第ニ話 変わり者、捻くれもの
金曜午後の2時間目、体育
今回は、ちょっとリフレッシュということで、ドッジボール。
男子が盛り上がる人気種目だ。
まぁ、クラスカーストが表面化しやすくもあるけど。
僕はそう活躍したいわけでもないし、いつも通り程々にやることにしようか。
「普通」とは、なんだろうか
皆、言い訳のように『俺はそれほどすごくない』、『私はあなたとは違う』などと言う後ろ向きではあるが、自分は才能を持ち、輝く人間の『下』にいると思っている。
才能を持たずとも、それなりに輝くことはできる。
似たような意見を出し、他人を真似て盛り上がり、底辺にいることに気づかないままの、ゴミのようなループから抜け出した者こそがスタートラインに立てる。
『普通』とは呪縛。
『普通』とは怠惰。
『普通』とは、最悪。
だからこそ、僕は、普通でいたい。
そこから、一刻も早く出ようという、誰かの上に立つことは素晴らしいという価値観を狂信し、そのために個性すらないものとされる
もう、普通を押し付けられたくない
昼休み、いつも通り一人外でご飯を食べていると、彼女は来た。
「よっ!逢奇千くん!」
「虎鞠さん…」
虎鞠杏子、彼女は、普通に振る舞っていたはずの僕に対し、「何か変わっている気がする」と、センスで、僕が抱く普通への執着に、バンバン首を突っ込んでくる、変わった人だ。
「いいの?いつも一緒にいる人達は。」
「逢奇千くんこそ、ボッチ寂しくないの?」
「もっとマシな言い方あったでしょうに…」
「逢奇千くんはさ、なんでそんなに捻くれてるの?」
「な…!?
ホ、ホント…いつも直球だよね、虎鞠さんは」
「にへへ!」
「ねぇ、私は逢奇千くんの『普通』に入るの?」
「君は…普通じゃないよ
どう考えてもね」
「だろうね!
ま、逢奇千くんだって普通じゃないから、どうでもいいよ!」
「また痛いところを突く…」
「捻くれ者と変わり者、いいコンビだと思わない?」
「ちっとも」
「えぇ~!?」
やっぱり、まだ本質までは普通じゃないんだ、僕は。
けれど、あまりにも明るく話すものだから、不快感はなかった。
「まぁ、僕も嫌いじゃないよ、杏子のこと」
「…あ…あん…ず…?///」
「な、何で自分は照れるんだよ!!」