箱
目を開けば、暗い部屋の中。自分は本当に目を開けたのか、と疑うほど暗い。
とりあえず何か触れれるものはないか、文字通り手探りで辺りを調べる。すると、すぐに壁のようなものに手が触れた。右も左も少し手を動かすだけで触れる距離。
もしかして、と頭を上げると「ゴンッ」と鈍い音がして、おでこにひりひりとした感覚が伝わる。
そうか、どうやらここは部屋ではなく、俺は箱のようなものの中にいるようだ。
「~、~~」
外で何か聞こえる。話し声だろうか。よくわからないが俺がもし箱の中に閉じ込められているのなら、ぜひとも助けてもらいたい。
「出してくれ」と声を出すと、驚いたような声を出した後、ガタガタと何かを倒しながら足音が遠ざかっていく。
あぁ、怖がらせちゃったか。そりゃいきなり箱の中から声がしたら怖いよな。にしても、頭をぶつけた時も思ったが、よく音が響く。洞窟の中にでもいるのか?なら、さしずめ俺はゾンビかスケルトンといったところか。笑えない冗談だな・・モンスターがどうやって生まれてくるかなんて知りたくもなかったし味わいたくもなかったわ。
「~~、~~~」
「~」
足音が近づいてくる。こんどは二人いるようで、それは声が二つ聞こえることからも分かる。
はは、箱を開けたら腐りかけか、骨だけの何かがでてくるぜ。もしかしたら普通の人間の姿かもしれないけどな。
少し手前で足音が止まると、少しずつ光が入り込んでくる。松明の弱い光だったが、ずっと暗い場所にいたせいか、すごく目に悪い。
ぼやけて、黒い影のようなものしか見えないが、その二つの影のうち一つが、かがむようにして俺をのぞき込む。
誰だろうか?まだ影はくっきりとは見えないが、その影が口を開く。
「◯◯◯」
「は?」
まさか、言葉がわからないとは思わなかった。
陰から目を外し、自分の体を見下ろす。随分と汚い格好だったが、どうやらモンスターになったわけではないようだった。ふぅ、よかった、よかった。
さて、これからどうしようか。状況はよくわからないが、とにかく何かをしたい気分なんだ。
まだぼやけた視界はいつピントが合うだろうか。