表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みののくに!  作者: ユキハ
19/23

つかの間の休息

 凛一さんと別れてから私は、ロリっ子を連れ、自宅へと帰ってきていた。

 

 私からしたら見慣れた日本家屋。

 良く言えば趣がある。悪く言えばただ古いだけの家・・・・・・・・なんだけど、ロリっ子からしたら珍しいものなのか、キョロキョロと家を眺めている。

 

 私はそんなロリっ子をほっといて、玄関のほうに向かう。


 「ただいまー」


 ガラガラガラっと引き戸の玄関を開け、私が家の中に入ると、その私の後ろを、小動物のように付いてきたロリっ子が、


 「お、お邪魔します」


 緊張した様子で、私に続いて家の中に入る。


 夕日が沈み、室内は暗く、静けさも相まって、日本家屋特有の不気味さが醸し出された家の中。

 その雰囲気に、ロリっ子は呑まれていたが、次の瞬間、


 「おかえり」

 「ひぃ!」


 誰もいないと思っていた暗闇から、突如、そんな声が聞こえたもんだから、ロリっ子は驚き飛び上がり、私にしがみついてきた。

 

 ・・・・・いやいや、亡霊とかいう、もっとヤバいものと関わっているのに、こんなのでびびるなよ。

 そんなロリっ子に私は呆れながら、声がした暗闇に声をかける。


 「・・・・ばあちゃん、その出迎え方やめたほうがいいよ」


 私がそう言うと、暗いところからひょっこりと、一人の人物が現れる。


 「ほっほっほ、普通に現れても、おもしろくないだろ?」


 そんなふうに笑いながら出てきたのは、私のばあちゃん。

 肉親ではあるんだけど、私と違って、こういうふうに人を驚かせたりして、陽気な一面を見せてくる。


 ばあちゃんは、ひとしきり笑い終えた後、


 「それで、その子が今日から預かる子かい?」


 そう言いながら、ロリっ子を見る。


 「ひ、姫花です。今日からお世話になります」


 緊張しながら、ロリっ子が名乗り出ると、ばあちゃんはロリっ子の顔をじっと見つめる。


 「え?」


 その、開いてるか開いていないかわからない、ばあちゃんの細い目で見つめられたロリっ子は、どう反応すればいいのかわからなくて、少し困った表情を浮かべていたけど、すぐに、


 「ほっほっほ、そんな緊張せんでも、自分の家だと思って過ごしてくれればええよ」


 ばあちゃんはそう笑って、台所がある、家の奥へと入っていった。

 そんなばあちゃんの後ろ姿を見ながら、


 「・・・・か、歓迎してくれているんだよね?」

 「おそらくね」


 ロリっ子が不安そうに聞いてきたので、私は適当に返しつつ、靴を脱いで、家の中に入る。

 すると、ばあちゃんが台所から顔をひょっこりと出し、


 「ご飯を用意しておるから、先に、その子を居間に案内してくれるかい?」


 ロリっ子を居間に案内するよう言われ、慌てて靴を脱いで、玄関を上がるロリっ子を連れ、私は居間へと向かう・・・・・・・が、居間に入った途端、私は絶句する。


 私の目の前には、普段見ない、食事の数々。

 縁起物の鯛や、大トロっぽい刺身。さらには伊勢海老と、豪華な海の幸・・・・・って、あれってもしかして松茸?


 とにかく、居間にあるちゃぶ台に、豪華な料理が所狭しと並べられ、私はともかく、お嬢様育ちっぽいロリっ子も、驚いた様子でそれを見ている。

 

 目の前の光景に、私とロリっ子が立ち尽くしていると、ばあちゃんが後ろから、


 「ほっほっほ、そんなところで突っ立とらんで、座んなさい」


 また新しい食事を持って、それをまた追加する。


 いや、そんなに食べられないから・・・・・

 そう思いながらも、


 「ばあちゃん・・・・・いくら使ったの?」


 私がばあちゃんに聞くと、ばあちゃんは笑いながら言う。


 「ほっほっほ、こういった時に使わんと、無駄にお金が溜まっていくだけじゃよ」

 「いやそれ、私のお金なんだけど・・・・・」

 「ほっほっほ、いい孫持って、私も幸せもんじゃな」

 

 ここに住まわせもらっているから、生活費は私が払うよ。

 ・・・・・と、そんなカッコを付けた自分を殴りたい。

 

 普段は節約しているのに、こういった時に限って張り切るばあちゃん。

 一体、いくら使ったのか・・・・・・

 そんな現実に向き合いたくなかった私は、使ってしまったのは仕方がない。そう自分を思い込ませ、豪華な食事が並ぶ、ちゃぶ台の前に座ると、


 「ほら、姫花ちゃんも、そんなところにいつまでも立っておらんで、こっちに来て座んなさい」


 ばあちゃんが、ロリっ子に声を掛ける。


 「は、はい!」


 ロリっ子はまだ緊張が取れないのか、私の横にそそくさと座り、ばあちゃんはロリっ子が座ったのを見てから、


 「それじゃあ、いただきます」


 手を合わせながら言うと、


 「い、いただきます」


 ロリっ子もばあちゃんに倣って、手を合わせた後、躊躇いつつも、出された料理を一口食べると、

 

 「おいしい・・・・・」


 思わずといった様子で、ロリっ子がぽつりと呟き、それを聞いたばあちゃんが、


 「姫花ちゃんは良い子だね。奈三なんて、なにを食べてもなにも言わないんじゃから」


 満足そうな顔を浮かべた後、まるで当てつけかのように、私にそんなことを言ってくる。


 「そんなこと、今言わなくてもいいでしょ」


 私がそう言い返すも、ばあちゃんは笑って相手にしてくれず、私達の様子を、ロリっ子は困ったような表情で見る。

 そんな、なんとも言えない空気の中、食事を続けていると、急に私のスマホが震え出す。

 私はスマホを取り出し、画面を見てみると、人感センサーがなにかに反応したことを知らせる、一通のメールがが来ていた。

 私はそれを見て、


 「・・・・・ちょっと、出かけてくる」


 おもむろに立ち上がり、ばあちゃんにそう言うと、ばあちゃんではなく、ロリっ子が「え?」というような表情を浮かべるが、私はロリっ子にはなにも言わず、


 「ばあちゃん、その子をお願いね」


 ばあちゃんにロリっ子を託すと、


 「・・・・・気を付けて、行ってくるんだよ」


 私を止めはしなかったけど、ばあちゃんの勘なのか、味噌汁をすすり終えた後、ばあちゃんはまるで、私がこれからやることを知っているかのような口振りで、静かにそう告げる。


 はあー・・・・まったく、心配をされたくないからなにも言わず、出て行こうとしたのに・・・・・

 そんなやりにくさを感じつつ、ロリっ子をばあちゃんに任せ、私は一人、暗闇に包まれる外に出た。




 奈三が突然家から出ていき、取り残された姫花は、不安そうに奈三が出ていった玄関を見つめる。

 出かけた理由について、なにも聞いていない姫花だったが、出かける際に見た、奈三の後ろ姿。その後ろ姿を見て、ふと、過去の嫌な記憶を思い起こす・・・・・

 

 自分を守るために身を挺した、父と母の姿。その姿と、奈三の後ろ姿、違うはずなのに、なぜかその二つの姿が重なる・・・・・・・

 そんな、言い知れぬ不安を覚える姫花の背中に、奈三の祖母である、斎藤志乃【さいとう しの】が声をかける。


 「心配せんでもええよ。それより、まだ作ってあるから、いっぱいお食べ」


 自分の孫である奈三を、一切心配していない様子の志乃に、


 「え?でも・・・・・」


 姫花が不安そうな声を漏らすも、志乃は「安心してええよ」と、姫花に言い、


 「あの子はああ見えて、ちゃんと強い」


 不敵な笑みを浮かべ、志乃は言う。

 

 その志乃の言葉の意味を、姫花は理解できなかったが、なぜか、志乃の言葉には心強さを感じ、抱いていた不安が、いつの間にか薄らいでいるのを、姫花は確かに感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ