徒然草よ、ありがとう‐鳥の糞害を少しでも減らすために‐
我が家は田園地帯、というと聞こえはいいですが、田舎にあります。
この地に家を建てたのは土地が安価で適度に便利な場所にあったからです。
確かにわりと安くで家が建ちました。
住宅ローンの返済も二十年足らずで終わりました。
固定資産税も安いです。
当然のことながら田舎なので、鳥も虫も獣もいます。
虫は我慢できます。家に入って来ないようにすればいいんですから。
それに庭のカマキリ等は害虫を食べてくれるのでありがたいです。
大きな蜘蛛もゴキブリを食べてくれます。
獣、特に野良猫の粗相には悩まされましたが、超音波で撃退する装置で入って来ないようになりました。
ただし耳の悪い猫には効きません。それでも掃除はずいぶん楽になりました。
幸いにも猿や猪は現れません。狸はいますが、実害は今のところありません。
問題は鳥でした。
スズメをはじめ、ヒヨドリ、ツバメ等の小鳥が飛来して玄関やウッドデッキに粗相をしていきます。
超音波の出る装置は空を飛ぶ鳥には効きません。
ほとほと困っていました。
そんな時です。
鳥の糞害に悩むある島で鳥が近づかないように縄を木々に張っているというのをテレビで見ました。
それを見て、あれ、これって、あれじゃない? と気付きました。
「後徳大寺の大臣」だよね? これって。
高校の時に古典で習った「徒然草」の「家居のつきづきしく」の一節を思い出したのです。
覚えておいでの方も多いのではないでしょうか。
後徳大寺の大臣の、寝殿に鳶居させじとて縄を張られたりけるを、西行が見て、
という部分です。
後徳大寺の大臣藤原実定が寝殿に鳶を止まらせまいと思って縄を張ったという部分です。西行さんは鳶が寝殿に止まったくらいで何の不都合があろうかと大臣の心の狭さに憤慨して大臣のところに行かなくなったようです。
それはともかく、縄を張ると鳶が来ないというのは、現代でも使えるかもしれません。
だから、この島でも縄を張ったようです。
というわけで我が家ではウッドデッキの軒下にテグスを張りました。
玄関のほうは糸が張りにくいので小鳥が止まりそうな場所に釘を逆さに貼りつけました。数センチ間隔なので、ハチドリくらいしか止まれないでしょう。近所にハチドリはいませんけど。
結果、小鳥達は近づかず落とし物をしなくなりました。
玄関にはたまに落ちていることもありますが。
それでも掃除の手間はずいぶん減りました。
どうやら鳥は羽根がひっかかるので紐や糸の類が張ってあると嫌がるようです。
鎌倉時代も現代も鳥の習性はそう簡単には変わりませんから、「徒然草」の方法はある程度通用したのでしょう。
古典の先生は鳥撃退の方法を教えるつもりはなかったことでしょう。
動詞「居」の活用の種類や助動詞「じ」の意味、敬語等を教え、兼好の物の見方等を考えさせるつもりだったのかもしれません。
でも、文法を知ることで古典を読めるようになれば、古人の知恵や考えを直接知ることができます。
鳥の糞害対策にも役立ちます。
古典の勉強、大事です。
ありがとう、徒然草。
ありがとう、兼好さん。
そして、徒然草を後世に伝えてくれた大勢の皆様。