『鏡の中の想い人』
「鏡の前立ってみても何も起こらないじゃん…」
忠人に告白したけど。
眠れなくて…。
なんか、夜中に目が覚めて…お母さんの鏡台の前、立ってみた。
「霊とかって…無いよね…」
私の姿、映す『鏡』。
スエット着た私が、暗闇にボーっと立ってるだけ。
「時計は? AM2:30。げっ…!?」
なんか、幽霊とか信じないけど。
やたら、忠人が、言うんだよね…。
丑三つ時には、出る。…って。
「やだナ~…。もう…。忠人、学者志望のくせして…」
ベッドに戻り親友の茜にラインを送る。
起きてるわけないか…。
『起きてる? 茜? 眠れない…。鏡の前、立ってみた』
ピロン♪
『へっへっへ~♡ 瞳~♡ 出るんじゃない?♡♪』
うげっ! はや! 起きてるよ…。茜…。
だけど、ちょっとだけ嬉しい。
けど、明日も学校だよ?
何やってんだか。茜…。
…って、私も人のこと言えないか…。
『昨日は、部活? どうだった? 省吾♡♪』
ピロン♪
『なんで、2人っきりって知ってんの?』
いや…。言ってないし…。
茜は、正直…って言うか。なんて、言うか…。
『知らないけど、何かあった?』
ピロン♪
『なんか、省吾悩んでたから…脱いでみた』
え!? 嘘!? 何やってんの!? 茜!?
ぬ、脱ぐって、あり得ないよ…。
『本当…!?』
ピロン…。
『冗談…笑』
変なスタンプ押してあるし…。
茜は、正直なんだけど、女の私から見ても嘘か本当か分かり辛い。
転校初日からそうだったな…。茜。
ピロン♪
『明日も学校だし。寝るよ~。瞳♡ あ! 寝れないか~♡ おやすみ~♡』
相変わらず茜は、明るい。
冗談言うけど、最後は、なんだかんだ言って本当のこと話してくれる。
『おやすみ~♡ 茜~♡』
はぁ…。寝るか…。寝なきゃだね。
明日も朝6時起き。ヤバいな…。
…って、なんか…。体重いよ。気持ち悪い…。
『忠人が、危ない』
え…!? 誰…?
聴き憶えの無い声。
見えないはずの暗闇から誰かが、しゃべる。
動…けない…。気分…悪い…。嘔吐しそう…。
忠人…。
忠人…。助け…て…。
その後…。変な夢を見た。
『一緒にいて、良いのか?』
海辺の白い砂浜で忠人と二人。体育座り。
どこまでも続く青空が。海が。『鏡』の向こうの『世界』みたいで。
まるで…。この世のものじゃないみたいで…。
何もかも吸い込んでしまいそうで。怖くて…。
忠人…。
『俺…いくわ。瞳…。ありがとな…』
忠人じゃないみたいな忠人が、言う。
「忠人!!」
泣きながら叫んで起きた午前6時。
アラーム音。ベッドの上。
涙の粒が、頬を伝っていた。