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ドリフトシンドローム~魔法少女は世界をはみ出す~【第二部】  作者: 音無やんぐ
第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
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第35話 チーム白音VS逆巻姉妹 その二

 逆巻姉妹から情報を得るために彼女たちと戦うというチーム白音。

 蔵間はそんな彼女たちを何とかして止めようとする。



「待って待って待って。ほんと駄目だからね? 情報を得るために君たちをそんな危険な目に遭わせられないからね」

「勘違いすんなよ。アタシたちはあいつらに殺されかけてんだ。情報なんかなくたって落とし前つけなきゃなんないんだよ!!」


 なおも食い下がる蔵間に佳奈が少し苛立った。

 大人が魔法少女にすごまれてちびるわけにはいかない。


 しばらく静観していた橘香が立ち上がる。


「な、何?」


 それを見て佳奈がちょっと言い淀んだ隙に、白音が割って入る。


「ごめんなさい。蔵間さん、橘香さん。でも佳奈の言うとおりです。これはギルドの任務とかではなくて、わたしたちがやらなければならないことなんです。たとえ相手が誰だろうと借りは必ず返します。もちろん任務も果たします。根来だって放っておくわけには……」


 白音が橘香に訴えかけている。

 橘香には賛成して見送って欲しいからだ。



「白音ちゃん、佳奈ちゃんも、違うのよ。わたしも一緒に行こうと思って」

「へ?」


 白音が間抜けな声を出してしまった。

 確かに無理矢理飛び出したくはなかったし、もし橘香が加わってくれればこれほど心強い味方もないのだが……。



「ちょっとっ!! リンクスも何か言ってよっ!!」


 蔵間がとうとう怒った。

 確かにリンクスがどう思っているのかは白音も気になっていた。

 殿下のために命を賭けて戦ったことは何度もあるが、今回はそうではない。



「感情論で言えば行かせたくないな。相変わらず何もできない自分にも腹が立つ。しかし止めて止まったら、そんなの白音じゃないだろ?」



 白音はぶわっと体温が上がるのを感じたのだが、チーム白音の四人が一斉にニヤついてこっちを見ていた。

 記憶の中に画像を焼き付ける勢いだ。

 チーム白音も随分息が合うようになってきたものだ。


「それに、佳奈君、莉美君、そら君、一恵君。君たちも止まるはずないだろ? 白音の仲間なんだ。俺は君たちを信じているから止めないさ…………。あー、でも橘香にまで行かれるのは困るかもな。ギルドが回らなくなる」



 橘香が何か言いかけたが、白音がそれを制する。


「橘香さんは待っていて下さい」


 彩子がSNSでそう書いていたように、これはチーム白音と逆巻姉妹の戦いなのだ。

 誰の手も借りずに決着をつけたいと思う。

 それに、自分たちに何かあった時に、橘香まで巻き込まれたら後先を誰に託せば良いのか。



「わたしの穴を埋められる子はちゃんといるわ。それよりも必要なのは白音ちゃんたちの力になれる……」

「いえ、結構です。足手まといなんです」


 白音がぴしゃりと拒絶した。

 一瞬会議室がしんとなったが、橘香はニヤリと笑って眼鏡を外す。


「言うようになったじゃねぇか!! ひよっこども! 勝つまで帰ってくるんじゃねぇぞ!!」



 橘香は白音の気持ちを理解してくれたようたった。

 しかし鬼軍曹モードでがなるものだから、蔵間が本当に少しちびりそうになる。


「橘香が駄目で、君たちは行っていい、なんてことはないんだからねっ!! 必ず無事に帰って来るんだよ? ああもう。リンクスはかっこいいなぁ。ちくしょう」

「大丈夫、こっちは知力(そら、一恵)は完璧、体力(佳奈)魔力(莉美)もある。そして白音ちゃん(白音ちゃん)が揃ってるんだから負けるわけない!」


 莉美が蔵間に向かってVサインで請け合っている。



「それって、わたしが幸運の女神様ってこと?」


 嬉しいことを言ってくれるので、白音はちょっとおどけてみた。しかし莉美から真顔で、


「ううん、違うよ?」


と返された。


「…………冗談よ……。なにもそんなすぐ否定しなくても……」



 嘆息する白音を隣の一恵が見つめている。

 もはや遠慮なく両手で白音の手を握る。


「白音ちゃんは勝利の女神だと思う」


 莉美をはじめ佳奈やそらも、さも当然といった顔で頷いている。

 みんなの真っ直ぐなまなざしが恥ずかしい。


「…………頑張ります」



 大人たちがぞわぞわとする中、莉美と彩子のやり取りがテンポ良く進んでいく。


「時間と場所、決めちゃうよ? 早い方がいいんでしょ?」


 彩子は根来親通の居所を知っているらしかった。

 あの姉妹にはモラルやルールなど無縁のもののようだったし、約束などしたところでなんの保証もない。

 しかし「勝てば教える」その言葉に嘘はないと、白音は感じていた。



「次の日曜の正午、だって。それでいい?」


 デートの日取りでも決めるように、それはあっさりと決まった。



 寒風吹きすさぶ日曜日の正午。

 約束の日、空は良く晴れていたが、太陽は少しも温かみを伝えてはこない。


 逆巻姉妹が指定した場所は採石場だった。

 人工的に切り取られて鋭角に切り立った岩肌が露出し、大小様々な石塊がそこら中に散乱している。


 作業が行われている形跡がないから跡地という奴だろう。

 暴れるにはもってこいの場所ということか。

 姉妹は既に変身をしてそこに待っていた。


 逆巻姉妹の妹、京香(きょうか)が目を細めてチーム白音を嬉しそうに値踏みしている。


「なるほど、ほんの少し見ない間に随分雰囲気が変わったものね」


 やはり姉、彩子(さいこ)の執着は正しかったと思う。

 姉は危険視していたのだろうが、京香自身は再戦を楽しみにしていた。

 姉の意向には逆らってしまったが、地下で戦った時は見逃しておいて正解だったようだ。


 180センチメートルはあろうかという長身に、均整のとれた筋肉質な体格。

 そして黒く光沢のある革のような素材でできたコスチュームは、その体のラインを強調するかのように体にぴったりとしている。

 動きやすさが重視されたコスチュームなのだろう。

 今まで京香がどんなことをしてきたのかまったく知らない人間でも、ひと目で威圧されるような雰囲気がある



「ホントに根来親通(ねくるちかみち)が今どこにいるか知ってるのね?」


 まったく隙のないふたりに、白音が少し会話で様子を探ろうとする。


「わたシら、あいつが逃げるまでの間護衛するように依頼されてたからネ」



 彩子は妹と黒で統一されたボンデージのコスチュームだが、ワンピーススカートになっていて少し女性らしさのあるコスチュームだ。

 ただしいずれもメタルのリベットやチェーンで装飾されており、攻撃的な内面がそのまま顕在化したようなデザインになっている。



親通(ちかみち)ってあなたたちの雇い主でしょ? そんなの教えていいの?」


 本当のところは守秘義務とか、仁義とか、そういうのに目覚められて口を閉ざされたら困るのは白音たちの方だ。


「わたシらが勝ったら問題ないシ、あんたらが勝ったらどうせ親通もシぬんだろ? どうでもよくなるねネ」

「姉貴の約束はワタシもきっちり守るよ」


 そう言って京香があごで少し離れた先、うち捨てられたようなボロ小屋を指した。


「あそこに座標データが置いてある。根来親通が今いる場所だ」


「そんなの先に教えたら取って逃げちゃうよ?」


 莉美がちょっと挑発気味にそう言うが、彩子が笑う。


「シないネ。あんたらはそういうことはシない。いい子ちゃんたちだろ?」



 実際、一恵が転移で奪って逃げたら姉妹は追ってこられまい。

 しかしチーム白音がそんなことするわけがない。

 それを分かっているから先に教えているのだ。

 ただし、いい子ちゃんだからしないのではない。

 そこは勘違いしている。



「それに、わたシたちが勝ったらケーキ奢ってもらわないといけないシネ」


 彩子が魔力を徐々に高め始める。

 髪の毛がうねうねと蠢き始め、重力に逆らって宙に広がっていく。


「そろそろ始めようじゃないか。親通は転移シて逃げる算段のようだったネ。急がないと消えていなくなっちゃうかもネ。ケムリみたいに」



 彩子は白音たちが変身するのを待っているのだ。

 性格はかなり違うように見える姉妹だが「魔法少女に変身していない状態で倒してもつまらない」、その価値観は共有しているようだ。



「みんなっ!! 変身よっ!!」


 白音の合図で五人が一斉に花が開くように変身する。


正帰還増幅強化(ハウリング・リーパー)!!」


 白音は白を基調とした淡紅のスカートをまるで桜の花のように翻し、真っ先に全員の能力を底上げする。

 出し惜しみは無しだ。



「おらおら、丸ハゲにしてやんよー」


 黄色(おうしょく)のたわわに咲いたミモザのようなコスチュームで莉美が彩子を挑発している。

 かわいい花びらのようなフリルの衣装ですごんでも違和感しかない。



「アハハハハハハ!! やっぱりあんたはわたシがズタズタにシてやんないと分かんないみたいだネ」


 彩子が目を見開いた。笑ってはいるが激昂しているようだ。


「戦闘開始ってことで……いいネっ?!」

莉美は全部むしる気でいるようです。

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