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旅の吟遊詩人はエレキギターを掻き鳴らす。  作者: デラシネ
吟遊詩人ハンキーの旅:ウェルフルの港町 リーバップでの記録
15/48

『お待たせしましたアイダさん!是非すぐに会いたいそうです!」



「ね?こうなるだろう?」



得意げなアイダは猫獣人のように悪戯っぽく笑う。



「すまない。お嬢さんたちもありがとう。」



紳士らしく丁重にお礼をすると、町長の部屋へ案内される。



(でも、何の話かしら?いくら凄いって言っても一介の吟遊詩人よね?)



(町長も大ファンだし仕方ないわよ。あ、それとこれ、いいでしょ?)



(ああ!ずるい!私も後でもらわなきゃ)






「お初お目にかかります町長。吟遊詩人のハンキーです」



「・・・・なんだいその敬語?」



「ちょっと黙っていてくれないか」



アイダがきつく睨む。


「アンタねえ、誰のおかげで・・・」





「ははは、久しぶりに会えて嬉しいよアイダ。ハンキーさんも敬語は辞めてくれ。それとジョージで構わんさ。私もハンキーと呼ばせてもらうよ」



禿げ上がった頭に口髭を生やしたその男は、大柄な体を揺さぶりながら豪快に笑う。





「それでは失礼してジョージ、ボルドーのナイトとして、折り入ってお願いしたい」



そう言うと帽子からボルドー国旗と竪琴が精巧に彫刻された銀製のペンダントを取り出した。



アイダもジョージも流石に面食らった。


出されたお茶を吹き出しながらアイダが言う。


「ナイト?アンタが?」


アイダが驚きの表情をハンキーに向ける。


「できれば、警察署長と、各ギルド長、この地区を担当している将校殿も同席願いたい」





「それほど重大な話なのか?」



どうやら町長はなかなかの切れ者らしい。こちらとしても愚者を相手にせずに済む。



「率直に申し上げて、国家機密と同等に考えていただきたい」



「アンタ、さっきから何言ってんだい?」



呆れ混じりにアイダが言うが、ハンキーの眼差しは真剣そのものだ。





「よう、ハンキー」



この部屋には3人の他に誰もいないはずだ・・・が、窓から声がした・・・・。



「よりによってこのタイミングか・・・・!」


ぬらりとした、人間離れした身のこなしでカーテンから3人の男が現れた。


真っ白なローブに付いたフードを深くかぶり、顔の判別はできないが、口ぶりからしてハンキーとは顔見知りだろう。


その手には剣が握られている。




ハンキーは帽子から銃を取り出すと、白ローブの男たちに向かって発砲した。



「ドドドン!」



3発の弾丸はリボルバーからほぼ同時に発射され、正確に剣だけを弾き飛ばした。



見事、というより最早神業だ。





「♫眠る時間♫子羊たちよ♫もうお眠り♫」



子守唄を歌うと、よろよろと2人が眠りに落ちた。



ハンキーの歌をもってすれば容易いことだ。



「アンタ、こんなに強かったのかい」





「お前、そんなんだからモテないんだぞ。いい加減に諦めろよ」



ハンキーが命のやり取りをしている最中とは思えないほどの軽口を叩く。



「最後に勝つのは諦めない者だ。それに今日はただの挨拶だ。そちらのご婦人にな」



眠りに落ちなかった1人、つまりコイツはハンキーの睡眠魔法も通用しない程の魔力を持っている。


フードを外すと、病的なほど色白で美しいが、狂気を感じさせる目をした痩躯の男が顔を出す。





「アイダに触れたらただでは済まさん」



魔力を込められた言葉が針のように部屋中を駆け巡った。



「馬鹿な奴だな。自ら弱点を作るなど」



「弱点?一度でも俺に勝ってから言えよ。それに、気が変わった。お前はここで殺す」



先程とは比べ物にならない魔力を込めた言葉が発せられると、アイダとジョージは気を失いかけるほどの目眩に襲われた。



「やはり、馬鹿になったな。挨拶は済んだ。御機嫌よう偉大な吟遊詩人よ」



白ローブたちの足元に魔法陣が現れると、それに吸い込まれ、跡形もなく姿を消した。

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