願いの中で、僕は。
僕が望んだのは争いのない平和な世界だった。
誰だって、自分の子供が苦しむ姿を見たいなんて、思うわけがない。
だからといって、ほかの子を苦しめていいわけじゃない。
僕はただ、幸せで苦しむことがない。
平和な、争いのない世界を作りたかったのに。
世界は、僕の子供たちはそれを反故にした。
子供たち同士ではじめは争いを始めた。
精神力と集中力によって生み出せる便利な力として与えた魔法の力を使って。
地水火風。
その力を使って、工夫して殺しあった。
どうして、そんなことをするの?
助け合う力を、才能と呼んで、蔑みあった。
助け合えば、いくらでも幸福に生きられるというのに。
強い力を持つものはねたまれた。
そして、僕に恨みを持って死んでいった。
こんな力を与えられなければ、こんなことにはならなかったのにと。
その一方で弱い力を与えられたものは延々と石をぶつけられ、燃やされて苦しみながら死んだ。
この子も僕を恨んで死んでいった。
助けてほしいと願って、裏切られて死んだ。
僕はいつしか、そういった子供たちから力を奪った。
与えられた力で殺しあうなら、そんな力を与えるわけにはいかなかった。
そうすれば、子供たちはひたすらに死を迎え続けることはなくなると思った。
だけど、今度はその子供たちが死んでいった。
強い力がなくなり、無茶をして死んだ。
強い力がなくなったときから、ほかの子供たちに迫害されて死んだ。
どうしたらいいの?
すべてを平等に与えたこともあった。
そうすれば、理由もなくただ傷つけあった。
いつしか迫害された子供たちは、魔族と名乗り僕を恨みながら、傷つけあい。
魔族の子供たちは、強い力をもって子供たちを奴隷という契約魔法で縛った。
死んでしまうことで僕に魂を渡さないように、死なないように延々と苦しめるようになった。
穢れに穢れた子供たちは、僕に雄弁と語った。
僕がすべての元凶なんだと。
僕が生み出し、僕が子供たちをゆがめてしまった。
争い合うようにできてしまった歪みきった世界。
お前が望んだ戦乱の世界だ……と。
歪みをただすために、魔族の力を削ぐしかないと、勇者という力を与えた。
今までの力を圧倒的に凌駕する強烈な力。
だけど、その力を与えたものを子供たちは恐れた。
また、僕は間違えた。
その力におぼれた勇者は新しい魔族の王となっただけだ。
結局延々と死の螺旋が続いていく。
平等な世界を作っても、不平等な世界を作っても、平和は作られなかった。
むしろ、僕が何かをすれば、子供たちはとめどなくそのことで傷ついていった。
僕はあきらめてしまった。
子供たちが望んで、こうなったわけじゃないのは分かっていた。
だから、僕は弱い子に手助けをするようにした。
強すぎる力を与えると危ないことをするから、ちょっぴりだけ。
だけど、それも間違いだった。
いつしか世界は穢れ切ってしまった。
もう、この世界はおしまいだった。
僕の力ももうなくなって、何もできないでただ子供たちが苦しみながら死んでいく様を見るしかできなかった。
ああ、どうしてこうなった?
僕が考えなしに力を使ったから?
僕が子供たちに干渉し続けてしまったから?
世界という箱庭は、ピシリと音を立て、崩れた。
僕に力が戻った。
子供たちはもう、どこにもいなくなった。
新しい世界を作った。
今度こそ平和な世界にする。
そう決めて、僕たちを身近に感じる世界を作ることにした。
先輩みたいに、子供たちで遊んで笑うことなく、優しく寄り添える世界を作ることにした。
僕の力は限られているけど、それでも子供たちを守れるように。
作られた箱庭の中で、子供たちが笑って暮らせるように。
「一つだけ言っておくよ後輩」
「なんだよ先輩」
唐突に先輩から声をかけられた。
「完璧なんて存在しないからな」
「それを、僕たちが言います?」
「ああ、言うさ。全知全能なんてありえない。
僕たちにできるのは、僕たちができることだけさ。
子供たちが行った結果がどんなものであっても、見守り続けるのが僕たちの役割でもある。
だから、過度な期待をするな。楽しむ気持ちでいるほうがずっと楽だよ?」
「一言じゃないですよ先輩。じゃあ行ってきますから」
今度の世界こそ、争いのない平和な世界を作ろう。
それが僕たちの使命なんだから。
完璧なんて存在しない……か。
それでも、僕は子供たちが完璧に平和で優しく笑いあえる世界を作りたい。
じゃないと、今までの子供たちに申し訳がない。
くすくすくす。