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変心と連続  作者: 山目 広介
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4 ――未来――

 彼の遺伝子異常を治療することは今も続けられていた。

 つまり今現在も遺伝子を取り換えられて身体は昨日とも別人になっていっている。

 徐々に変わっているということは一時的にキメラということでもあるのだろう。


 それに引き摺られて精神も別物に作り替えられていく。

 だがそれは時差が存在している。

 遅延と言う方が正しいだろうか。

 しかも自分にはその変化は分かり難い。

 痛みや苦しみは治療の影響だろう。それで気分が落ち込むのは仕方がない。

 ハイになるときがあるのは精神の変化の影響か……

 彼は一応記録は残してあるが記憶と照らし合わせても同一人物なのか不安になるほど。

 だからその時々の感情が精神の変容によることかなど分かろうはずもない。


 仕事での同じ相手には記憶に基づき対応している。

 昨日とは違う、明日とも違う、今日の自分。

 躁鬱に近い症状のため薬でなんとか耐えている。

 自棄(やけ)になって暴れたりするかも知れない。

 今この目の前の嫌いな奴は次には好きな奴かも知れない。

 現在の下手な行動は未来の自分に不利になるかも知れない。

 過去ではなく未来に束縛されていく……

 この不安も翌日には消え失せている、朝露の如く。


 実際は以前も未来の事を考えていれば行動にも慎重にならざるを得なかったはず。

 勉強もせずに遊んだりした学生のときや上司に逆らって後から難題を押し付けられたことなど。

 一時の苦痛から逃れ、その場の快楽へと手を伸ばしてばかりだった。

 後から来るしわ寄せ。

 しかし問題もやはり早めに起こしていないと時間が経ってから対処法を知らないと逆に迷惑がられたりもした。

 正解の分からない不安。

 学生までなら間違えても大丈夫だった。

 でも社会だと分からなければ聞いた方が良い。

 しかし弱みを見せるとそこに付け込む輩がいたりもする。


 今と言うものはなんて薄氷を踏むかのように心許ないものなのか。

 実績や栄光、成績に成果。過去があるというだけでもまだ頼りになる。


 彼は今に、現在に絶望していた。

 過去の繋がりがないに等しい状況。

 (すが)るは未来しかない。




 現状に対する未来とは。

 分からない。




 本来の生物の未来とはなんなのか。


 子孫繁栄なのか?


 しかし身体に残された繋がりは絶えた。


 この状態の子供は自分の子供と言えるのか。


 治療前の自分とも違うだろう。


 また親の性格が毎日違ったりすれば、子供は分裂症にでもなるかも知れない。


 複数の人格とかであればよかったのか。


 支離滅裂な心と継ぎ接ぎの遺伝子で。




次回、最終回「5 ――習慣――」

翌朝6時予約投稿。

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