さわやかな声に僕は聴こえた
ーー彼は放送のスピーカーで、さわやかな声が聞こえた。
まるで優しい声、癒される声に生徒たちはうっとりする。まるで天使のような声だった。この癒しのような声に、生徒たちは士気が上がる。
その声に彼は、まるで心が洗われるかのようになっていた。
「どうしてなんだろう…。この声を聞くと、つらいことがなくなる…」
彼がこの放送の声でであったのは、彼がこの学校に転入したばかりのことだった。
四月の下旬…。小野寺誠一は父親の転勤により学校へ転入することになった。だが彼は、別の学校では、つらいことばっかりだった。
いじめられやすく、パシリ扱い、さらに味方は一人もいなかった。先生でも、彼のせいだと誤解しても、誰一人も信じてくれなかった。
そして、彼は人間不信になってしまった。もう誰も信じない、そんな少年になってしまったのだ。
そして、新しい学校に転入し、クラスの教師の先生が、誠一を紹介した。
「今日から、このクラスの生徒となった小野寺誠一君だ」
誠一は、クラスの生徒に礼をしながら、名前を言う。
「小野寺です、よろしくお願いします」
「じゃあ、後ろの席に座って」
誠一は、後ろの席に座ると、その横に一人のツインテールをした女子が、挨拶してきた。
「君、ここに入って初めてよね?」
「あ、あぁ」
「よろしくね、小野寺君」
彼女は、笑って挨拶をした。
(この人、何なの?なれなれしく言ってきたけど…。)
誠一はよくわからない人と思った。
しかし、誠一は思った。
(この学校に転入したけど、あの時の前の学校のこと思い出す…。俺は、いじめられやすく、みんなにはパシリ扱い。さらに俺のせいにして、先生に誤解されるばかりの人生だった。どうせ、この学校に転入しても、同じに決まってる…。)
誠一はすでにそう考えていた。
そして、休み時間が入ると、そこへ一人の男子生徒が、誠一に近づいてきた。
「おっす!」
「?」
「お前が転入生の小野寺か?」
「お前は?」
彼は名前を言った。
「俺は、窪田高広っていうんだ、よろしくな」
「……」
誠一は、高広という生徒に尋ねる。
「何の用?」
高広は言った。
「先生にこの学校を案内してくれと言ったんだよ」
「この学校のこと?」
「この学校は、苗春高校といってな、いわゆる自由のような学校だ」
「…」
高広はさらに言った。
「さらにこの学校で有名なのは、ある一人の女子が俺たちを癒してくれる、いわば天使さまと呼ばれているんだぜ!」
「天使様…?」
これに誠一は…。
(この学校に天使様がいるのか?そんな馬鹿な…。)
「とりあえず、のちにその女子は、あの放送で言うはずだぜ!」
そんなのありえないと思う、誠一は思った。
「で、いつなんだ?」
高広は、そのことを言った。
「その人は、いつ放送するのか分かんねぇ。運がよかったら、きっと癒してくれるはずだぜ!」
「まさかな…」
「とりあえず、その間にこの学校を案内してやるからよ!」
「あ、あぁ…」
「じゃ、さっそく学校案内してやるぜ」
「……」
誠一は、高広に学校案内した。
その一方… 。
「じゃあ、今日の放送よろしくね」
「は~い!」
一人の女子が、放送部の顧問の先生に、今回のニュースの紙を渡された。
そして、スイッチを押した。
ーーピンポンパンポ~ン!
「おっ、ついに来たな?」
「えっ?」
高広は、耳を澄まし始めた。
「何やってるの?」
よくわからない誠一は、周りを見た。すると、なぜかすべての教師や生徒が、静かに放送の声を聴いた。
その時…。
「……!」
放送の声でなぜか、さわやかな声をしていて、しかも心がまるで癒されるかのように、洗われるかのように、まるで天使のような声だった。
いいニュースでも、教師や生徒が天使の声に魅了されていた。
「……」
誠一は、天使の声に何かを魅了された。
そして、放送が終わると、まるで時が止まったかのようにみんなが動き始めた。さらにこの声で、「この声を聴くと、やる気が出るよなあ~」「いい天使の声だったよ」「明日も、頑張れるよなぁ、この声を聴かれると」など、士気を上げているかのように言っていた。
この声を聴いた誠一は…。
「………」
言葉も出なかった。
「どうだった、天使様の声の魅力は?」
高広が、誠一の感想を期待していた。
「なぁ、小野寺?」
誠一は、口を開いた。
「高広…」
「なんだ?」
「放送室って、どこだ?」
これに高広は言った。
「北校舎の三階だけど、どうした?」
すると、誠一は言った。
「案内してくれ!」
誠一の一言に、高広は驚いた。
「はっ?えっ?ど、どうした?」
「いいから、案内してくれ!」
「お、おう…」
誠一は、高広に放送室を案内した。
北校舎の三階、放送室に着くと…。
「失礼します!」
誠一は堂々と入った。
「ちょ…、おい!小野寺、どうしたんだよ!」
すると、そこにいたのは…。
「!君はさっきの…」
「お前は、隣の席にいた…」
その人物は、席に座った時、声をかけてきたツインテールの少女だった。
「なんだ、君は?」
彼女の隣に、顧問の先生がいた。
「あ、いや…、その…」
高広は、この状況に気まずい感じになった。
「いきなりこの放送室に入ってくるなんて、何のつもりだ⁉」
「ええっと…」
高広は、小声で誠一を尋ねた。
「おい、いったいどうしたんだよ!」
誠一は、彼女に尋ねた。
「さっきの声、お前が言ったのか…?」
「うん、そうだけど?」
さらに、尋ねて問う誠一。
「さっきの天使の声をしたのは、お前なのか?」
「天使?確かに…、みんなからは、私の声が、天使のようなって噂されてるけど…」
「……」
誠一は、彼女のことを言った。
「名前は、なんていうんだ?」
彼女は、名前を言った。
「天神光、なんだけど?」
「……」
光の声に、誠一は思った。
(これが、この学校の有名である天使の声…、そして、彼女が…)
すると、顧問の先生が入ってきた。
「君、いったい何なんだ?何しにこの放送室に入ってきたんだ?」
「ええっと…」
光は言った。
「もしかして、放送の声に初めて聴いた?」
「あぁ…」
「どんな感じだった?」
光は、誠一の感想を聞いた。
「高広の言う通り、心が洗われるかのようだったよ」
「そうなんだ、よかった」
光は安心し、顧問の先生に、誠一のことを言った。
「鳴井先生、彼は私のクラスであって、転入生なんです」
「そうなのか、ならそれを早くいってくれ」
「す、すみません…」
誠一は、放送部の顧問である鳴井に誤った。
「君が、天神君が言った転入生か。私は、放送部の顧問をしている鳴井山彦だ」
「お、小野寺誠一です」
誠一は、緊張していた。
「あ、あの…、その…」
ギクシャクの状態の誠一だが、光はこれに言った。
「いいのよ、緊張しなくても」
「……」
すると、光は思った。
「もしかして、放送部をやりたいの?」
これに、誠一は…。
「あ、いや…、それは…」
「大丈夫よ、最初は緊張するけど、のちに慣れるからね」
「は、はぁ…」
すると早速、光は紙を誠一に渡した。渡された紙には、ニュースなどのセリフ練習が書いてあった。
「これは?」
「放送部の練習用よ。やってみて」
「………」
誠一は、セリフを言おうとした。しかし、なぜか声を出さない。
「小野寺君?」
その時、誠一の頭からトラウマがよみがえってきた。
「………」
(お前のせいだ、この疫病神!)
(こんなことなら、お前死ねばいいのに)
(君は、本当に悪い人ですね)
(消えろや)
このことに誠一は…。
(どうして…?みんな僕のせいにするの?僕はいらない存在なの…?僕が、いないほうがいいの…?)
いじめられた過去、そして彼のせいだと誤解して、先生に信じてもらえない、僕が悪いと勝手に叱られる、味方も誰一人もいない。
その時…。
「う、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
誠一は、恐怖を感じ、叫んだ。
「お、小野寺君!」
「小野寺!」
過去の恐怖に苦しむ誠一に、心配をする光と高広。
「はぁ…、はぁ…」
「ど、どうしたんだ?いきなり叫んで…」
二人と同じく驚き、誠一を心配する鳴井は、彼を触った。
すると…。
「……、すみません…」
誠一は、放送室から出て行った。
「お、おい!どこへいくんだよ、小野寺!」
高広は、誠一を追った。
「な、何があったんだ?」
「小野寺君…」
光は、誠一を心配そうにしていた。
そして、放課後…。
「……」
誠一は、うつむいていた。
「何やってんだろう、俺は…。なんでこんな時に思い出すんだよ…。」
誠一にとっても後遺症の過去だった。過去のことは、死ぬまで心を痛むだろう。誠一は思った。
そこへ…。
「小野寺君」
「…!お前は…、天神さん…」
光が来た。
「天神でいいよ」
光は、誠一の隣に座った。
「どうしてここに?」
「小野寺君のことが心配だったの」
「……」
あの時の誠一の叫びで、おそらく光は彼を見て心配そうにしていたのだろう。そのために、彼を探していたのだ。
「ねぇ、さっきのあれって…」
「………」
誠一は、自分の心と恐怖を彼女に見られた。これに誠一は言うしかなかった。
「俺、実はこう見えて、人を信じなくなったんだ」
誠一の一言で、光は思った。
「それって、人間不信ってこと…?」
「俺は、前の学校でいじめられやすい体質だった。誰も俺のことを助けてくれなかった。先生でも、俺が悪いと誤解されていたんだ」
「小野寺君…」
「俺は孤独だった、味方誰一人もいなかった…」
「……」
誠一の過去に、光は彼の悲しむ顔を見て思った。
「で、でもここに転入したから、きっと大丈夫だよ」
「無理だよ…、俺はこの過去から逃げられない。簡単に言えば、後遺症だ」
これに光は、そっと誠一の手を触った。
「…!天神…?」
「その気持ち、よくわかるよ」
「え…?」
「私も、もともとは人間不信だったから」
光の一言に、誠一は驚いた。
「だけど、この苗春高校に入って、放送部に入った。私のいる場所が見つかったのよ」
「放送部で…?」
「そのあと、みんなからは私の声が天使様みたいって!」
それが理由で、みんなから彼女の声に癒されたのだろう。
「きっと、小野寺君には癒しな場所が見つかるよ」
「…俺の場所、か…」
しかし、彼には答えが見つからない。誠一にとっての癒しな場所、とても難しいことだった。
翌日のことだった。
学校の掲示板にて、生徒が集まっていた。
「?」
誠一は、掲示板を見るとそこには、学校新聞が張っていた。
「嘘だろ…」
「まじかよ、これ…」
生徒たちは、学校新聞を見て驚いていた。
「何が、書いてあるんだ?」
記事にはこう書いてあった。
『サッカー部 まさかの廃部か⁉』
「サッカー部?」
するとそこに…。
「小野寺!」
高広の姿がいた。
「窪田。この記事って?」
「ああ、どうやら苗春高校のサッカー部、実は弱部で廃部しそうなんだ」
「それで?」
「また、練習試合でうちの学校が負けたら、廃部決定だってよ」
「じゃあ、勝てば廃部が免れるってことか」
「そういうことだ」
しかし、記事をよく見ると…。
『実況は、「放送部の天使様」のこと天神光さんがやってくれます』
「!天神が…⁉」
彼女の名前があり、誠一は、彼女のもとへ行った。
そのころ、光は鳴井先生と話していた。
「えっ、私がサッカー部の実況をですか?」
「校長からの命令なんだ、頼むよ」
「……」
するとそこへ…。
「天神!」
「小野寺君!」
誠一が、放送室に入ってきた。
「どうしてここに…?」
誠一は言った。
「俺も、一緒にやらせてくれ!」
二人は驚いた。これに鳴井は…。
「何言ってるんだ、君はあの時逃げたんじゃないのか?」
確かに、あの時は逃げた。
しかし、誠一は言った。
「それでも、放っておけないんです!どうか、俺を放送部の助っ人としてやらせてください!」
「小野寺君…」
誠一はお願いをしていた。
「し、しかし…」
すると…。
「あの、私からもお願いします!」
光も誠一のお願いを頼んだ。
「天神、お前…」
「私は、小野寺君の力が必要だと思います。せめて、一回だけお願いします、鳴井先生!」
「……」
鳴井は、光のお願いの結果…。
「わかった、いいだろう。ただし、一回だけだ。チャンスはないと思ってくれ」
許可を出してくれた。
「ありがとうございます!」
二人同時で鳴井に礼をした。
そして、サッカー部の練習試合の日。
誠一は、初めての部活の仕事だった。
「……」
しかし、初めてとはいえ、誠一は緊張していた。
(初めての放送部の仕事か…、緊張する…。でも、どうしてだろう…)
誠一の手は、震えていた。彼にとっての、過去の思い出がよみがえってきたのだろう。そのとき、誠一は思った。
(なんでこんな時に恐怖の動機が来るんだろう…。しっかりするんだ、俺!チャンスは、一回だけって鳴井先生が言ったんだろ!)
頭が、真っ白だった。どうすればいいのか、誠一の心は、まだ縛られたままだった。まるで、トラウマに縛られる鎖のようだ。
(でも、逃げたくなる…)
すると…。
「小野寺君、大丈夫?」
「!」
光が、誠一を呼んだ。
「天神…」
「もしかして、緊張しているの?」
「……」
これに、光は誠一を落ち着かせる。
「大丈夫だよ、誰だって緊張するから」
「ごめん…」
誠一は、光を謝る。
「ううん、その気持ちわかるよ。誰だって、縛られるものがある。だけど、いつかはなくなる時だってあるの。一歩ずつ、前に進むかのようにね」
光の言葉に、誠一は…。
「天神…、俺…」
「無理しないでね、私がやってみるから」
光はスタンバイをして、笛の音でサッカーの試合が始まった。
「試合が始まりました、実況は放送部の一年の天神光が送りいたします!」
光が、実況するとサッカー部のみんなが士気を上げて張り切っていた。
「……」
誠一は、これに驚いていた。
(天神が、あんなに決心にやっている…。始まったばかりなのに、うちの学校のサッカー部が士気を上げている…)
そこへ…。
「驚いているだろう、小野寺」
鳴井が、誠一の隣に来た。
「彼女は、お前と同じく昔からいじめられやすい体質だったんだ」
「⁉」
鳴井の言葉に、誠一は驚いた。
「しかも、もともと無感情な性格だったんだ」
無感情な性格、その性格にもしかしてと彼は思った。
「もしかして、感情のないということですか…?」
「そうだ、そのために俺は、天神を放送部に入らないかと誘ったんだ。そしたら、彼女は放送部に入って変わったんだ。まるで、光の灯火のようにね」
「光の…灯火…」
光の過去に、この時誠一は思った。
しかし、過去の自分の心の声がした。
(お前はだれかを信じちゃいけない、逃げるなら今のうちだぞ)
すると…」。
「…うるせぇ」
(逃げろよ!)
「…うるせぇ!」
(逃げろ!)
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
誠一は、自分の過去の心に叫んだ。
「俺は、あいつのおかげで自分はもう逃げないって決めたんだよ!天神がいなかったら、俺は人間不信のままだった!」
誠一は、さらに自分の心に文句を言った。
「お前は消えろ!お前は邪魔だ!お前がお前を勝手に決めつけてんじゃねぇぇぇ!」
そして…、誠一は光の横に座った。
「小野寺君⁉」
「そのまままっすぐ行きました!センターからキック!」
誠一は、実況に参加した。
「小野寺…!」
これに見た鳴井は、驚いた。
そして、サッカー部員がキックオフして、試合が終了した。
そのあと、苗春高校のサッカー部の廃部は、回避した。
試合終了後…。
「ごめん、天神!つい勝手に…」
「……」
光を謝る誠一、すると…。
「ううん、小野寺君が謝ることないよ」
「でもっ…」
「私も、最初から緊張していたの…」
光は自白した。
「えっ…?」
光は、その理由を言った。
「実は、部活のスポーツの実況するの初めてなの。あの時、まさか私が、サッカー部の練習試合の実況するなんて思わなかったの。だからものすごく緊張していたの」
「……」
「だけど、小野寺君がいたから、緊張がほぐれちゃったのかもしれない…、そう思ったの」
「そうなのか…」
「でも、放送部の仕事、緊張したでしょ?」
「あぁ…」
すると、光は礼をした。
「ありがとう」
「…天神」
こうして、誠一の初めての放送部の仕事が終わった。しかし、誠一は思った。何かが寂しいと、そう気づいた。
そして、翌日のこと…。学校新聞に記事が書いてあった。
『サッカー部の練習試合、苗春高校が勝利!廃部回避!』
これに見た生徒は、驚いた。
「サッカー部、廃部回避だってよ!」
「まじかよ!スゲーじゃん!」
「なんでも、天使様にもう一人が手伝ってくれたという噂だってよ!」
「うそでしょ?」
これに見た、誠一。
そこへ…。
「よう、小野寺!」
「窪田」
「昨日は、大丈夫だったか?」
「何のことだ?」
高広は、小声で誠一に言った。
「お前、天神と一緒にいたんだろ?」
「なんでわかるんだよ…」
「勘」
「お前なあ…」
さすがに鋭い高広だった。
屋上。
誠一は、高広と一緒に話していた。
「お前が、放送部の手伝いをするなんてなぁ、やっぱスゲーよ」
「そんなにすごいのか?」
高広は言った。
「ここだけの話だけど、天神は中学時代のころ問題児だったらしい」
「問題児?」
「あぁ、なんでも人間不信だったっていう噂だよ…」
「!」
感情もない、問題児で人間不信。まるで、自分と同じだった。
「……」
これに誠一はやっと気づいた。
「そうか、そうだったのか…」
「え?何がなんだ?」
「天神も、俺も、お互い様だったんだなって」
「小野寺…」
そして、誠一は決意した。
「俺、放送部に入るよ」
「え?」
「俺は、もう逃げない。そう決めたんだ」
誠一の決意に、高広は言った。
「よく言ったぜ、小野寺!」
「窪田?」
「俺も付き合うよ、その放送部に!」
「それってつまり…?」
「放送部に入るってことだよ!」
高広も、誠一と一緒にやるつもりだった。
「な、なんでこんな時に言うんだ?」
高広は言った。
「だって、友達だろ?俺たちは!」
「……!」
大切なもの、それに気づいた誠一。
「あぁ!」
「じゃ、さっそく入部届を出そうぜ!」
二人は、職員室に行き入部届を出した。
そして…。
「…!」
放送室に誠一と高広が来た。
「小野寺君…!」
「天神、俺、放送部に入るよ」
これに、光は涙が出た。
「ありがとう、小野寺君!」
光は、誠一を抱きついて、嬉しそうに喜んだ。
「よかったな、天神」
「はい!」
ーー彼は放送のスピーカーで、さわやかな声が聞こえた。
まるで優しい声、癒される声に生徒たちはうっとりする。まるで天使のような声だった。この癒しのような声に、生徒たちは士気が上がる。
その声に彼は、まるで心が洗われるかのようになっていた。
「どうしてなんだろう…。この声を聞くと、つらいことがなくなる…」
彼がこの放送の声でであったのは、彼がこの学校に転入したばかりのことだった。
四月の下旬…。小野寺誠一は父親の転勤により学校へ転入することになった。だが彼は、別の学校では、つらいことばっかりだった。
いじめられやすく、パシリ扱い、さらに味方は一人もいなかった。先生でも、彼のせいだと誤解しても、誰一人も信じてくれなかった。
そして、彼は人間不信になってしまった。もう誰も信じない、そんな少年になってしまったのだ。
そして、新しい学校に転入し、クラスの教師の先生が、誠一を紹介した。
「今日から、このクラスの生徒となった小野寺誠一君だ」
誠一は、クラスの生徒に礼をしながら、名前を言う。
「小野寺です、よろしくお願いします」
「じゃあ、後ろの席に座って」
誠一は、後ろの席に座ると、その横に一人のツインテールをした女子が、挨拶してきた。
「君、ここに入って初めてよね?」
「あ、あぁ」
「よろしくね、小野寺君」
彼女は、笑って挨拶をした。
(この人、何なの?なれなれしく言ってきたけど…。)
誠一はよくわからない人と思った。
しかし、誠一は思った。
(この学校に転入したけど、あの時の前の学校のこと思い出す…。俺は、いじめられやすく、みんなにはパシリ扱い。さらに俺のせいにして、先生に誤解されるばかりの人生だった。どうせ、この学校に転入しても、同じに決まってる…。)
誠一はすでにそう考えていた。
そして、休み時間が入ると、そこへ一人の男子生徒が、誠一に近づいてきた。
「おっす!」
「?」
「お前が転入生の小野寺か?」
「お前は?」
彼は名前を言った。
「俺は、窪田高広っていうんだ、よろしくな」
「……」
誠一は、高広という生徒に尋ねる。
「何の用?」
高広は言った。
「先生にこの学校を案内してくれと言ったんだよ」
「この学校のこと?」
「この学校は、苗春高校といってな、いわゆる自由のような学校だ」
「…」
高広はさらに言った。
「さらにこの学校で有名なのは、ある一人の女子が俺たちを癒してくれる、いわば天使さまと呼ばれているんだぜ!」
「天使様…?」
これに誠一は…。
(この学校に天使様がいるのか?そんな馬鹿な…。)
「とりあえず、のちにその女子は、あの放送で言うはずだぜ!」
そんなのありえないと思う、誠一は思った。
「で、いつなんだ?」
高広は、そのことを言った。
「その人は、いつ放送するのか分かんねぇ。運がよかったら、きっと癒してくれるはずだぜ!」
「まさかな…」
「とりあえず、その間にこの学校を案内してやるからよ!」
「あ、あぁ…」
「じゃ、さっそく学校案内してやるぜ」
「……」
誠一は、高広に学校案内した。
その一方… 。
「じゃあ、今日の放送よろしくね」
「は~い!」
一人の女子が、放送部の顧問の先生に、今回のニュースの紙を渡された。
そして、スイッチを押した。
ーーピンポンパンポ~ン!
「おっ、ついに来たな?」
「えっ?」
高広は、耳を澄まし始めた。
「何やってるの?」
よくわからない誠一は、周りを見た。すると、なぜかすべての教師や生徒が、静かに放送の声を聴いた。
その時…。
「……!」
放送の声でなぜか、さわやかな声をしていて、しかも心がまるで癒されるかのように、洗われるかのように、まるで天使のような声だった。
いいニュースでも、教師や生徒が天使の声に魅了されていた。
「……」
誠一は、天使の声に何かを魅了された。
そして、放送が終わると、まるで時が止まったかのようにみんなが動き始めた。さらにこの声で、「この声を聴くと、やる気が出るよなあ~」「いい天使の声だったよ」「明日も、頑張れるよなぁ、この声を聴かれると」など、士気を上げているかのように言っていた。
この声を聴いた誠一は…。
「………」
言葉も出なかった。
「どうだった、天使様の声の魅力は?」
高広が、誠一の感想を期待していた。
「なぁ、小野寺?」
誠一は、口を開いた。
「高広…」
「なんだ?」
「放送室って、どこだ?」
これに高広は言った。
「北校舎の三階だけど、どうした?」
すると、誠一は言った。
「案内してくれ!」
誠一の一言に、高広は驚いた。
「はっ?えっ?ど、どうした?」
「いいから、案内してくれ!」
「お、おう…」
誠一は、高広に放送室を案内した。
北校舎の三階、放送室に着くと…。
「失礼します!」
誠一は堂々と入った。
「ちょ…、おい!小野寺、どうしたんだよ!」
すると、そこにいたのは…。
「!君はさっきの…」
「お前は、隣の席にいた…」
その人物は、席に座った時、声をかけてきたツインテールの少女だった。
「なんだ、君は?」
彼女の隣に、顧問の先生がいた。
「あ、いや…、その…」
高広は、この状況に気まずい感じになった。
「いきなりこの放送室に入ってくるなんて、何のつもりだ⁉」
「ええっと…」
高広は、小声で誠一を尋ねた。
「おい、いったいどうしたんだよ!」
誠一は、彼女に尋ねた。
「さっきの声、お前が言ったのか…?」
「うん、そうだけど?」
さらに、尋ねて問う誠一。
「さっきの天使の声をしたのは、お前なのか?」
「天使?確かに…、みんなからは、私の声が、天使のようなって噂されてるけど…」
「……」
誠一は、彼女のことを言った。
「名前は、なんていうんだ?」
彼女は、名前を言った。
「天神光、なんだけど?」
「……」
光の声に、誠一は思った。
(これが、この学校の有名である天使の声…、そして、彼女が…)
すると、顧問の先生が入ってきた。
「君、いったい何なんだ?何しにこの放送室に入ってきたんだ?」
「ええっと…」
光は言った。
「もしかして、放送の声に初めて聴いた?」
「あぁ…」
「どんな感じだった?」
光は、誠一の感想を聞いた。
「高広の言う通り、心が洗われるかのようだったよ」
「そうなんだ、よかった」
光は安心し、顧問の先生に、誠一のことを言った。
「鳴井先生、彼は私のクラスであって、転入生なんです」
「そうなのか、ならそれを早くいってくれ」
「す、すみません…」
誠一は、放送部の顧問である鳴井に誤った。
「君が、天神君が言った転入生か。私は、放送部の顧問をしている鳴井山彦だ」
「お、小野寺誠一です」
誠一は、緊張していた。
「あ、あの…、その…」
ギクシャクの状態の誠一だが、光はこれに言った。
「いいのよ、緊張しなくても」
「……」
すると、光は思った。
「もしかして、放送部をやりたいの?」
これに、誠一は…。
「あ、いや…、それは…」
「大丈夫よ、最初は緊張するけど、のちに慣れるからね」
「は、はぁ…」
すると早速、光は紙を誠一に渡した。渡された紙には、ニュースなどのセリフ練習が書いてあった。
「これは?」
「放送部の練習用よ。やってみて」
「………」
誠一は、セリフを言おうとした。しかし、なぜか声を出さない。
「小野寺君?」
その時、誠一の頭からトラウマがよみがえってきた。
「………」
(お前のせいだ、この疫病神!)
(こんなことなら、お前死ねばいいのに)
(君は、本当に悪い人ですね)
(消えろや)
このことに誠一は…。
(どうして…?みんな僕のせいにするの?僕はいらない存在なの…?僕が、いないほうがいいの…?)
いじめられた過去、そして彼のせいだと誤解して、先生に信じてもらえない、僕が悪いと勝手に叱られる、味方も誰一人もいない。
その時…。
「う、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
誠一は、恐怖を感じ、叫んだ。
「お、小野寺君!」
「小野寺!」
過去の恐怖に苦しむ誠一に、心配をする光と高広。
「はぁ…、はぁ…」
「ど、どうしたんだ?いきなり叫んで…」
二人と同じく驚き、誠一を心配する鳴井は、彼を触った。
すると…。
「……、すみません…」
誠一は、放送室から出て行った。
「お、おい!どこへいくんだよ、小野寺!」
高広は、誠一を追った。
「な、何があったんだ?」
「小野寺君…」
光は、誠一を心配そうにしていた。
そして、放課後…。
「……」
誠一は、うつむいていた。
「何やってんだろう、俺は…。なんでこんな時に思い出すんだよ…。」
誠一にとっても後遺症の過去だった。過去のことは、死ぬまで心を痛むだろう。誠一は思った。
そこへ…。
「小野寺君」
「…!お前は…、天神さん…」
光が来た。
「天神でいいよ」
光は、誠一の隣に座った。
「どうしてここに?」
「小野寺君のことが心配だったの」
「……」
あの時の誠一の叫びで、おそらく光は彼を見て心配そうにしていたのだろう。そのために、彼を探していたのだ。
「ねぇ、さっきのあれって…」
「………」
誠一は、自分の心と恐怖を彼女に見られた。これに誠一は言うしかなかった。
「俺、実はこう見えて、人を信じなくなったんだ」
誠一の一言で、光は思った。
「それって、人間不信ってこと…?」
「俺は、前の学校でいじめられやすい体質だった。誰も俺のことを助けてくれなかった。先生でも、俺が悪いと誤解されていたんだ」
「小野寺君…」
「俺は孤独だった、味方誰一人もいなかった…」
「……」
誠一の過去に、光は彼の悲しむ顔を見て思った。
「で、でもここに転入したから、きっと大丈夫だよ」
「無理だよ…、俺はこの過去から逃げられない。簡単に言えば、後遺症だ」
これに光は、そっと誠一の手を触った。
「…!天神…?」
「その気持ち、よくわかるよ」
「え…?」
「私も、もともとは人間不信だったから」
光の一言に、誠一は驚いた。
「だけど、この苗春高校に入って、放送部に入った。私のいる場所が見つかったのよ」
「放送部で…?」
「そのあと、みんなからは私の声が天使様みたいって!」
それが理由で、みんなから彼女の声に癒されたのだろう。
「きっと、小野寺君には癒しな場所が見つかるよ」
「…俺の場所、か…」
しかし、彼には答えが見つからない。誠一にとっての癒しな場所、とても難しいことだった。
翌日のことだった。
学校の掲示板にて、生徒が集まっていた。
「?」
誠一は、掲示板を見るとそこには、学校新聞が張っていた。
「嘘だろ…」
「まじかよ、これ…」
生徒たちは、学校新聞を見て驚いていた。
「何が、書いてあるんだ?」
記事にはこう書いてあった。
『サッカー部 まさかの廃部か⁉』
「サッカー部?」
するとそこに…。
「小野寺!」
高広の姿がいた。
「窪田。この記事って?」
「ああ、どうやら苗春高校のサッカー部、実は弱部で廃部しそうなんだ」
「それで?」
「また、練習試合でうちの学校が負けたら、廃部決定だってよ」
「じゃあ、勝てば廃部が免れるってことか」
「そういうことだ」
しかし、記事をよく見ると…。
『実況は、「放送部の天使様」のこと天神光さんがやってくれます』
「!天神が…⁉」
彼女の名前があり、誠一は、彼女のもとへ行った。
そのころ、光は鳴井先生と話していた。
「えっ、私がサッカー部の実況をですか?」
「校長からの命令なんだ、頼むよ」
「……」
するとそこへ…。
「天神!」
「小野寺君!」
誠一が、放送室に入ってきた。
「どうしてここに…?」
誠一は言った。
「俺も、一緒にやらせてくれ!」
二人は驚いた。これに鳴井は…。
「何言ってるんだ、君はあの時逃げたんじゃないのか?」
確かに、あの時は逃げた。
しかし、誠一は言った。
「それでも、放っておけないんです!どうか、俺を放送部の助っ人としてやらせてください!」
「小野寺君…」
誠一はお願いをしていた。
「し、しかし…」
すると…。
「あの、私からもお願いします!」
光も誠一のお願いを頼んだ。
「天神、お前…」
「私は、小野寺君の力が必要だと思います。せめて、一回だけお願いします、鳴井先生!」
「……」
鳴井は、光のお願いの結果…。
「わかった、いいだろう。ただし、一回だけだ。チャンスはないと思ってくれ」
許可を出してくれた。
「ありがとうございます!」
二人同時で鳴井に礼をした。
そして、サッカー部の練習試合の日。
誠一は、初めての部活の仕事だった。
「……」
しかし、初めてとはいえ、誠一は緊張していた。
(初めての放送部の仕事か…、緊張する…。でも、どうしてだろう…)
誠一の手は、震えていた。彼にとっての、過去の思い出がよみがえってきたのだろう。そのとき、誠一は思った。
(なんでこんな時に恐怖の動機が来るんだろう…。しっかりするんだ、俺!チャンスは、一回だけって鳴井先生が言ったんだろ!)
頭が、真っ白だった。どうすればいいのか、誠一の心は、まだ縛られたままだった。まるで、トラウマに縛られる鎖のようだ。
(でも、逃げたくなる…)
すると…。
「小野寺君、大丈夫?」
「!」
光が、誠一を呼んだ。
「天神…」
「もしかして、緊張しているの?」
「……」
これに、光は誠一を落ち着かせる。
「大丈夫だよ、誰だって緊張するから」
「ごめん…」
誠一は、光を謝る。
「ううん、その気持ちわかるよ。誰だって、縛られるものがある。だけど、いつかはなくなる時だってあるの。一歩ずつ、前に進むかのようにね」
光の言葉に、誠一は…。
「天神…、俺…」
「無理しないでね、私がやってみるから」
光はスタンバイをして、笛の音でサッカーの試合が始まった。
「試合が始まりました、実況は放送部の一年の天神光が送りいたします!」
光が、実況するとサッカー部のみんなが士気を上げて張り切っていた。
「……」
誠一は、これに驚いていた。
(天神が、あんなに決心にやっている…。始まったばかりなのに、うちの学校のサッカー部が士気を上げている…)
そこへ…。
「驚いているだろう、小野寺」
鳴井が、誠一の隣に来た。
「彼女は、お前と同じく昔からいじめられやすい体質だったんだ」
「⁉」
鳴井の言葉に、誠一は驚いた。
「しかも、もともと無感情な性格だったんだ」
無感情な性格、その性格にもしかしてと彼は思った。
「もしかして、感情のないということですか…?」
「そうだ、そのために俺は、天神を放送部に入らないかと誘ったんだ。そしたら、彼女は放送部に入って変わったんだ。まるで、光の灯火のようにね」
「光の…灯火…」
光の過去に、この時誠一は思った。
しかし、過去の自分の心の声がした。
(お前はだれかを信じちゃいけない、逃げるなら今のうちだぞ)
すると…」。
「…うるせぇ」
(逃げろよ!)
「…うるせぇ!」
(逃げろ!)
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
誠一は、自分の過去の心に叫んだ。
「俺は、あいつのおかげで自分はもう逃げないって決めたんだよ!天神がいなかったら、俺は人間不信のままだった!」
誠一は、さらに自分の心に文句を言った。
「お前は消えろ!お前は邪魔だ!お前がお前を勝手に決めつけてんじゃねぇぇぇ!」
そして…、誠一は光の横に座った。
「小野寺君⁉」
「そのまままっすぐ行きました!センターからキック!」
誠一は、実況に参加した。
「小野寺…!」
これに見た鳴井は、驚いた。
そして、サッカー部員がキックオフして、試合が終了した。
そのあと、苗春高校のサッカー部の廃部は、回避した。
試合終了後…。
「ごめん、天神!つい勝手に…」
「……」
光を謝る誠一、すると…。
「ううん、小野寺君が謝ることないよ」
「でもっ…」
「私も、最初から緊張していたの…」
光は自白した。
「えっ…?」
光は、その理由を言った。
「実は、部活のスポーツの実況するの初めてなの。あの時、まさか私が、サッカー部の練習試合の実況するなんて思わなかったの。だからものすごく緊張していたの」
「……」
「だけど、小野寺君がいたから、緊張がほぐれちゃったのかもしれない…、そう思ったの」
「そうなのか…」
「でも、放送部の仕事、緊張したでしょ?」
「あぁ…」
すると、光は礼をした。
「ありがとう」
「…天神」
こうして、誠一の初めての放送部の仕事が終わった。しかし、誠一は思った。何かが寂しいと、そう気づいた。
そして、翌日のこと…。学校新聞に記事が書いてあった。
『サッカー部の練習試合、苗春高校が勝利!廃部回避!』
これに見た生徒は、驚いた。
「サッカー部、廃部回避だってよ!」
「まじかよ!スゲーじゃん!」
「なんでも、天使様にもう一人が手伝ってくれたという噂だってよ!」
「うそでしょ?」
これに見た、誠一。
そこへ…。
「よう、小野寺!」
「窪田」
「昨日は、大丈夫だったか?」
「何のことだ?」
高広は、小声で誠一に言った。
「お前、天神と一緒にいたんだろ?」
「なんでわかるんだよ…」
「勘」
「お前なあ…」
さすがに鋭い高広だった。
屋上。
誠一は、高広と一緒に話していた。
「お前が、放送部の手伝いをするなんてなぁ、やっぱスゲーよ」
「そんなにすごいのか?」
高広は言った。
「ここだけの話だけど、天神は中学時代のころ問題児だったらしい」
「問題児?」
「あぁ、なんでも人間不信だったっていう噂だよ…」
「!」
感情もない、問題児で人間不信。まるで、自分と同じだった。
「……」
これに誠一はやっと気づいた。
「そうか、そうだったのか…」
「え?何がなんだ?」
「天神も、俺も、お互い様だったんだなって」
「小野寺…」
そして、誠一は決意した。
「俺、放送部に入るよ」
「え?」
「俺は、もう逃げない。そう決めたんだ」
誠一の決意に、高広は言った。
「よく言ったぜ、小野寺!」
「窪田?」
「俺も付き合うよ、その放送部に!」
「それってつまり…?」
「放送部に入るってことだよ!」
高広も、誠一と一緒にやるつもりだった。
「な、なんでこんな時に言うんだ?」
高広は言った。
「だって、友達だろ?俺たちは!」
「……!」
大切なもの、それに気づいた誠一。
「あぁ!」
「じゃ、さっそく入部届を出そうぜ!」
二人は、職員室に行き入部届を出した。
そして…。
「…!」
放送室に誠一と高広が来た。
「小野寺君…!」
「天神、俺、放送部に入るよ」
これに、光は涙が出た。
「ありがとう、小野寺君!」
光は、誠一を抱きついて、嬉しそうに喜んだ。
「よかったな、天神」
「はい!」
ーーそしてのち、放送部には、天使様に従う天使がいる。高広、光、そして誠一。この三人が、苗春高校の放送部として、すべての生徒が救う。さわやかな声と共に。
終