも、その話しなら、蛇龍会に出くわしたらすぐ逃げるってことで、話しはまとまったかな。現状、対抗する手段もないしね」


 蛇龍会については関わらない。

 病室で瀧葉さんと出した結論がこれしかなかったし、瀧葉さんの言う通り、争うとかいう以前に、対策すら練ることができていなのが現状で、そのことは彼女もわかっていたのか、


 「まあ、普通ならそうしたほうが賢明よねぇ」


 逃げるということには、彼女も頷いてはいたんだけど、その後すぐに、


 「でも、これはあなた達にも利がある話しなんじゃないかな」


 なにか策があるのか、少女は含みを持たせたような言い方をするけど、そのもったいぶった言い方に、


 「それはなに?」


 イラっとした私が聞き返すと、少女はとんでもないことを言い出す。


 「蛇龍会を潰す」


 少女のその発言で、病室内は一瞬にして静まり返る。

 しかし、そんな静けさを気にすることなく、


 「それに協力してくれるなら、私の発明についても教えてあげるよ」


 幼い顔に似合わない、不敵な笑みを少女は浮かべ、私達にそんな提案を持ちかけてきたのだった。

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