00.プロローグ
―――夢を見た。
暗い暗い森の中を、奥へ進んでいく。
全く知らない場所であるはずなのに、何度か来たことがある気がする。自分の足は思考とは関係なく、淀みなく目的地へと向かっている。
そもそも、” ”が住んでいる町にはこんな場所はないはずだ。いや、日本全国どこを探したってないだろう。ならば、ここは一体どこなのか。
辺りに生えているのは、既に枯れ果て葉をつけることすら困難であろう樹木と、どんな花を咲かせていたのかすらわからないほどに生気を失った植物たちだ。普通の植物であれば萎れている、と形容するのだろうが、例え水をあげずに放置していたってここまで茶色く、黒ずみはしないだろう。まさに何者かに「生気を吸われた」という表現がしっくりくる。
ふと、空を見上げる。異様なほど紫色に染まった空は、不気味なようでいて、しかしどこか美しいとすら思った。視界の大半を占める、空を二分しているのではと錯覚するほど巨大な光を除けば。
その光は確実に森の奥にある「何か」から伸びていた。世界の終わりを告げるように赤白く伸びるソレを、ある種族は「神の威光」だとした。またある集落の人々は「この世の破滅」だとし、生きることを諦めたという。ならば自分は、自分は今、何故その光源へと歩みを進めているのか。
「……………………ーーー 」
歩く度に強くなる光に思わず目を顰める。光へと手を伸ばしたのは救いを求めてか、あるいは……――
これは、少年と少女の、物語。
世界を救済へと導く、彼らの物語。