表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/149

第98話 許されるならずっと

 これが答えだ。世界を滅ぼす魔性でも、翼ある一族の末裔だろうと、ジルはジルだった。何も本質は変わらない。彼の能力や顔を好きになったわけじゃない。


 ジルがルリアージェをそのまま受け入れるように、自分も受け入れればいいだけ。何も特別なことじゃなかった。


 頬に手を滑らせて、ジルの胸に飛び込んだ。反射的に受け止めた彼の腕が背に回る。抱きしめられる状態で、自然と表情が和らいだ。


「ジルは一緒にいてくれるんだろう?」


「もちろんだ」


 即答した声に迷いがないのが、本当に嬉しくて幸せで頬が緩んだ。だらしない顔をしている自覚があるから、ジルの胸元から顔をあげられない。


「よかったわ」


 ライラがほっとした声で呟く。もし彼女がジルを拒否したら、一時的に預かるつもりでいた。気持ちが落ち着けば、またジルへの恋心で丸く収まるだろうと。長い寿命があるからこそ、彼や彼女は時間経過が心にとって最高の薬だと知っている。どんなに憎んだ相手でも、数十年も経てば許せることを経験で理解していた。


「ライラ、パウリーネ、リシュア、リオネル」


 安堵の表情を浮かべる魔性達を呼んで、ルリアージェはやっと顔をあげる。真っ赤な耳や首筋、頬が照れている事実を雄弁に告げていた。しかし誰も指摘せず、次の言葉を待つ。


「私が歳を取らない不老長寿ならば、今後も迷惑をかけるがよろしく頼む」


「「「はい」」」


「もちろんよ」


 真っ直ぐ目を見て言い切ったルリアージェは、肩から力を抜いて振り返る。抱きついた男の顔を覗き込み、自分だけを写す紫の瞳に微笑みを向けた。


「ジル、責任を取ってもらうぞ。最後まで隣にいろ。誰より近い位置で、ずっと……」


「最高の褒美だよ、リア。絶対に離れない」


 言い切ったジルが額に、頬に口付ける。反射的に目を閉じた瞼に触れて、最後に唇を重ねた。


「ふ……ぅ、んっ……」


 長いキスを終えたルリアージェに「可愛い」と囁いたジルが、彼女の顔を見せないよう抱きしめて隠す。目をそらしていた3人と、パウリーネに目元を手で覆われて暴れるライラに苦笑した。


 気が利く配下に「もういいぞ」と声をかけると、腕の中でルリアージェがもがいた。


「キ、キスするなんて」


「やだ、せっかく知らないふりするつもりだったのに」


 くすくす笑うライラに指摘され、ルリアージェは真っ赤になって崩れ落ちた。両手で顔を覆って膝から崩れた彼女を、ジルがひょいっと抱き上げる。お姫様抱っこ状態に、さらに恥ずかしくて顔を出せなくなった。


「少し休むといいよ」


 優しく声をかけられ、頷くしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ