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ドリフトシンドローム~魔法少女は世界をはみ出す~【第二部】  作者: 音無やんぐ
第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
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第43話 敵首魁、根来親通 その一

「さすがさすが。音に聞くチーム白音の諸君だ。部下に欲しいな」


 チーム白音と初めて対面した根来親通(ねくるちかみち)は、余裕を口の端に乗せて薄笑いを浮かべていた。

 その顔を見ていると、白音は改めて沸々と怒りがわき上がるのを感じる。


 今すぐ黙らせたい衝動に駆られたが、それは自重する。

 そらは可能ならば対話を試みるべきだと考えていた。

 白音もそらと考えは同じだ。

 時間が無いと感じられる反面、会話が成立するのならば可能な限り情報を引き出しておかなければならない。



[やっぱり親通は星石を持ってるみたい。予想どおり親通がコピー能力]


 そらが遠隔鑑定(リレーアタック)の結果を伝えてくれる。


[莉美ちゃん、巫女の方よろしくなの]


 そらがそう言った瞬間、莉美が魔力ビームを放つ。

 細く収束されて、狙い過たず狐面の巫女――感知系魔法使い――の星石を貫く。

 巫女は声も無く倒れた。

 相変わらず巫女たちは防御を構うそぶりがまったくないため、なんの抵抗も感じない。


 のこるは親通ひとりとなったが、親通はいささかの痛痒も感じてはいないようだった。

 相変わらず薄笑いを浮かべている。

 白音は、付近にCase035(根来ミコ)と呼ばれた少女の姿がないことが気がかりだった。



「あなた、異世界になんか行ってどうしようっていうの?」

「んん?」


 親通が少し考えを巡らせたようだった。

 軍事大国アズニカ連邦と通じて密約し、海外逃亡を企てたところまでは政府当局に掴まれている情報として、親通も認識しているだろう。

 しかしその企みが潰えてから先の動向、異世界への転移脱出はそんなことが可能なのかどうかも含めて、推測の域を出てはいない。



「お前たちがそうであるように、異世界の技術は素晴らしく戦闘向きだからな。こちらの世界で売りさばけば大儲けできるだろう?」


 微妙に会話が噛み合っていない。

「こちらの世界に流入した異世界事案から技術を手に入れる」とも取れるし、「異世界に行って技術を入手してくる」とも受け取れる。

 わざわざ「お前たちがそうであるように」と付けているのは怒らせたいのだろう。

 白音は別にこんなおじさんと腹の探り合いをしたいとは、微塵も思っていない。

 しかしともあれ、挑発などされなくとも親通の企みは一片の余地もなく打ち砕く。



「根来衆ってのは時代劇とかに出てくる奴でしょ? おじさん戦国時代好きなんでしょ? だから行きたいんでしょ?」


 莉美が口を挟んで何を言うのかと思ったら、突然の暴論だった。

 確かに白音も『根来衆』と聞いた時には、日本史の教師が授業中に余談として語っていた戦国時代の話を思い出した。

 何となく忍者をイメージしたのは時代劇(それと佐々木咲沙)のせいかもしれない。



「日本がもうそんな時代じゃないから異世界に行くのね。異世界で時代劇を満喫したいんでしょ?」


 根来の性は勝手に名乗っている、とかではなく、正当な後継者だったはずだ。

 ごっこ遊びでもあるまいに。


「まさに時代錯誤もいいところなんだがな。根来衆が最も栄えたと言えるのは確かに戦国時代だろうな」

(ん?)


 話が噛み合い始めている、と白音は感じた。

 今確かに莉美の言葉を肯定した。

 異世界に行くということを否定しなかった。



「お前たちのようなガキじゃあ、家名を背負うということの意味も分からぬのだろうて……」

[うわぁ、おっさんの長そうな語りが始まっちまったよ]


 佳奈がそんなことをわざわざマインドリンクを使って言うから、白音は笑いそうになってしまった。

 この男は、信じられないほどに下劣だけれど、どこまで行っても普通のおじさんなのだ。



「世が乱れれば根来の名は上がる。しかしこんな平和な世の中では、国の太鼓持ち紛いのことをして生きていかねばならん。世が世ならばすべての大名が儂らに頭を下げに来たというのにだ」


 全員のイラッとした『気分』がマインドリンクで伝わってきた。


「確かに魔法技術を独占できれば世界中が頭を下げに来るかも知れないけど、もうギルドがあるわよ。それに、向こうへ行ってうまく魔法技術を手に入れられたとしても、帰って来られる保証はどこにもないわ」

「構わんさ。こっちの世界にはお前たちのおかげでもう居場所がない。帰れなければ向こうで上手くやるだけのことだ」



 親通との主要な取引相手となりそうな国には、外交ルートから圧力がかけられている。

 もしこの世界で上手くやりたければ、非友好国しか選択肢はないだろう。

 自由に動き回ることができなくなってしまったこの世界を捨てて、やはり親通本人が異世界へ向かうつもりなのだ。

 言質は取れた。もはや特に隠す気も無いのだろう。



[異世界で根来衆を一代で築く、とか思ってそうよね]


 一恵も親通の時代劇好きに一票を投じた。


[そういう意味ではコピー能力って、ほんとにあいつにおあつらえ向きの力なの。安価な労働力が簡単に手に入る]


 そらの嘆息が聞こえてくる。



[長引いてもろくなことはなさそうね]


と白音が言うと、


[うん。話の通じる相手じゃなさそうなの]


 そらが応じた。その言葉を合図に、隠行していた咲沙が背後から親通の強制移植された星石を貫いた。

 たとえ星石が完全に融合していなかったとしても、生身の人間にもその傷は十分な致命傷だ。


 魔力感知の巫女が倒されてから、親通には咲沙の隠行を見破るすべはなかった。

 その目にはチーム白音の五人しか見えていなかっただろう。

 もし彼が何か企んでいたとしても、白音たちの方はしっかりと彼の一挙手一投足を見張り、魔力の動きもそらが完全に把握していた。

 何かする隙は一切与えていない。



「口数が多すぎでござる」


 コピー能力以外はただのおじさんである。

 身体能力もいたって凡庸。

 人を使役してこそ真価が発揮される能力だろう。

 命令に忠実な部下が欲しいと常々言っていたらしいから、そういう能力になったのかも知れない。



「拙者、しのびの道を行く者でござれば、古き時代の根来衆の逸話もよく存じてござる。しかるに現在の頭領は、この体たらく……もはや救いの法なし、でござる」


 咲沙が動いたその瞬間、何かが起こるかも知れないと思っていた。

 だから白音たちは神経を研ぎ澄ませ、周囲を警戒した。


 そしてやはり、親通が事切れて力なく地面に倒れ伏すと、ゲートに変化が起こった。

 それまで鏡のように閑かだったゲートの表面が、やや輝きを強めて大きく波打ち始めた。

 白音たちの知る限りにおいてそれは、魔力を注ぎ込まれてどこかと繋がる時の転移ゲートの挙動だ。


「白音ちゃん、ごめんなさい。魔力が微弱だったから、異世界への転移ゲートとしてはまだ未完成なんだって思ってた。このゲート、異世界に通じてない。普通の転移ゲートだわ!!」



 一恵の使うゲートとは、やはり少し違った機序をもっているのだろう。

 個性的すぎる魔法少女たちの能力は、系統が近いからといって簡単に見極められるとは限らないのだ。


 ゲートから何か巨大な金属の塊が、ゆっくりと出てこようとしているのに気づいた。

 ややあって、魔法少女たちにはそれが『ミサイル』だと分かった。

 ニュースなどでよく見るフォルムだ。

 垂直に空を向いていて、胴部に極太のワイヤーが何本も巻かれているのが見て取れる。

 ただ、思っているよりは幾分背丈が短く、ずんぐりとしている印象だった。



「多段式のロケットが取り外されてるんだと思う」


 そらがみんなの抱いた気持ちに解説を与えてくれた。

 しかし取り外されているということは、発射する気は無いのだろうか。


 よく見れば、ぐるぐる巻きにされたワイヤーは乱雑に溶接されており、ミサイルの外郭を破壊せずにそれをほどくことは不可能に思える。

 ぎこちない動きでゆっくりと出てくるその寸詰まりのミサイルは、クレーンか何かで吊られているのだろう。時折不自然にこちら側へと揺れる。


 確かにこんな状態では、まともに打ち上げることなどできないように見える。

 しかし発射もできないのにチーム白音を前にして、このミサイルが何らかの意味を持つと思われているということだ。



「多分核弾頭が搭載されている」


 そらの言うとおり、そういうことだろう。

 こういう軍事機密は詳細がどの国でも明らかにされてはいないため、そらにとっても推測に依る部分が多くなっている。


 そらは遠隔鑑定(リレーアタック)で、ここにいる魔法少女たちのDNAが損傷と修復を激しく繰り返しているのを感じていた。

 実際に爆発する物なのかどうかは分からないが、少なくとも見た目は核弾頭そのもの。

 そして放射性核種を搭載しているのは間違いなさそうだった。

この中に、時代劇が好きな人が三人います!!

三人っ?!

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