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変心と連続  作者: 山目 広介
3/5

3 ――精神――

 血液検査などでは、もはや両親との血縁関係を証明できない。


 そんな事実を告げられた。


 さらに掌紋を取られて以前のと比べられた。

 違っていた。

 彼の指紋は楕円形だったが薬指のが馬蹄型と呼ばれるものになっていた。




 家に帰り、家計簿にレシートを貼りつけ気付く。

 以前はちゃんと付けていた。

 いつの間にか面倒臭いと言ってレシートを貼るだけになっていた。


 更に食事の好みも変わっていた。

 薄味が好きだったのに濃い物が好きになっていた。

 塩ラーメンが好きだったが味噌ラーメンというように。

 調べていくと他にも変わっていた。

 マンガやドラマの好みも違っている。


 自分が自分だという確固とした物が崩れていくような気がした。


 仕事の同僚と話す相手が昔とは違っている。

 確かに近くにいたりする人物とは同じように付き合ってはいた。

 だが親しくする人物は別だった。


 以前は背が低いからか小さい女の子が好きだった。

 今では大きい女性が好みになっている。




 一つ一つは小さい事かも知れない。

 それでもこれだけ重なればもう別ものだ。


 以前考えた疑問が彼の脳裏によぎる。


「記憶というものがあればそれは俺なのだろうか……?」


 記憶はある。確かに過去は変わらない。

 しかし行動は違う。

 好みも変わった。

 味覚も趣味も好きな女性に至るまで変化した。

 

 前は欠かさず手入れしていた自転車が通勤と通院で泥に塗れている。

 登山用品は埃に塗れてから月日が経過していた。


 通話している友人がまるで違う。


 ふと気付く。ペットの小型犬は自分に近づいて来なくなって久しい。

 散歩には連れて行っているのにも関わらず、だ。




 確かに成人してからと小学生だった自分では考え方など違っていたかも知れない。

 でもこれほどの違和感は持たない。

 彼は治療前の自分ではない。そう自覚していた。




 やはり同じ疑問が鎌首をもたげてきた。

 自分に自信が無くなっているというのに、こんな部分は同じなのか……

 他人とだって同じ結論に至ることもある。




 身体はもう別物だ。両親とも検査で血縁が確かめられないから。


 たぶん仕草で分かる人物はもういないだろう。

 自分自身ですら別人だと思っているので当然だ。

 だから中身も別物だと言っても間違いではない。


 にも拘らず記憶は繋がっている。




 自分とは一体何なのか。




 確固とした自分と言う物はもうない。

 過去から繋がっている物は記憶だけだ。


 彼には今の自分という物を信じるしかなくなってしまった。


















 将来の自分という物も現状で信じられないのだから……













次回「4 ――未来――」

翌朝6時予約投稿。

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