ビターテイル
映画、スウィートホームの過去妄想。
主人公として使用したのはゲーム版の敵、狂人です。
画像の方は、閲覧注意です。
ズルッ・・・ズルッ・・・足音が長く暗い廊下に響く。
この館に閉じ込められたのは何時だっただろうか、かなり昔だった様な気がする。
体から腐った肉と膿の臭いがする。それはそうだ、私の体は腐り果てているのだから。私は手にしている鉈を翳した。
月光が光を反射し、私の顔を映し出す。
そこには、膿が貯まっているだろう水膨れのような出来物が無数にあり、片眼が取れた人ならざる化け物の姿が写った。
こんな顔をしていたのか、まざまざと顔を見て思う。
ここは昔、とある美術家が彼の家族とと共に住んでいた屋敷。
だが霊やおぞましい私のような化け物がうろつく恐怖の屋敷と化してしまったのだ。・・・おぞましい呪いを残して。
私がこの屋敷に迷い込んだのは、確か、数年前の夏。
私はこの町の市役所の職員をしていた―――・・・。
「***さん、少しお時間よろしいでしょうか?」
書類を作成していると、若い女の声が横からかかった。
「はい、なんでしょうか?」
「実は、あのお屋敷の事なんですが・・・」
「ああ、間宮邸の事ですか、何か?」
私は都市の開発に携わる科に属していて、その中でも少々やり手と呼ばれ、数々の計画を敢行してきたのだ。
「実は・・・あの屋敷には呪われていると噂があって・・・なのでもう少し調査は・・・」
またか、こう言う話は今日で何回目だろうか?
「もう少しもう少しと言って、もう何年も経っているのですよ?他の調査隊も出ていないようだし、今やらなければ何時調査するのです?」
私は同じ科の**に何回も言っているように話した。
「確かにそうですが、でも・・・」
「怖いのなら、神社か何かに行ってお参りでもしたらどうだい?君も調査には同行するのだから。それより、16日の書類は・・」
「あっ、直ぐ出します!」
**が場を去ったところで、私は彼女を鼻で嗤って作成を続けた
(呪い?そんなものがこの世に存在するわけが無いさ、そんなのSFの中だけの話さ。・・・だが少し気になるな。)
私は机上のファイルから一枚書類を取り出し黙読した。
(・・・間宮邸、元は芸術家、間宮一郎の屋敷で妻と子供と同居していた。間宮一郎と妻は死亡、その後怪現象が相次ぐ、か。)
書類を置き、キーボードを叩き始めた。怪現象なんてくだらないと思いながら。
その後、惨劇が起こる事も考えずに。
ブロォォ・・・。ガタンガタン・・・。
市役所のオンボロ車が道なき道を走る音が社内に聞こえる。
社内の職員は皆浮かない顔で、昨日話しかけてきた**に、関してはうつ向き、本当に嫌だったことが伺える。
ハンドルを握り、道を曲がりながら話す。
「おいおい皆、怪現象なんか本当に有ると思ってるのかい?何も起こらないって。」
「…………。」
「ん?誰かなにか話したか?」
「後悔する………。」
話したのは、先程からうつ向いていた**だった。
顔は真っ青で精気がない。普段とは何か違う雰囲気だった。
彼女は低く暗い声で、おどろおどろしく続けてこう言った。
「私達は、もう生きて帰れない。絶対に、夫人に、殺される」
「えっ、**それって・・・」
隣の席に居た****が**に話した。
「おいおい、**、****。本当に何か起きると思っているのかい?ははは、可愛いじゃないか。」
「・・・ふざけないで、あんたも既に夫人の怒りに触れているのよ・・・」
**が怒りを孕ませた声で私に話しかける。
「ははは、おい*****。**が切れたぞ、怒りに触れんように押さえてくれよな・・お、見えた。」
樹木の間からそびえ立つ屋敷が見えた
「お~・・・大きいねぇ、****こう言うの好きだろ?」
「はい・・そうですけど、なぁ**、さっきの夫人って・・・」
「・・・」**は沈黙を保っていた。どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。ふぅ、とため息をつく。
「もう、着くぜ。**、****、*****。くれぐれも死なんようにな。ハハハハ」
ブロォォ・・・・・。車を屋敷の前に停め、ドアを開ける。
ガチャン、バタン。
全員が降り、私は静かに佇む扉の前に立った。
「良し、****鍵を渡してくれ。」
「はい***さん・・・」
「ありがとう・・って、****。震えてるじゃないか?ハハハハ!男らしくないな~。」
震える****の手から私は鉄の鍵を取り、扉の鍵穴に差し込み、回した。
ガトン、ドアが開き、真っ暗な部屋が見えた。
「暗いな、なぁ、明かりをつけてくれないかい?」
「あ、はい・・」
懐中電灯を鞄から取り出し、スイッチを入れようとしている****の手は震え、ロクに動かないようだった。
鼻息をつき、****から伝統を引ったくる。
「おいおい。困るよ。そんなんじゃ・・・?」
カチカチ、電灯のスイッチを動かしても、明かりがつかない。
「チッ、おい、点検はこまめにしような。帰ってから・・・」
ポケットからライターを取り出し、火を点けると。
キイィバタッ!
急にドアが閉まった。どうやらそばに居た**が閉めたらしい。
「なぁ、**。怒ってるのは分かるが・・」
「違う、そんなのじゃない。・・・・そいつを出さない為よ!」
**が前を向き、叫ぶ。私は前へ向いた。
目の前には、音もせずに女が直ぐそばまで近付いていた。
女が手を横に振ると、私の体はおぞましい力で壁に吹っ飛ばされた!
ドゴッ、と音がし私の背中に激痛が走る。
“この屋敷に入ってきたわたしの幸せを壊そうとする愚かものめ!
その体を引き裂いてくれる!”
「うぎゃあああああ!痛い!痛いぃぃぃ!!」
女がまたもや手を振り上げると、****の体が宙に浮き、全身が引っ張られたように張り、体が裂け始めた!
****は余りの痛さか泣き叫び、大量の血と涙をを床に溢していた。
「やめろっ!」*****が女に果敢に蹴りかかった、だが、それは新たなる犠牲者を増やすだけになった。
蹴りかかった足が****の体のように張り、刹那。
“わたしを愚弄するか!”ヒュッ、手が振られた。
そして、太股の硬直が解け、蹴った右足が宙を舞った。
バタッ、と床から音がし、次いで*****が金切り音を上げる
“愚かな…、次は。おまえだ!”
女から放たれているおぞましい力が強くなったのが空気を伝い私の肌に感じられる。
「ああぁあぁ・・・。ああああああああ!!!!!」
メリメリメリ、ボキボキボキ、****の体から嫌な音が響き、血の量が増す。
(****!!・・畜生・・・動け!動いてくれ!)
私の体は、背中を強打したためか、全く動かなかった。
動かしたくとも全く動かず、ひたすら脚と腕に力を入れていた。
「*・・・**・・**!!に、逃げろォ…」
かろうじて**への警告を絞り出せた。
「・・・・・」だが、**は全く動かず、何処か見据えている。
そういえば、こいつは*****がやられたときも、****がこうなるときも・・・何一つ声を上げなかった。
(よくも・・・よくも動かずに見ていられるな!この女!私の部下がやられているのに!・・・殺してやる・・・)
動けずにもがいている私に、明確な殺意が芽生え始めると、**が女に向けて、ゆっくりと手を向けた。
“・・・なんだ、わたしと闘うつもりか?”
「・・・やる気はない、ただ、****を助けるだけ!」
その時、**から、強力な力が放たれた。
女はその力をもろに受け、煙のように消えてしまった。
女の力が消えたせいか、拘束されていた****が床に落ちた。
落ちた****に**が駆け寄り、彼の名を懸命に呼ぶ。
「**!**!ああああああ!!!」
名を呼ばれたのに、****はピクリともしなかった。
どうやら、あの女に全身の骨を折られてしまったらしい。
「・・・・。ねぇ、***。生きてる?」
**が私に話しかける。まさか、あの女に向けた力を、****や*****を助けられなかったから。私に、私に向けるのだろうか?嫌だ、嫌だ。死にたくない。
「**?・・・あぁ、立てないのね。待ってて。」
**が私に向かって手を向けた、あぁ、殺される。
襲いかかるだろう痛みに堪えるべくまぶたを閉じようとするが、目が動かない。ただ、こちらに手を向ける**が見えるだけだった。嫌だ、嫌だ、嫌だ。
**が手を振り上げた。来た、そう思った。
だが、違かった。彼女は私の体を何か違う力を送ったのだ。
あの女とは違う何かこう、暖かい力を。
その力が送られると、私の体は軽くなり、負担が消え去った。
「…これで立てる?話をしたいの、立って?」
私は立ち上がった・・・。軽い、私の経験からするとあの痛みは軽く1ヶ月は直らんものだぞ・・・。
「・・・駄目ね。*****は死んでる。出血し過ぎたのね。」
「あ、**。えっと、・・・。」
「いいの、何も言わないで。貴方はただ仕事を全うしようとしただけ、貴方は悪くない・・・。」
「それに、あたしも、あたしの心の力が弱かったから。」
「心の力?さっきのはそう言うな名のかい?」
そう、そうよ。**はそう吐き捨てるように言った。
彼女の話によると、彼女は以前からこのような力を持っていて、それは超能力に近いものなのだと言う。
「・・・大体話はわかったよ。・・・では、あの女は?」
「ええ。・・・多分あれが間宮夫人。この屋敷の元凶。・・・物凄く強い力だった。今のあたしでは到底勝てないほどの。****が、****の死が・・・あたしに力をくれたの・・・」
**は言い終えると啜り泣き始めてしまった。
その姿をを見ていると、彼女を守りたい、という意志が心のそこから込み上げてきた。そして、私は彼女の手を掴み、ドアを開けようとした。この屋敷から逃げようとしたのだ。
しかし、駄目だ・・・。何か強い力が込められている。
到底私では無理だ。ドアを壊そうと二、三回蹴り飛ばしたがびくともしない。
「無駄よ、そこにも 間宮が力をかけた。あたしたちは逃げられない」
「だったら、別の逃げ道だ!行こう!」
私は彼女の手を握りながら別の部屋に駆け込んだ。
窓があり、壊そうとしたが、駄目だ。びくともしない。
そうやって、私と**はこの屋敷から逃げる為に何時間も、この屋敷をさ迷い続けた。
時には異形の生物や惨たらしい霊が道を塞いだが。彼女の力と、私も武器を持って戦った。
中でも、私にしっくり来たのは鉈だった。
長く光る鋼の刃は敵を難なく切り殺したし、彼女に牙を向く罠も難なく破壊できたからだ。
彼女は、職場では気づけなかった程美しく、そして強かった。
力の事もあり、勿論強かったが、それ以上に強かった。
悪霊に体を抉られても畜生に噛まれてもめげず、逝った****と*****を思いながらひたすら一心に戦い続けた。
彼女は、強かった、強かった。
だが、別れの時が来てしまった。
「**・・・。うそだろ・・・**、あぁ嫌だ。**」
彼女は屋敷に現れた霊に、殺されてしまった。
私の目の前で、殺されてしまった。
私は、血の滲んだ**の死体に跪いた。
「嫌だ。いかないでくれ。お願いだ・・・**。一人にしないで・・・」
頭上で何か音がする、そんなことはどうでもいい。
今は**が大切なんだ、私の愛しい人が、大切なんだ。
ブシュッ、肩の肉がちぎられた。・・・どうでもいい、ら
「**・・・**・・・。嫌だ。私は・・・」
がし、ゴキッ。私の顎と頭が掴まれ。大きく捻られた。
世界が歪む、**を見ている私の視界が。
**が、歪む・・・? ・・そんなのは。嫌だ。
私は鉈を拾って霊を切りつけた。
視界がふらふらと安定しないが、**の遺してくれた力だろうか?体に無数のイボのクッションができ、私の首の動きを助けた。ありがとう・・・**。そして、さようなら・・・。
私は、その瞬間。人成らざるものに成った。
そうして、私は何年も、何年もさ迷い続け。女を探した。
私の愛しい部下たちの復讐すべく。そして私の愛しき**の為。
何匹も獣を切り裂いた、何匹もの霊を無に帰した。
何人ものクリーチャを殺した。とにかく破壊し、殺した。
切り裂く度に逝った**が心に写る。
美しい**、可愛い**、そして、死んだ**。
・・・・許せない。絶対殺してやる。
そうして、私は今日も奴を探して屋敷を、さ迷う。
この前は久しぶりに扉から音がした。また奴の手下が外から入ってきたのだな。
私の事を狂人と呼んで、私の鉈の前に散った人擬きめ。
今度の奴も必ずや、切り裂いてやる。
そうして復讐してやるのだ。・・・待っててくれ。**。
そうして、私は今日も呪われた屋敷をさ迷う。
ただ一人の生存者として。・・・?あれ?
私って・・・。死んで・・・。首を・・・。でも・・・。
生きて・・・・・いる・・。
鉈をもう一度見ると、そこには何かがいた。
私では無い何かが。
でも、この出来物は・・・。**・・・。私は・・・。
ワタシハ・・・ワ タ シハ・・・。
「ああああああああ!!!!!」
如何だったでしょうか?
彼はもしかしたら、狂った人間の末路。なのかもしれませんね。
それでは、また。