ムラカミ博士のロボット
『これが私の開発したロボットです。このロボットに言いつけておけばどんな面倒なことでも言いつけどおりの仕事をしてくれます』ロボットを作ったムラカミ博士は得意げにはなした。それを聞いた金持ちのヤマダ氏は言った。『素晴らしい、ぜひ私に売ってください』ムラカミ博士は満面の笑みで答えた。『きっとお役に立ちますよ』。ヤマダ氏は大金を払ってロボットを手に入れた。
家に帰ったヤマダ氏はさっそく腰掛けるとこう言った。『ああ、今日はとってもくたびれた、何か冷たいものを飲みたいな』。するとさっそくロボットがやって来て冷えたビールを差し出した。ヤマダ氏は満足した様子でつぶやいた。『これはいいロボットだ。さすがはムラカミ博士だ。』ロボットは料理や洗濯だけではなくヤマダ氏の話相手になってくれたり、壊れた物があればその場で修理してくれた。ヤマダ氏とロボットの新しい生活が始まったかのようにみえた。
しばらく経ったある日、ヤマダ氏は急な用事で出かけることになった。そこでロボットに留守番をさせることにした。『私が留守の間どろぼうが入るかもしれないからこの家をしっかり見ておいてくれ』。ロボットは答えた。『家を見ていればいいんですね?』。そしてヤマダ氏は出かけていった。その夜、ヤマダ氏の思ったとおりどろぼうがやってきた。しかし様子が変だった。ロボットが庭先に立って屋敷をじっと眺めているのだ。どろぼうは考えた。『これは自分を捕まえる為の罠かもしれない』。どろぼうは一歩近づいてみた。なにも起こらないのでもう一歩近づいてみた。それでもロボットはずっと屋敷を見ているだけだ。どろぼうはまた一歩と近づいていき、屋敷の中の宝ものを盗んでいった。
『こんなに不用心な家は初めてだ。家の主人はなぜあんなロボットを置いているんだろう?』。
次の日、ヤマダ氏が帰ってきた。宝ものがなくなっているのに気づき怒ってロボットに聞いた。『家の中の宝ものがなくなっているが私の留守の間誰かきたのか?』ロボットは答えた。『はい、どろぼうが屋敷の中に入っていきましたが私は、家を見ていたので止められませんでした。』
このことがあってからヤマダ氏はロボットを嫌いになってしまった。