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人命怪々劇  作者: 伊庭 トラの助
第1幕
9/32

鬼の救世主

注意 作者は戦闘描写が苦手です。柔らかい目で見てください。

〜第9章〜



ーー「でもまた何でこっちの世界に?」


と飛烏が聞く。


「それが解らないんだ。どうやって来たのか、何故ここに来たのか、何の為にここにいるのかも解らない。とにかく何か解かるまでは、此処で過ごそうかなと。」

「ふーん、ま、"そういうこと"はいつか解るものだからね」

「"そういうこと"か・・・」


人里に降りて来た俺たちは、手当たり次第に里の人間に話を聞いて回った。

ていうか、人里と言うよりもう街見たいなでかさだ。暗い赤み帯びた落ち着いた街並み、周りの自然と見事に調和している。道路には、昼から夕方にかけて多くの人で賑わう。

街行く人達に話を聞いていると、どうやらこの村を守るヒーロー的な存在なだけあって、みんな知っていた。だが、彼の行方は誰も知らなかった。


「ったくどこほっつき歩いてんだか、あいつは。」


飛烏がため息混じりに言う。


「そうね。そろそろ休憩挟みましょうか。」

「そうだなーー」


ドォン‼︎


返事をした瞬間だった。里の奥の方から大きな衝撃音が里中に響き渡った。


「な、何や⁉︎何が起きたんや⁈」

「大広場の方からよ!行きましょう‼︎」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺と結無が着いたのは、里から少し離れた小さな村がある山だった。山には沢山の妖怪や神が住んでいるので、人と妖怪の関係が上手く行かないとその村では生きていけない。


「で、此処にどんな悪妖が?」


と、結無が聞く。


「確かに強い妖気は感じるが、おかしい。何故こんなに強い妖気が出てるのに村はこんな静かなんだ?村人達はどこにーー」

「悠士君あれ!」


結無が指を指した先にいたのは、黒い体毛、筋肉が発達し、まるでキングコングのような妖怪「狒々」がいた。そして口には、酷く血まみれになったどこかはわからない人の身体の一部分を咥えていた。


「チッ、遅かったか!」


すると、こちらに気付いた狒々が「ゴオオオォォ」と言う雄叫びをあげ、大きく空へジャンプした。


「あ、待ちやがれ!」

「悠士君あの方向は里!里に向かってる!」

「行くぞ結無!」

「はい!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「妖怪だ!妖怪が出たぞ!」


大広場に駆けつけた俺たちは、目の前の光景に目を疑った。


「ーーーーッ!」


ゴリラより何倍も大きいそいつが、そこにいた少年を見降ろしていた。

震えながら 立ち尽くす少年。


「逃げろ少年!危ないぞ!」


そいつが腕を上げ、少年めがけて振り下した、その瞬間だった。


バンッ!!


「ふぅ…間に合ったぜ」


なんと、そこにいたのは、そのゴリラ妖怪の怪力パンチを、両手で受け止め、一人安堵する、大きな黒い二つの角を頭に生やした、自分と大差ない年齢の青年が現れたのだ。


「悠士⁉︎やっぱりそいつを追いかけていたのね!」


メリィが叫ぶ。


「ああそうだ。こいつは『狒々』。猿の化け物だ。すげえ怪力だから少年、早く逃げろ!殺されるぞ!」


青年がパンチを受け流し、腹へ一発。

グオォ と唸りながら後ろへ下がり、距離を取る。 するとゴリラ妖怪が、何やらキョロキョロしだした。

俺は、そいつのみつめた先に嫌な予感がした。

そう、それも恐怖によって動けなくなった小さな少女がそこにいた。

その少女に向かって走り出すゴリラ妖怪。


「⁉︎ あいつあの少女を狙ってるぞ!」


誰かが叫んだ瞬間だった。


「裕翔⁉︎」


気づけば俺は、少女に向かい身体が一人でに走っていた。


(何やってんだ!何やってんだ!俺!)


俺の行動は至ってシンプルだった。あの少女を助ける他ない。間に合う合わないなど気にしなかった。


(殺らせるか!)


心の中で叫び、少女を抱えたその時だった。横でゴリラ妖怪が拳を高く上げているのが気配で分かった。


「裕翔‼︎」


ズドォォォン!


「ーーッアブね!」


間一髪身を捩り、パンチを回避したのはいいものの、体勢を崩し、少女を抱えたまま床に伏せる。すぐさま追撃が来るかと思い、ゴリラ妖怪を見る。

すると、何やらゴリラ妖怪の様子がおかしい事に気がついた。パンチを放ったあと、こちらを見据えたまま、1ミリも動かない。その時、ゴリラ妖怪の背後から、可愛いらしい女の子の声がした。


「ふふ、もう好き勝手させませんよ?」


その女の子の方を見ると、右手をゴリラ妖怪に向け、静かに微笑んでいた。


「ナイスだお前ら!」


と、上から声がしたと思えば、ゴリラ妖怪の前に降り立ち、鋭い眼差しで睨むその青年。


「よくも、まぁこんなに暴れてくれたなぁクソザルが。どうなるか分かってるよな?」


凄い威圧だ。

すると、青年が黒のロングコートの袖を捲り出した。華奢なその腕が日に晒され、白光りしたその瞬間、目を疑った。

さっきまで白かった普通の腕が、まるで腕に鎧をつけた様に黒光りしているのだ。


「ふぅ……」


青年が深く深呼吸し、ゴリラ妖怪の顔に向けてジャンプし、


「ふんぬっ‼︎」


顔に気迫の一撃を放った。ゴリラ妖怪の身体が後ろに倒れる。それ以降そいつの身体は動かなかった。

そう、一撃で倒したのだ。あの化け物を。


「ったく、ふざけんなよ。こんな被害だしよって……」


「あっ、大丈夫?怪我は?」

「うん、お兄ちゃんありがとう」

「そうか、よかっーーーー」


背後から嫌な視線がする。振り向くと、メリィがムスッとした表情でこちらに近づいて来る。

近くまで寄ってきた彼女。俺は殴られるんだろうなと思い、目を瞑った。


「ーーえっ?メリィさん?」


彼女のその行動は俺の予想を大きく裏切った。

そう、覚悟を決め、目を瞑っていた俺がいま、彼女の両の腕で抱きしめられている。ナニコレェ。


「よかった……心配したんだから」

「あ、ああごめん」


彼女の気持ちに答えるように、そっとこちらも抱きしめる。

そんな俺らをニヤニヤと見る、鬼と天狗と少女と里の皆さん。恥ずかしい。


「あの…メリィさん?そろそろ離していただけませんかね?」

「あ、ご、ごめんなさい。私ちょっと、取り乱しちゃって」


すると、それを見ていた青年が話しかけて来た。


「もしや、メリィとはそういう関係?」

「否定はしないけど」

「否定しなさいよ!」

「ハハッ 若いねぇ青春だねぇ。あ、俺は

鬼述(きののべ) 悠士(ゆうし) 。よろしく。あ、先ほどは人間ながらあっぱれだった。」

「おう。俺は斎内 裕翔だ。あっちの世界から来た人間だ。よろしく頼む。メリィとは、こっちに飛ばされた時にたまたま出会って今に至る感じだ。」

「そうか、とりあえずは、こっちの世界に慣れるこったな。んー、あ そだ。今から地底に行くが、お前も行くか?」

「地底か面白そうだな。行こう!」

「ゆうーし!」

「ぬわっ⁉︎なんだ…飛烏か。どうした?」

「私も行っていい?」

「ええよ」


すると悠士が、少女の方を向き、


「結無ー!お前も行くか?」

「行ってもいいのですか?」

「よし、じゃみんなで行くか!」


というわけで、俺たちは地底に行くことになった。


豪華な妖怪と、地底旅。何か奇想天外な出来事が俺を待ってる気がした。




つづく


やっと主人公が出て来ました。自分でも長いと思う。

次回も楽しみに。アディオス!

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