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ドリフトシンドローム~魔法少女は世界をはみ出す~【第二部】  作者: 音無やんぐ
第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
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第42話 魔法少女上陸作戦 その一

 紀伊半島と淡路島の間にある、紀淡海峡を望む丘の上に作戦指揮所が設営されていた。

 急造したプレハブに電源、通信設備を敷いてPCが置かれただけ簡素なものだ。


 そらがデータを送ってくれるので、マインドリンク(精神連携)している魔法少女はここで常時生命徴候(バイタルサイン)のチェックを行える。

 星石との融合を果たしたそらもやはり、その能力が強化されているようだった。

 マインドリンクの性能が確実に向上している。


 またそらによると、白音から正帰還増幅強化(ハウリングリーパー)を得られれば、リンクした魔法少女の視覚情報をモニターに表示することも可能だろうとのことだった。

 つまり各魔法少女が見ている光景をここに映すことができるのだ。


 念のため、ということで莉美の魔力障壁(バリア)でプレハブ小屋の壁を補強しておく。

 ずっと紀淡海峡を抜けていく潮流が岩に当たって砕ける音が聞こえていたのだが、それがくぐもってほとんど聞こえなくなった


 さらにいつきが幻術で小屋を外から視認できなくしてしまう。

 一瞬で要塞として通用しそうな対爆、迷彩仕様の指揮所が完成した。

 どうやらいつきと一緒にいたちびそらがふたりに指示したものらしい。


 いつきたちエレメントスケイプも、もちろん魔法少女に変身している。

 彼女たちが勢揃いしている姿を見るのは、白音たちにとって久しぶりだ。


 風見詩緒(かざみしお)は白、水尾紗那(みずおさな)は青、火浦(ひうら)いつきは橙、土屋千咲(つちやちさき)は緑とシンボリックなパーソナルカラーを持つため、チーム白音と少し似た印象がある。

 実際、イメージがかぶっていると考えたエレスケたちがチーム白音をマークし始めたのが、ふたつのチームが出会うきっかけだった。


 ショービジネスでの成功を目指すエレスケのコスチュームは、そのままアイドルとしてステージに立ってもおかしくないようなデザインになっている。

 人目を引くよう計算された姿であると言えるだろう。



「お? お? ちびそらちゃん。なにやってんすか?」


 ちびそらがいつきのコスチュームの、大きなリボンに飾られた胸元に収まろうとしていた。

 その位置にいるのがいろいろ指示を出しやすいと判断したのだろう。

 しかし華奢ないつきは引っかかるところがなさ過ぎて、ちびそらが服の中に落ち込んでしまった。

 ワンピースになったミニスカートのため、そのまま地面へと産み落とされる。



「すとんと落ちた! すとんと!!」


 ちびそらがいつきを見上げて抗議している。


「あんまりすとんすとん言わないで欲しいっす。ちびそらちゃんも似たようなもんすよ?」


 そう言われてちびそらは、そらといつきの胸を見比べてやれやれという顔をする。


「あ、ちょっ! そういうつもりじゃ…………。ごめんっす、そらさん」

「ううん、気にしてない。今に見ておれ、なの」

「僕もそうっすよ。発展途上っす」



 ふたりが慰め合い気味にそう言っていると、莉美がずいとふたりに近づいた。


「これ使ってよ」


 そう言って差し出したのは少し大きめのスマホポシェットだった。

 ちびそらに入ってもらうために莉美が手作りで用意した物だ。


 実は一度、今回のようにちびそらが莉美の胸の谷間に挟まろうとしたことがある。

 その時は危うく圧死しそうになって断念しており、それでそんな物を作ってみたのだ。

 ついでに人形用の服をサイズ直しして、ちびそらの衣服もいくつか作って入れてある。

 サイズを測る時に試しに素っ裸にしてみたので、今の魔法少女の衣装がちびそらの体と一体化していないことは確認済みだ。



「あたし用のつもりだったから、色がどうかと思うんだけど」


 ポシェットは莉美の鮮やかな黄色のコスチュームに合わせて、山吹色をメインカラーにしたデザインになっている。

 いつきが試しに提げてみると、橙色のアイドルコスチュームとも相性は良いようだった。

 ある程度は動いても振り回されないように腰のところで固定できる仕様だが、さすがに戦闘などに巻き込まれるとちびそらが目を回すだろう。



「それじゃあ行ってくるっす!!」


 エレスケが乗り込むのは、沿岸警備隊の船を除けば最も排水量が大きい船だ。

 一見すると遠洋漁業用の漁船にしか見えないが、エンジンや装甲部分はかなり強化された作りになっている。

 自衛隊の将官が乗り込んで指揮を執る予定になっている船だ。

 パイプ役として外特の宮内もこれに同乗する。


 迷彩を施すためなら、いつきだけでもおそらくは事足りる。

 しかしフルメンバーで乗り込むということは、ギルド側の腹づもりとして人心の操作が想定に入っている。

 すなわち、不測の事態に自衛隊を相手にする可能性も考慮されているということだ。

 上陸部隊のような戦闘はないだろうが、それでも危険な役回りには違いない。

 そんな時、ちびそらが傍にいれば少しでも助けになるだろう。



 白音たちは配置についたところで先行しているくノ一、咲沙(ささ)と合流する手筈になっている。

 この島はほとんどが山林であり、また明治、大正時代の陸軍によって作られた施設の遺構がいたるところにある。

 そんな崩れかけた煉瓦造りの建物のひとつに、チーム白音は身を隠していた。



「はい、どうぞ」


 白音が誰もいない、何もない方向へ突然ゼリー状のエネルギー飲料を差し出した。


 白音は支給された野戦用装備品の他に、味を重視した携帯食も持ってきており、ブルームがくれたリュックの中に一緒に詰めてある。

 背負ったリュックは変身すると着ている服と共にどこかへ消えてしまうのだが、中身はちゃんと取り出すことができる。

 原理は空間魔法使いの一恵をもってしても謎なのだそうだ。

 白音は『乙女の秘密』だと思うことにしている。



「??」


 莉美が、白音にはいつから透明な友達ができたのかしらと少し心配に思っていると、本当に透明だったのか、突然そこに佐々木咲沙の姿がぼやっと現れた。


「!!」

「しっかり隠れていたのに、なんで分かったのでござる?」


 携帯食のパックを有り難く受け取って、飲みながら咲沙が尋ねる。



「入ってくる時に草が揺れたから」

「いい匂いがしたわ」

「地面の砂が動いたろ」

「リレーアタックが反応したの」

「き、気づいてたもん」


 五人からそれぞれな答えが返ってきた。


「拙者、自信なくしたでござる…………。相手がチーム白音なら今頃もう死んでるでござるな」


「まあまあ。これもあげるから、がんばろ?」


 咲沙の背に手を当て、莉美が魔力を送り込む。


「うはっ。飲み物よりこっちの方が効くでござるな。かたじけない」


 その間にそらが前に回り込んで胸を掴む。

 莉美と前後で挟み込むような格好になる。


「な、なんでござるかっ?! はう…………」

「うん。まだ死んでない。味方」



 さっきそらは遠隔鑑定(リレーアタック)で接近に気づいたと言っていた気がする。

 しかし咲沙がしのび装束で着やせして見える感じだったので、気になったのだろう。

 チーム白音では恒例の儀式と言える。諦めてもらう他あるまい。


 咲沙が白音と一緒に法貴病院に担ぎ込まれた際に、治療中の彼女の姿は皆見ている。

 だから白音以外は実はその中身までよく知っているはずではある。



「拙者の任は敵に気づかれることなく、チーム白音を山頂の建屋まで送り届けることでござる」


 咲沙の魔法を使えば、全員を周囲から認識できなくさせることが可能らしい。

 姿は見えなくなるし、発した音も感知できない。機械的なセンサーにも反応しない。


 リレーアタックのような、極微細な魔力を感知する物までは誤魔化せなかったようだが、すぐ近くにいても普通はその魔力も感知できない。

 ただ、隠蔽されているといっても対象が周囲に与えた影響までは消し去ることができない。

 だから先ほどのように周囲の物が動いたり、足跡がのこったりすれば気づかれる恐れはあるから、気を付けねばならない。

チーム白音は『くノ一』こと佐々木咲沙と共同作戦です。

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